■ついに正統派セダン登場! ハイブリッドと燃料電池、走りの違いは?
クラウンの歴史を振り返ると、セダン以外にハードトップ(2ドア/4ドア)、ステーションワゴン、バンに加えて、ピックアップトラックなど多彩なバリエーションを誇っていました。つまり、原点回帰でもあります。
【画像】これがトヨタの「正統派セダン」 カッコいい! 画像で見る(50枚以上)
そうして誕生した16代目クラウンは4つのボディタイプが用意されています。
これはライフスタイルの変化により、これまでの常識とは異なるニーズに対応するためです。そのキーワードは「あなたのフラッグシップ」です。
今回、2022年発売された「クロスオーバー」に続いて、2023年発売された「スポーツ」と「セダン」に一般公道で試乗してきました。
ボディ形状が違うだけなのか、独自の味付けが行なわれているのか、正統派セダンとなるクラウンセダンを細かくチェックしていきます。
続いてシリーズの中でも最もフォーマルな存在のセダンです。他のモデルとの最大の違いは、16代目唯一のFR縦置きレイアウト採用です。
同じ車名で二つの異なるレイアウトを用いる例は、過去にはコロナやカリーナ、カローラ、スプリンターも。
エクステリアは前後に16代目共通のテイストを盛り込みながらも、水平基調&クーペライクなプロポーションで、伸びやかさ&煌びやかさを演出。この辺りはスポーツの凝縮感&セクシーさとは正反対です。
ボディサイズはシリーズ最大で全長5030mm×全幅1890mm×全高1475mmとなっています。
インテリアはクロスオーバー/スポーツと共通のインパネデザインですが、大型の杢目調パネルや光物が多めの加飾、更にはコクピット感を高めるセンターコンソール周りなど、セダンらしいフォーマルさと高い質感を備えています。
液晶メーターはクルマのキャラクターを考えると4つのテイストの中の「Smart」が最適だと感じましたが、欲を言えばこちらもセダン独自のデザインが欲しかった。
フロントシートは全高が低いのでヒップポイントも低めですが、着座姿勢は他のクラウンと同じです。リアシートは3000mmのホイールベースを活かし余裕たっぷりの足元スペースに加えて乗降時の足抜きの良さなども抜かりなし。
更にフロントシートよりも高いヒップポイントとウィンドウ面積の広さから寸法以上に開放感があります。この辺りは新時代のショーファーカーであるアルヴェルの知見も活きているようです。
もちろんリラクゼーション機能や電動サンシェードなどのおもてなし装備も数々用意されています。
パワートレインは2種類用意しています。一つはクラウン初となるFCEVです。
「MIRAI」のシステムを水平展開しシステム出力は182ps/300Nmを発揮。水素タンク容量は141Lで約5.6kgの水素を貯蔵可能。その結果、1充填で820kmの航続距離を実現しています。
その走りは電動車のいい所が前面に出ており、静かで滑らか、そして力強さを実感。
動力性能は電動車ならではのレスポンスの良さやピッチングを抑えた車両姿勢も相まって、車両重量2000kgを感じさせない動力性能で、日本の速度域では「おっ、速っ!!」と感じるくらいのレベル。
静粛性はGA-Lの高剛性ボディに加えて入念な吸引・遮音・防音対策なども相まって、初代セルシオの感動が蘇るレベルで、恐らくセンチュリー並みと言っていいと思います。
■FCEVレベルを内燃エンジン+モーターで再現!? もうひとつのパワートレインとは
もう一つはHEVモデルです。2.5L+THS IIのハイブリッドながらも有段ギア(4速AT)を組み合わせた「マルチステージハイブリッド」です。エンジン最高出力を使用できる速度域を下げる(約140km/h→約43km/h)、高速走行時は回転数を抑える制御の採用で、2.5Lながらも強い動力性能と燃費性能を両立しています。
実際に走らせるとスポーツのそれよりも電動車感が強い(モーター出力がスポーツより高い180ps/300Nm)フィーリングに加えてTHSIIながらダイレクト感が高いメリハリある走りが可能ですが、EV→HEV切り替えに一瞬あるモタツキ、エンジン始動時に乗員に「ブルン」と伝わる振動、更には回生時のATのシフトショックなど、スムーズさに欠けるのは残念な部分。
静粛性はフル電動車であるFCEVと比べると劣りますが、ANC(アクティブノイズコントロール)の効果も相まって、エンジンを回した時でもスポーツのそれよりノイズは抑えられており、トヨタのHEVの中では最上位にあると思います。
フットワークはクロスオーバー/スポーツは電動AWDの駆動力制御を活用して駆動方式の概念を変えるコーナリング姿勢を生み出していますが、セダンはFRレイアウトの旨味を活かし、「よりスッキリ」、「よりスムーズ」、「より素直な」なコーナリングが可能です。
サスペンションはスポーツよりもソフトな設定ですが、姿勢変化やロールは抑えられた安定したコーナリングが可能。この辺りは基本素性(低重心、ワイドトレッド、前後重量配分に優れる)の良さに加えて、ACAやロール姿勢制御なども効いているはずです。
乗り心地は路面へのアタリ、足の動き、ショックの吸収性など全てにおいて「優しい」の一言です。
とにかく凹凸を乗員に伝えないと言う観点では、センチュリーを除くトヨタ車の中で最良、いやレクサスを含めてもトップに位置するレベルです。
20インチ仕様は45タイヤ装着とは思えない入力の優しさと無駄な動きを抑えたバネ上のフラット感の見事なバランス、OPの19インチ仕様は「エアサス付き?」と錯覚するレベルでストロークでショックを吸収する足さばきが印象的でした。
更にショーファー用として使う際にはドライブモードはリアシート優先の「リアコンフォート」をセレクト。どちらも路面の凹凸をより伝えないAVS設定と無駄な動きを出しにくいEPS制御によって、クルマに乗っている事を忘れてしまいます。
更に驚きだったのは、FCEV/HEVはメカニズム/搭載レイアウトが全く異なるにも関わらず、乗り味がほぼ同じだった事です。
実は両モデルの車両重量/前後重量配分がほぼ同じで、合わせ込みはしやすかったと聞きます。
この個性が異なる2つのクラウンに乗って感心したのは、与えられたキャラクターがより明確になっている事でした。
歴代クラウンで例えるならばスポーツは「アスリート」、セダンは「ロイヤル」の個性がより際立って表現されています。
ちなみにクロスオーバーは「アスリートとロイヤルのいい所取り」だと筆者は分析しています。
古いクラウンは多彩な車種バリエーションを備えるもキャラクターに差はほぼありませんでした。その一方、直近のクラウンは1車型(=セダン)でキャラクター分けをしていました。
では、16代目はどうでしょうか。
4つの車種バリエーションを備え、各々に見合ったキャラクターが与えられています。その結果、今まで以上に「クラウンらしさ」を突き詰める事ができたように思います。
つまり、16代目の「変革と挑戦」はクラウンのDNAをより濃厚にしたと言えるでしょう。となると、間もなく登場予定のエステートはどのような個性、どのような乗り味で登場するのか。
恐らく開発陣も悩み所のように感じていますが、「おっ、その手があったか!!」と驚かせてほしい所です。
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