エンジンの性能を引き出す役割という点だけで見れば段数は多いほどいい
トランスミッションの段数は、最近特に増加傾向にありますね。2000年くらいまでは5速マニュアルトランスミッション(MT)/4速オートマティックトランスミッション(AT)が一般的で、6速MT/5速ATは最新のものでした。
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それが6速ATや7速AT、8速ATになり、さらに9速ATや10速ATへという流れになっています。MTはギヤを手動で選択する必要があるので、現在7速MTが最大で、それ以上はシーケンシャルにしなければシフトミスが増えてしまうことでしょうし、そもそも面倒な操作が増えるだけのような気がします。
究極の段数は無限大、つまりCVTになるわけです。日本初のCVT搭載車になったスバル・ジャスティでは、11ステップの変速になっていました。これは全体の変速域を11段に分けて制御するということで、つまり疑似的な11段変速だったわけです。
正確にはプーリーの局部的な磨耗を防ぐために、それぞれのステップにはある程度の幅が与えられていました。これは現在のCVTに採用されているマニュアルモードでもカタログに「代表的な変速比」と書かれているように、同じです。
当時は11段あれば、ほぼ無段変速というメリットとフィーリングが得られていたわけです。現在ではどうでしょうか? エンジンの低回転でのトルク確保が可能になっているので、クルージングギヤは高くなっています。だから15段くらいは必要なのでしょうか?
ただし従来からのスチールベルト式CVTには減速比幅が狭いという欠点があり、それほど高いギヤ比を設定することができません。そうはいってもATの進化は、結局CVTのようなきめ細かい変速をすることで、エンジンの効率的な運転を目指すのは間違いありません。
そういう意味では、段数は多ければ多いほど、都合はいいのです。4速ATから一気に7速ATまで拡大していったのは、複合プラネタリーギヤが採用され始めたからです。1つのプラネタリーギヤでは2速を切り換えることができるので、3速ATや4速ATでは2組のプラネタリーギヤを使います。
しかし複合プラネタリーギヤでは3速を切り換えることができるので、複合プラネタリー+プラネタリーで6速AT、複合プラネタリー2組で最大9速ATを作ることができるのです。スペース、重量とも増えますが、プラネタリーギヤを1組増やすよりは、ずっと軽量コンパクトです。
重量や抵抗が増加することがデメリット
では多段化でデメリットはないのでしょうか? ひとつは重量で、トランスミッションが大型化することで室内スペースを圧迫する場合があります。
もうひとつはメカニズムが複雑になるので、高価になること。そして機械抵抗が増えてしまい、燃費が伸びないことです。
プラネタリーギヤはサンギヤ、アウターギヤ、その間にあるプラネタリーギヤの3つの歯車を組み合わせていますが、そのうちの最低 1つを固定しないと空転するだけなんです。動力が伝わりません。そして変速時するということは1つを固定/開放することで作動します。そのため各ギヤにクラッチが付いていて、それを油圧でON/OFFするわけです。
クラッチというのはつながっている時は問題ありませんが、切れているときに軽く接触していて抵抗が発生してしまいます。これをクラッチのひきづり抵抗といいます。段数が増えるほどクラッチの数も増えてしまいますから、ひきづり抵抗も増える方向になります。
できるだけ切れているクラッチの数を減らすことが設計的に重要になってきます。ひきずり抵抗が大きいと、それだけ発熱の問題も出てきてしまいますね。
現代のパワートレインは、もはやエンジンとトランスミッションが同じぐらいの大きさ、そして同じくらいの重さになっている場合もあります。それでも多段化したいだけのメリットがあるわけです。
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