もくじ
どんなクルマ?
ー 潜在的な顧客層を狙う新たな一手
ー 新しいスタイリングとスポーティな味付け
BMW M3 CS、デビュー コンペティションパッケージ上回る、最速版
どんな感じ?
ー 広い室内に優れたドライビングポジション
ー 力強い加速に満載のテクノロジー
ー 輝くステアリング・フィール
「買い」か?
ー 運転を楽しみたいドライバーにこそ
スペック
ー BMW X2 xDrive20d アクティブのスペック
どんなクルマ?
潜在的な顧客層を狙う新たな一手
メルセデス・ベンツに世界的なプレミアム・ブランドの頂点を奪われたBMW。その奪還をする勢いが本当のものなのかどうか、BMW X2を見れば明らかになるはず。
新しいコンパクト・クロスオーバーは従来のスタリングを捨て去り、これまでのBMWとは一線を画す新しいスタイリングを獲得した。明確な若者層向けの広告キャンペーンも、プレミアム・ブランドの頂点に返り咲くために必要不可欠な、潜在的な新規の顧客層の掘り起こしを目的にしたもの。
ヨーロッパ市場で急速に成長するX1が属するカテゴリーに、その兄貴分を投入することで、BMWは比較的容易に販売数を伸ばすことができると考えている様だ。
あなたも、そのひとりかも。
新しいスタイリングとスポーティな味付け
BMW X2が参入するカテゴリーは、まさに強豪ぞろい。アウディQ3、ジャガーE-PACE、メルセデス・ベンツGLAなどが激戦を繰り広げている最中。
成功は簡単ではなさそうだが、今回の初試乗を通じて、ホットハッチに代わる様な、スポーティなフレーバーを感じ取ることができた。
X2では、BMWを象徴するキドニーグリルを新しい解釈でデザインした、新しいスタイリングを提示している。また、前後長の短いボンネットはフロントウインドウを前方にレイアウトさせ、車内空間にもゆとりを持たせている。
BMWでは見慣れた緊張感のある面構成に、筋肉質なスクエア形状のホイールアーチが前後にうがたれる。また一般的なSUVと比較して高さ方向が薄いグラスエリアと、大きく傾斜したテールゲート、Cピラーに埋め込まれたエンブレムがエクステリアの特長。Cピラーのエンブレムはかつてのクーペ、CSのようだ。
発表段階では、X2が搭載するエンジンはふたつのみ。191psを生み出す2.0ℓ直列4気筒ガソリンと前輪駆動の組み合わせとなるsDrive20iと、2.0ℓ直列4気筒ディーゼルから189psを発生させる4輪駆動のxDrive20d、さらに231psを発生させるxDrive25dとなる。
X1のラインナップを補完する、より小さな3気筒ガソリンやディーゼルなどは、年末には登場予定。
乗り込んで、仕上がりを確認してみたい。
どんな感じ?
広い室内に優れたドライビングポジション
現行X1と比較して、全幅は1821mmで同じだが、全長は4360mmで49mm短く、全高は1526mmで69mm低いX2。ホイールベースは両車ともに2670mm。
車内は充分な広さがあり、ドライビングポジションも素晴らしい。ドア開口部の高さはほぼ同じなのに、フロントシートはX1よりも20mm低くセッティングされ、新しいBMWのスポーティさを助長している。標準装備のマルチファンクション・ステアリングホイールの位置と運転席の調整幅も不足はない。
一方で、リアシートはフラットで着座位置も高く、背の高いひとにとっては、ヘッドルームは狭く感じられるだろう。
荷室の容量は470ℓと大きく、このクラスでは最大の容量を確保している。ちなみにQ3より49ℓ、GLAより10ℓ広いが、E-PACEと比較すると10ℓ狭い。40/20/40に分割できるリアシートを全て折り畳めば1355ℓまで拡大できるほか、積載しやすい形状なのが美点だ。
室内の質感は、想像を超えるということはなく、ゲームチェンジャーになる内容とは言えないが、プラスティック素材の使い方がうまい。手触りの柔らかい部分と、艶のある部分とが巧みに使い分けられ、仮にオプションのデジタル・インストゥルメントが無かったとしても、洒落た雰囲気に仕上がっている。
エルゴノミクスに関しても優れている。主要なコントロール部分は手の届きやすい範囲にレイアウトされ、インフォテイメント・システムもタッチ・ディスプレイから直接操作が可能。センターコンソールに置かれるロータリースイッチは、オプションの音声認識機能のもの。
一方で、インナーパネルの見切り位置は後ろに伸びるほど高くなり、太いピラーもあって、横方向の視界はあまり良くない。後部座席のサイドウインドウは更に狭くなり、薄いリアガラスは後方視界を制限してしまう。
力強い加速に満載のテクノロジー
今回のテスト車両はxDrive20dアクティブで、BMWがポルトガルで販売する唯一のモデル。189psと40.7kg-mを発生させ、アウディQ3 2.0 TDIや、ジャガーE-PACE2.0d 4WD、メルセデス・ベンツGLA220 4 Maticと直接のライバルとなる。
ドライビングモードはコンフォート、スポーツ、エコ・プロから選択が可能。燃料の消費を抑えることで、21.7km/ℓの燃費を実現しており、CO2の排出量は121g/kmとなっている。
駆動システムは、マルチプレートクラッチを搭載した四輪駆動で、グリップやトラクションの状況に合わせて、フロントかリアに独立して100%の駆動力を割り振ることができる。
またX1 xDrive20dと同様、BMWがダイナミック・パフォーマンス・コントロールと呼んでいる電子制御ディファレンシャルを搭載し、左右のリアタイヤへ供給する駆動力をコントロールすることで、トルクベクタリング機能も実現している。
さらにドライビングの楽しみを高めてくれるのが、4気筒のX2 xDrive20dに組み合わされる標準の8速ATの賢さ。どんな状況でも最適なギアを瞬時に選択し、非常になめらかに変速をする。充分なトルクを伝達し、1600kgの車重を感じさせない力強い加速を提供してくれる。
0-100km/h加速は7.7秒とされ、悪くない数字。ちなみに比較すると、184psのQ3 2.0 TDIが7.9秒、178psのGLA220dは7.7秒となっている。
輝くステアリング・フィール
シャシーの味付けはX1より魅力的なものとなっており、X2の方がダイナミック性能では高いと言えるだろう。X2のサスペンション形式はフロントがマクファーソンストラット式、リアがマルチリンク式となる。
今回の試乗コースで輝いていたのは、ステアリングフィール。操作感は重く、アシスト量もかなり変化する仕様だが、センター付近では非常にダイレクト。ロックトゥロック全域で充分なフィーリングが得られる。そのため、住宅地や高速道路など、速度域を問わず正確で、ドライビングを楽しめる。
X2 xDrive20dには標準でスムーズさを高めてくれるサーボトロニック(車速感応式パワー・ステアリング)を搭載し、ツギハギや欠けた部分の多いアスファルトでも、無駄なキックバックや路面からの衝撃を防いでくれる。
走らせた感覚も、腰高のクロスオーバーというより、できの良いハッチバックのように気持ち良いライン取りができる。コーナーでのロール量は穏やかだが、漸進的にしっかりとした動きがあり、ワインディングでも自信を持って走らせられる。コンディションの良い路面なら、グリップを失わせるにはかなりのスピードが必要となりそうだ。
緻密なブレーキペダルの感触、シフトダウン時のATのテキパキとした動き、ターンイン時のシャープな挙動と余裕のあるグリップ力。どんなコーナーでもX2の準備は万端。加えて4輪駆動システムとダイナミック・パフォーマンス・コントロールが、コーナー出口での確実な操縦性を約束してくれる。
そして、X2 xDrive20dに標準装備されるダイナミック・ダンピング・コントロールが生む減衰特性は非常に印象的なもの。X1と同様、基本的に硬い味付けながら、充分な柔軟性も兼ね備えており、リバウンドも上手に抑えられ、短い周期の凹凸などでも上質に処理してくれる。大きな塊などの衝撃は流石に拾うが、乗り心地が悪化することはない。
「買い」か?
運転を楽しみたいドライバーにこそ
X2の優れた印象は、その落ち着いた振る舞いにある。
エンジンからのノイズはキャビンへは殆ど届かず、タイヤの転がり感も上質。路面からの細かな振動もシャシーがうまく吸収してくれる。また高速域でも、背の高いライバルと比較して横風の影響を受けにくいところも長所だ。
これらが組み合わさって、素晴らしい直線でのスタビリティを得ており、超距離クルーザーとしての資格も備えている。
多様化するコンパクトカー・セグメントにおいて、クロスオーバーの様な新しいスタイルは、かつてのハッチバックの様な魅力を感じさせる存在となっている。販売数がそれを裏付けている。
BMW X2 xDrive20dは、ドライビング・フィールを重視するドライバーにとって、パーフェクトとは言えないまでも、極めて高い説得力を持っている。もし、アウディQ3、ジャガーE-PACE、メルセデス・ベンツGLAといったクルマで納得できないなら、新しいX2は有力な候補となるだろう。
ただし、価格の面を考慮して俯瞰すると、このモデルのスイートスポットは、もう少し下のグレードにあるように感じたことも事実だ。
BMW X2 xDrive20d アクティブのスペック
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