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トヨタ2000GTで1000kmのドライブに出かける VOL.1──連載「西川 淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ」

掲載 更新 8
トヨタ2000GTで1000kmのドライブに出かける VOL.1──連載「西川 淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ」

フツウに楽しかった体験のリポートは“興奮さめやらぬ”うちに書きたくなるものだ。けれども楽し過ぎた経験の場合には、イベントが終わった瞬間にほとんど燃え尽きてしまっている。感触や手応えは確かに手や足や身体のあちこちに残っているというのに、書くぞ! という気分になかなかなってこない。

逆に言うと、そういう経験こそもっと沢山積んでいっぱい書いて多くの皆さんに知ってもらいたい。だから新たな企画を本サイトにて連載することを編集部に相談した。

3歳から乗れる電動バイクで、キッズにバイクの楽しさを体験させる

名付けて、「西川淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ」。

ギャラリー: トヨタ2000GTで1000kmのドライブに出かける VOL.1──連載「西川 淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ」世界で2台だけ生産されたボンドカーの2000GT。1967年公開「007は二度死ぬ」に日本車初のボンドカーとして登場。その姿を覚えている人も多いはずだ。その現車がここに……。今回、旅のパートナーを務める、いや務めて頂く2000GT。今の道路事情でもドライブが楽しめることを想定しつつ仕上げられ、日本はもちろん世界に広く知られた個体である。トヨタ 2000GT|TOYOTA 2000GT2000GTのオーナーの顔だけでなく、2000GTの再生工場の主としての顔を持つモロイさん。写真は多くの極乗車を仕上げてきた塗装ブース。クルマ好きの究極を求める旅へ出かける本企画ナビゲーターの西川 淳氏。今後は2000GTを皮切りに、同氏のネットワークをフル活用した超ド級のクルマが登場する予定。今回の無茶なおねがいに応じてくださったモロイさんが経営するオートロマン。伝説のスーパーカーショップのディーラー名を得て、群馬県邑楽郡にショールームを建設。驚くような車両が並べられている。トヨタ 2000GT|TOYOTA 2000GT細かいパーツにまでこだわって仕上げられた車内。ステアリングだけはサニーB110用を改造したモノが取り付けられている。同年代の日本車では考えられないほど贅沢で、居住性も高く作られていた車内。ハンドブレーキは2座スポーツでは珍しいステッキ型になっている。次回は早速2000GTを走らせて京都へ。価値あるクルマを走らせる大変さとクルマの素晴らしさなどをお届けします。エンジンは直列6気筒で排気量は1988cc。ヤマハの開発したDOHCヘッドを採用し出力は150psとなっていた。GTカーとしての走りやすさを残すためにハイスペックながら扱いやすく設計されたと言われている。クルマ趣味にはいろいろある。対象はクルマそのものから各種イベントまで実に様々で、それぞれに“究極”が存在する。しばらくはなかでも“究極の趣味車”にスポットを当ててみたいと思う。そしてもちろん、実際に試してみるのだ!

第1回は、日本の至宝であり国産車史上最も高価だと言われるグランドツーリングカー「トヨタ2000GT」で実際に1000km程度の長距離ドライブにチャレンジしてみたい!というけっこう無謀な企画である。もちろん筆者はトヨタ2000GT(以下、トヨ2)のオーナーではない。果たしてクルマを貸し出してくれる無謀、否、蛮勇のオーナーなどいるのだろうか……。

徐々に増していく2000GTを走らせる恐怖いた。あっけなく見つかった。オートロマン(群馬)のモロイさんだ。

クラシックカー界では有名なコレクターで、トヨ2だけじゃなく内外の名車を何台も保有されている。最近じゃ、クラシックF1やクラシックCカーでサーキットを走り回っている猛者だ。つい先日も話題のフォードGTを撮影させてもらったが、貴重な個体を惜しみなく提供していただけた。

そんなこんなでこのところ立て続けに群馬を訪ねる機会があったので、その勢いを借りて「2000GTでいっぺん京都へ帰らせてください!」とお願いしてみる。

「いいよ」と即答だった。交渉を重ねて貴重なクルマを拝借するという緊張感をいっそう高めようと思っていた身からすれば、拍子抜けするほどの回答に“えらいことになってしまった”と身震いしてしまう。分かるだろうか。やりたいと思っていたことがいきなりできると分かってかえって萎縮するという構図。どんなカラオケ好きでも大観衆の前でいきなり歌えと言われたら尻込みするに違いない。

モロイさんのトヨ2好きは筋金入りで、ボクが彼と知り合ったのもオーナーズクラブのイベントだった。もうかれこれ四半世紀前のことだ。たしかその頃はまだトヨ2を手に入れられたばかりで、そこから25年のあいだに今や日本はおろか世界にその名を知られる存在になられたのだった。

凄いのはコレクションが充実しているからではない(いや、もちろんそれもある。なんといっても2台しか造られなかった本物のボンドカーがある)。トヨ2熱が嵩じて自分の車庫を“トヨ2再生工場”にしてしまった(さらにその勢いでオートロマンという懐かしいディーラー名も購入した)。メーカー欠品の部品があればできる会社を見つけて造らせたり自分で造ったりもした(精密機械加工がご本業だ)。鈑金や塗装ももちろん自社で扱う。モロイさんなら焼け落ちた個体でも再生可能だろう。時間はかかるだろうけれど。

そんなモロイさんが日本各地で開催されるイベントに自走で参加できるよう、こだわりのレストレーションを施した個体を拝借できることになったのだ。キャブレターのセッティング以外はできるだけオリジナルにこだわりつつも心置きなく現代でもドライブを楽しめるよう仕上げたという。だからホイッと気軽にキーを預けてもらえるわけだった。自信の現れというわけだ。

一時は海外オークションで1億円の声を聞いたモデルである。実際にその価格で取引されたかどうかは実は疑わしいのだけれど、とはいえ現在でも「程度にもよるが6000、7000万円はする」(モロイさん)という日本車史上最も高価なクルマであることに変わりはない。

そんな貴重なクルマを3日間預かることになった。オートロマンのある群馬県太田市を出発し、京都へとひた走る。2日後に静岡県は日本平で開催されるトヨ2オーナーズクラブの新年会に出席するモロイさんに届けることがゴールだ。

出発の日の朝。新幹線で群馬に向かう。途中で壊れたらどうしよう…ぶつけることはなくても、ぶつけられることはあるんだし……えらい企画を立ててしまったもんだなぁと、ワクワクよりビクビクが先に立ってきた。“やめときゃよかった”と“やってみたい”が交錯する。ライブステージに立つ前の心境によく似ていた。

トヨタ2000GTの何が凄いのかトヨタ2000GT(トヨ2)のドライブツアーを報告する前に、少しだけトヨ2が生まれた背景について簡単に復習しておこう。

トヨタ自動車とヤマハ発動機という4&2輪の国産トップメーカー連合によって共同開発された日本車史上最も有名なスポーツカーである。生産そのものはヤマハ発動機だった。

1967年、昭和39年秋に企画がスタート。翌年早々にはトヨタ側の開発主力メンバーがヤマハへ出向し、その受け皿としてヤマハには自動車部が発足している。二輪GPマシン王者メーカーとして世界最高峰にあったヤマハもまた創立以来ずっと四輪部門への参入機会を伺ってきた。そして当時のトヨタにはなかった高性能化への技術と経験がヤマハにはあった。たとえばDOHCヘッドや鋳造技術、FRP生産、内装用ウッドアマテリアルといった在ヤマハ周辺のテクノロジーである。

65年8月、早くも1号車が完成した。同年10月には東京モーターショーにてデビュー。市販への期待が高まり開発にも拍車がかかった。面白いのはテストコースでの開発だけではなく、レースやタイムトライアルといった実戦で試験と改良を受け続けたこと。FIA公認記録会や耐久レース等でも大活躍したのだった。

そして67年5月、ついに販売が始まった。クラウンが100万円くらいで買えた時代に238万円という定価設定は、現代の感覚でいうと1500~2000万円クラスであろうか。レクサスLCのようなものかも知れない。

デビューとほとんど同時に公開された映画「007は二度死ぬ」にマーケティング活動の一環として登場したこともあって世界を大いに沸かせた。

わずか3年半後の70年10月27日に、ヤマハ発動機の磐田工場において最後の車両がラインオフ。総生産台数は337台。これほど短命に終わったのは広告塔の役割を十分に果たしたという判断に加えて、ビジネス上の問題(赤字覚悟のクルマであった)、社会環境の悪化(石油危機など)、といった要因が重なったからだったという。

さて、今回はこのあたりで。次回はその2000GTでの長距離ドライブの奮闘ぶりをお届けしたい。

文・西川 淳 写真・柳田由人 編集・iconic

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