フルモデルチェンジした日産の新型「セレナ」を小川フミオがテストドライブした。パワフルなe-POWERの走りに注目!
大きく変わったフロントマスク
e-tronはデザインとテクロノジーの融合である──アウディが未来に向けて進める変革とは?
いちど乗ると、便利で病みつきになるというミニバン。大人数での移動が多いなら、日産自動車が2022年11月28日に発表した新型セレナなんてどうだろう。
新しくなったセレナは、「初代から受け継がれるBIG、FUN、EASYのコンセプトに代表される室内空間の広さや利便性はそのままに、移動時の快適性を追求した」と、メーカーは謳う。
ドライブトレインには、日産ファンにはおなじみの「e-POWER」も用意される。モーターで駆動するけれど、駆動用バッテリーへの給電はエンジンで行うシリーズ式ハイブリッド。今回、そのエンジンも新しくなった。
4765mmの全長と1885mmの全高をもつボディと、2870mmのホイールベースの組合せは、4685mmの全高と2860mmのホイールベースの現行型より少しだけ大きくなった。
スタイリングのイメージも、フロントマスクが大胆になったことで、新しくなったなぁという印象を受けた。
フロントマスクは横バーが強調されたもので、それが日産車のデザインアイデンティティとなっている「Vモーショングリル」を形成。LEDによって小型化したヘッドランプは、縦に3灯が並ぶユニークなデザインが採用された。
「かなり慎重に消費者の好みを研究しました」
日産の担当デザイナーが、試乗したテストコースで、裏話を教えてくれた。個性も必要だが、同時に嫌悪感をもたれないよう、気をつけたという。
幅広い速度域で快適乗ったのは、「e-POWER」搭載の「e-POWER LUXION(ルキシオン)」と「ハイウェイスターV」。前者は7人乗りで、2列目はキャプテンシートがそなわるなど、パーソナル感が強め。後者は8人乗りだ。
この2台は、ドライブトレインも足まわりも共通。72kWの最高出力と123Nmの最大トルクを発生する1433cc直列3気筒エンジン(発電用)に、120kW、315Nmのモーターを組み合わせた前輪駆動だ。
ルキシオンのほうが、「プロパイロット2.0」「プロパイロットパーキング」「プロパイロットリモートパーキング」「Nissan Connectナビゲーションシステム」「インテリジェントアラウンドビューモニター」「オートレベライザー付LEDヘッドランプ」などを標準装備とし快適性が高い(ハイウェイスターVではオプション設定)。
ドライブした印象は、ひとことでいうと、たいへん扱いやすい。ファミリーが大事なターゲットなので、そもそもとんがったクルマづくりは目指していないだろうけれど、それでも、過剰なものはないし、不足しているものもない、という印象。
たとえば、ステアリング。中立付近で過敏さはないので、高速でも気楽にしていられるいっぽう、鈍さはない。切り込んでいくと、ゆっくりめだが、しかし確実に車両が反応してくれ、なかなか気持ちよいレーンチェンジがおこなえる。
「静粛性は重要な開発ポイントでした」と、日産の開発者が語っていたとおり、ウインドウまわりやルーフを風が叩く音はかなり遮断されている印象を受けた。床下からは小石がパチパチとあたる音が聞こえてくる場面もあったが、不快というほどではない。
足まわりの動きはしなやか。長いホイールベースと、それなりの車重の恩恵もあって、いやな揺れはまったくなく、幅広い速度域で快適だった。
「高剛性ステアリングの採用で操縦安定性を高めた」というのも、日産が強調するポイント。実際にそのとおりで、小さなカーブでも、意外なほど安定している。さきにも触れたが、ステアリングホイール操作に対する車体の反応は正確で、うまいセッティングだなぁと、私は感心した。
「ミニバン世界初搭載」(日産)の先進運転支援システム「プロパイロット 2.0」も、あたらしいセレナの自慢装備だが、乗ったテストコースでは、通信環境のせいか、それとも車線が消えるところがあるせいか、ハンズオフ機能を長い距離で使い続けられなかったのが残念。これまでの日産車の実績からすれば、使い勝手のよさは期待できそう。
ラインナップは、今回のe-POWER(319万8800円~)と、2.0リッターガソリン(276万8700円~)で構成される。装備満載のLUXIONはe-POWERにのみ設定(479万8200円)。
来春発売という新しいセレナに今から目が離せない。なお、インテリアの使い勝手などについては別の記事で紹介したい。
文・小川フミオ 写真・小塚大樹
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