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速さで勝る フォード・フォーカス ST 楽しさで勝る トヨタGR86 比較試乗 後編

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速さで勝る フォード・フォーカス ST 楽しさで勝る トヨタGR86 比較試乗 後編

目をみはる流暢な身のこなしと能力の深さ

フォードは、シャシー・チューニングを理解している。コーナリング中にアクセルペダルを緩めたり、ブレーキペダルを踏んだ時に発生する、タックインを特長の1つとして誇っている。

【画像】速さで勝るフォード・フォーカス ST 楽しさで勝るトヨタGR86 競合ホットハッチも 全130枚

同社がこれまで生み出してきた秀抜なホットハッチのように、新しいフォーカス STトラックパックはコーナーを旋回していく。回頭性に優れる動的特性は、楽しいドライビング体験を生む要素の1つになる。

最新のフォーカス STの場合、ステアリングもクイックでレスポンシブ。操舵感はやや重めで、一生懸命操りたいというドライバーの心を後押しする。

つま先でくるりと回転するように、フロントタイヤを軸にリアアクスルを左右へ振り回せる。アングルシー・サーキットのコーナー出口では、ターボノイズを響かせながら豪快に加速していける。

洗練されたダンパーの減衰力がトラクションを担保し、活気あるステアリングが細やかな操縦性を可能にしている。自然と気持ちが高ぶる。同僚のリチャード・レーンは、バックミラーに映るトヨタGR86が徐々に小さくなっていく事実へ気づいているだろう。

今回は招聘できなかったが、ホンダ・シビック・タイプRの方が能力は高くシリアス。現実的な予算で選べる、ポルシェ911 GT3だと表現してもいいだろう。だが、フォーカス STトラックパックの流暢な身のこなしと能力の深さにも、目をみはるものがある。

ドライバーを惹き込む意欲的な回頭

トヨタの水平対向4気筒エンジンは自然吸気で、ショートストローク。高回転型な一方、低回転域でのトルクは細い。最高出力には7000rpmで到達する。 25.4kg-mの最大トルクも、3700rpmまで引っ張って得られる。

リアアクスルにはリミテッドスリップ・デフが組まれ、215/40 R18という細めのサイズのミシュラン・パイロットスポーツ4タイヤが路面を蹴る。動力性能には、明確な開きがある。

むしろ、GR86がフォーカス STトラックパックに2秒差まで詰めたことを称えるべきかもしれない。トヨタが2代目を明確に速くしたいと考えたのなら、これらの構成は選ばなかっただろう。

正確性やバランスが高く、研ぎ澄まされた楽しいスポーツカーを作ることが目指されていた。そして、実際のカタチとなって仕上がっている。

GR86のステアリングのクイックさは、フォーカス STトラックパックに近い。だが、そこまで積極的ではない。重心位置が低く、操舵感が軽いため、より角を丸めたレスポンスに感じられる。

コーナーの入口では、ブレーキを引きずった状態でフロントノーズを落ち着かせ、リアの安定性を弱められる。ドライバーを惹き込むように、意欲的に回頭していく。

BMW Mモデルのように、派手なパワースライドを誘う余力はない。しかし、そんな必要はない。適正な回転数でパワーを保てば、コーナリングラインを調整し、バランスされたニュートラルなスタンスも、テールスライドを許すスタンスも選べる。

楽しさで勝る輝かしいスポーツカー

この特性は、公道でも展開される。限界領域を超えた操縦性の、物理的な法則に変わりはない。サーキットより速度域が低く、見通しが悪い、という条件へ変わるに過ぎない。

両車とも、身のこなしは終始タイト。フォーカス STトラックパックには、KW社製の車高調サスペンションが組まれている。ロードノイズは大きいが、傷んだ英国の一般道でもドライバーが翻弄されることはない。巧みに不整を処理してくれる。

GR86の方が、走行時の車内はうるさい。サスペンションはしなやかさを増したように感じるが、フォーカス STトラックパック以上に洗練されているわけではない。

車重が軽く、サスペンションは過度に引き締める必要がない。タイヤも細くしなやかで、アグレッシブさとは一歩距離をおいている。リラックスしても運転できる。それでいて、魅力度は劣っていない。

サーキットでの印象と比べると、公道ではGR86のシャシーバランスや操縦性の精度が引き立たないことは事実。それでも、ステアリングホイールを握る指先には、路面からのフィードバックがふんだんに伝わってくる。

心が奪われるほど、懐が深く親しみやすい。フォーカス STトラックパックの方が速くても、楽しさではGR86の方が上。先行するリチャードも、それを理解しているはず。彼は、筆者ほど笑顔を浮かべていないに違いない。

フォーカス STトラックパックは、輝かしいホットハッチだ。だが、GR86は輝かしいスポーツカーとして、運転する喜びで勝っている。

トヨタGR86とフォード・フォーカス STのスペック

トヨタGR86(英国仕様)

英国価格:2万9995ポンド(約504万円)
全長:4265mm
全幅:1775mm
全高:1310mm
最高速度:225km/h
0-100km/h加速:6.3秒
燃費:11.4km/L
CO2排出量:200g/km
車両重量:1276kg
パワートレイン:水平対向4気筒2387cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:234ps/7000rpm
最大トルク:25.3kg-m/3700rpm
ギアボックス:6速マニュアル

フォード・フォーカス STトラックパック(英国仕様)

英国価格:3万9950ポンド(約643万円)
全長:4378mm
全幅:1825mm
全高:1454mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:5.7秒
燃費:12.4km/L
CO2排出量:185g/km
車両重量:1437kg
パワートレイン:直列4気筒2261ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:280ps/5500rpm
最大トルク:42.7kg-m/3000-4000rpm
ギアボックス:6速マニュアル

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みんなのコメント

10件
  • NAのFRとターボのFF比較する理由ななんだろう。
    シビックType-Rなら価格やパワーも似ているので分かるが、なぜ対抗馬に86を選んだのか理解に苦しむ。
    この2台で悩む人はおらんやろ。
  • 86のフロントデザインがとにかく格好悪い。旧型の方が良かった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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