これまでレクサスのSUVでエントリーモデルと位置づけられてきたのは「NX」だった。あたらしい「UX」はNXより全長が15cmほど短く、全高もおよそ10cm低い。にもかかわらずUXのホイールベースはNXより2cmしか短くないので前後のタイヤが四隅に追いやられている印象が強調され、これがUXのダイナミックなプロポーションを生み出す一因だ。
UXとNXは、そのいずれにもハイブリッドとコンベンショナル・タイプが用意され、前輪駆動と4WDが選べる(UXの4WDは後輪を電気モータで駆動する方式で、ハイブリッド・モデルのみに設定)ところまでは共通であるが、エンジン排気量が異なる。UXが全モデル2.0リッターに対し、NXはハイブリッドが2.5リッターでコンベンショナル・タイプは2.0リッターターボである。
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もっとも、ハイブリッド同士で性能を比べてもUXの146ps/188Nmに対してNXは152ps/206Nmと大きな差はない。にもかかわらず、最新の軽量設計が施されたUXの車重はNXに比べて200kg近くも軽いから、加速性能に関してはUXがNXを凌いでいてもおかしくないだろう。
実際のところ、UXの走りは軽快だ。とりわけハイブリッド・モデルのUX250hであれば、コンベンショナル・タイプに比べ静粛性がいちだんと優れる。また発進時、パワーがダイレクトに駆動輪へと伝わる感触が味わえて頼もしい。
UXでもうひとつ感心したのがボディのしっかり感である。近年、各メーカーから軽量ボディのニューモデルが続々と登場しているものの、なかには足まわりから強い衝撃がくわわったとき、瞬間的ながらボディの一部に細かい振動が残るケースが散見されるようになった。
これは単純に、ボディ剛性が低いというよりも、ボディの振動をおさめる制振材が軽量化の都合で省かれていたり、足まわりを支えるブッシュと呼ぶゴム製品が柔らかすぎたり、さまざまな原因が考えられる。
ところがUXは、強いショックを受けてもビクともしない頑丈なボディのおかげで、とても快適な乗り心地を楽しむことができたのだ。その秘密はボディの製造工程にあるらしい。
ボディ開発を担当した技術者によると、UXに使われている「GAC」という呼ボディアーキテクチャーは、トヨタのTNGA(カローラ・スポーツ、プリウス、CH-Rなどに使われている最新アーキテクチャー)と基本的におなじながら、そこにはレクサスらしいこだわりがぎっしりと詰まっているという。
たとえば、ボディパネル同士をつなぎあわせるにはスポット溶接、接着、リベット系など様々な方法がある。それらの特徴として、たとえばスポット溶接であれば強度は出るけれど振動を抑える制振性はあまり高くないとか、接着は制振性が優れているけれどコストが高いなど、良し悪しがある。
そこでトヨタとレクサスは連携し、パネル接合についてそれぞれのガイドラインを設定した。接着のようにコストがかさむ手法については、トヨタよりもレクサスのほうがより多く使える取り決めにしたらしい。つまり、アーキテクチャーの基本はおなじでも、レクサスのほうがより贅沢なボディの作りになっているのだ。
さらにレクサスの技術陣は、接着の効果的な活用について研究した結果、ボディの下まわりに接着を多く使うと、路面からの衝撃が緩和されて上質な乗り心地が得られるのを突き止めた。この手法をUXに応用したという。私が「しっかりしたボディ」と、感じた背景には、それ相応の裏付けがあったのである。
ちなみに、UXを生産するのは日本国内の工場に限られるため理想に近いボディパネルの接合方法を採用できたという。
そんなUX、どちらかといえば足まわりは硬めながら、路面の段差を乗り越えたときのショックは軽めだし、ボディがフラットな姿勢を保つ傾向が強く、長距離でも疲れにくそうに感じられた。高速直進性も合格点。コーナリングでも安定感の高さが印象的だった。
ただし、これらはハイブリッドのUX250h バージョンLの印象だ。18インチ・タイヤを装着する試乗車は、オプションの「NAVI・AI-AVS+パフォーマンスダンパー(リア)」と呼ばれる上級のサスペンションが取り付けられていた。続いて乗ったコンベンショナル・タイプのUX200(ベースグレード)は、前述のオプションは非装着。そのせいか、静粛性の点でも路面からの小さなショックを吸収するという点でもUX250h バージョンLには及ばなかった。したがってUXを買うならハイブリッド・モデルのNAVI・AI-AVS+パフォーマンスダンパー(リア)付きがお勧めだ。
ところで、UXは全長を切り詰めたためにリアシートの居住スペースはさほど広くなく、ラゲッジルームも限られている。これをもってUXに厳しい評価を下す向きもあるかもしれないが、個人的には、クルマの個性を際立たせるこうした割り切りはむしろ好ましいと考える。
ボディをコンパクトにしたから軽快な走りが可能になり、デザインにも凝縮感が生まれた。広いリアシートとラゲッジルームが欲しければNXやさらに上級のRX(これだったら3列シートもある)を選べばいいだけの話。UXの個性に惹かれるユーザーはきっと少なくないだろう。
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