躍動的で洗練された12代目のスタイリング
ご長寿モデルとして広く知られる、トヨタ・カローラ。初代の発売は1966年に遡る。だが、2008年以降はしばらく提供が止まっていた。新鮮さが薄れたという理由で、オーリスの名で売られていたからだ。
【画像】完璧バランスの「快適性と操縦性」 トヨタ・カローラ・スポーツ 競合ハッチバックと写真で比較 全127枚
しかし、名前は問題ではなかった。当時のCEO、豊田章男氏のリーダーシップのもと、2019年にカローラは復活。その12代目は、同クラスの欧州製ハッチバックと互角に渡り合える実力を獲得し、グレートブリテン島でも頻繁に見かける人気モデルとなった。
クルマの買い替えでは、ついSUVを考えがちだが、現行のカローラ(カローラ・スポーツ)はハンサム。2023年にはアップデートを受け、訴求力も増している。小さめのサイズをお考えなら、検討候補へ加えて欲しい1台だ。
カローラ・スポーツの基礎骨格をなすのは、TNGAプラットフォーム。優れたエネルギー効率と操縦性を生み出す、重要な基盤となっている。
オーリス時代との比較で、重心高は10mmダウンし、ボディ剛性は60%アップ。このクラスでは珍しく、リアサスペンションにはマルチリンク式が奢られる。
スタイリングは、不自然な癖がなく、躍動的で洗練性を感じるもの。長さは40mm、幅は30mm広がったが、全高は25mm低くバランスが良い。フォルクスワーゲン・ゴルフと、ホンダ・シビックの間くらいの大きさだ。
2023年のフェイスリフトでヘッドライトなどへ手が加えられ、英国仕様ではアルミホイールの選択肢も更新。上級グレードはアダプティブLEDヘッドライトで、デイライトが内臓される。
製造品質や堅牢性の高いインテリア
パワートレインは、1.8Lか2.0Lエンジンが主体のトヨタ式ハイブリッド。主に駆動用として働くものと、無段変速とスターター・ジェネレーターの役目を担うもの、2基の電気モーターが組み合わされる。
アップデートでは、この電気モーターの能力が引き上げられた。1.8L用のユニットは、72psから108psへ増強。英国仕様では、システム総合で140psを発揮する。2.0L用は95psから112psへ増え、システム総合で195psを得た。
駆動用バッテリーも、ニッケル水素からリチウムイオンへ変更。リアシートの下側に搭載される。
車内空間は、デザインや素材の上質さに際立つ部分はなくても、製造品質や堅牢性は高い。相当に手荒く扱っても、10年くらいは平気で耐えそうに見える。
エアコン用だけでなく、トラクション・コントロールやサイドブレーキにも実際に押せるハードボタンが用意され、扱いやすい。シートヒーターのスイッチも、手袋のまま押せるサイズがある。
一方、ドアポケットやカップホルダーは小さめ。上級グレードでスマートフォンのワイヤレス充電パッドになる部分は、中級グレード以下では浅いトレイになる。
荷室容量は、1.8Lで361L。2.0Lでは、12Vの補機バッテリーが荷室側に載るため、313Lへ減じる。後席の背もたれは40:60の分割で倒せるが、このクラスでは広い方とはいえない。
後席側の空間も狭めといえる。余裕を求めるなら、ステーションワゴンのカローラ・ツーリングを検討したい。
1.8Lでも充分活発なハイブリッド
フェイスリフト後は、10.5インチ・タッチモニターが標準に。スマートコネクト+と呼ばれるインフォテインメント・システムが実装され、グラフィックは鮮明で、メニュー構造は理解しやすい。メーター用モニターは、広範囲で任意に変更できる。
ただし、再生メディアとナビを同時に表示できる画面モードはなく、ショートカットキーは、スマートフォンと連携させると消えてしまう。運転支援システムの項目では独自の略語が多用され、淡白なモノトーン表示なのが惜しい。
公道へ出てみると、1.8Lでもカローラ・スポーツは活発。0-100km/h加速は、計測したところ9.4秒で処理した。
エンジンサウンドは聴き応えがあるわけではなく、e-CVTが高回転域をキープしがちだが、加速力には余裕があり、遮音性も悪くない。走行中に生じる、エンジンの始動・停止も気になりにくい。
交差点では、電気モーターだけで勢いよく発進してみせる。巡航速度になったら、様子を見ながら右足を傾けることで、エンジンの始動を遅らせられる。
これで物足りない場合は、マニュアルモードが追加される、2.0Lで195psの「パフォーマンス」ハイブリッドを英国では選択可能。0-100km/h加速は7.4秒が主張される。とはいえ、トヨタ式ハイブリッドらしく、日常的な走行シーンが最も好印象だが。
ドライバーが変速しても、反応は穏やか。GRカローラの弟のように、エキサイティングなハッチバックになるわけではない。
直感的で全体が調和した操縦性 快適性も高い
e-CVTの強みは、圧倒的な滑らかさ。段付きの変速がなく、アクセルペダルの角度に応じてパワーが素早く提供される。バッテリーEVへ迫るほど、シームレスといってもいい。アップデート後は回転数が抑えられ、一層穏やかに運転できるようになった。
EVモードはあるが、駆動用バッテリーが小さいため、基本的にはシステム任せの方がベター。回生ブレーキも備わる。シフトセレクターをBにすると、エンジンブレーキも強く効くようになる。
カローラ・スポーツ最大の強みが、直感的で全体が調和した操縦性。トヨタの技術者がコストを抑えつつ、このクラスで最も動的能力に優れたモデルへしようとした努力は、試乗直後から伝わってくる。
横方向のグリップ力に優れ、コーナリングバランスは良好。自然で安定した姿勢制御と、鮮明な身のこなしを実現させている。
サスペンション・スプリングは、恐らく競合より柔らかい側にあるが、コーナリングは驚くほどフラット。ステアリングは適度に重くダイレクトで、濃くはないが、手のひらへ感触も伝わってくる。
回頭性は機敏でありつつ、反応は予想しやすい。素直に身をこなし、意のままに運転しやすい。
乗り心地も褒められる。荒れた路面での快適性を重視するなら、ホイールは16インチがベストかもしれない。少しロードノイズは大きめながら、シートも心地良く、長距離ドライブ後の疲労感はライバルより小さいだろう。
運転支援はクラス最高水準 合理的な仕上がり
運転支援システムは、衝突被害軽減ブレーキや車線維持支援付きアダプティブ・クルーズコントロール、道路標識認識などが標準。クラス最高水準だが、ブラインドスポット・モニターと後方のクロストラフィック・アラートは、上級グレードに制限される。
アダプティブ・クルーズコントロールは滑らかに動作し、設定も簡単。車線維持支援は、ステアリングホイール上のボタンで切り替え可能。現行の中で、最もドライバーを邪魔しないシステムの1つだと評価できる。
燃費は、1.8Lでも2.0Lでも、実は大きな差がない。市街地では1.8L、高速道路では2.0Lの方が僅かに有利だから、利用条件で検討したいところ。
ちなみに英国の場合、保証は最長10年か16万kmまで伸ばせる。駆動用バッテリーは、最長15年まで保証してくれる。
アップデートを受けた、カローラ・スポーツ。エキサイティングでも、トレンディでもないとしても、このクラスのハッチバックとして合理的な仕上がりにある。高級感は低いかもしれないが、それはお門違いだろう。
英国の道路環境にサイズは丁度良く、操縦性と乗り心地のバランスは完璧。長年改良を重ねてきた、ハイブリッド・システムも優秀。e-CVTは滑らかに仕事をし、充分なパワーがあり、燃費に優れ基本的に静か。気分次第で、運転も軽く楽しめる。
◯:乗り心地と操縦性のバランスは完璧 スタイリッシュでモダンなデザイン 快適で操作性の良い車内空間
△:少し時代遅れ感のあるインフォテインメント・システム やや狭めな車内空間 時々エンジン音がうるさいe-CVT
トヨタ・カローラ・ハッチバック(カローラ・スポーツ)1.8ハイブリッド(英国仕様)のスペック
英国価格:3万495ポンド(約579万円)
全長:4370mm
全幅:1790mm
全高:1435mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:9.1秒
燃費:22.7km/L
CO2排出量:100g/km
車両重量:1345kg
パワートレイン:直列4気筒1789cc 自然吸気+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:140ps(システム総合)
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:e-CVT(前輪駆動)
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