レクサスの乗用車のなかでも、とりわけ人気の高いモデルがSUVの「RX」だ。その理由はなにか? モータージャーナリストの田中誠司が考えた。
ライバル勢をおさえてぶっちぎりのトップ
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レクサス「RX」がよく売れている、というのは東京の街中で道行くクルマたちをしばらく眺めていれば気づくことであるが、あらためて感心したのは、ボルボ「XC90」の試乗会でのことだった。
ボルボ・カー・ジャパンが示した日本におけるE-SUVセグメント(全長4.8~5m少々)のモデル別2019年販売台数集計によると、ボルボのほかにもアウディ「Q7」「Q8」、メルセデス「GLEクラス」「Gクラス」、BMW「X5」「X6」、ポルシェ 「カイエン」、ランドローバー「レンジローバー ヴェラール」等が割拠するこのセグメントにおいて、ぶっちぎりのトップ、全体の43%をレクサスRXが占めるという。
価格帯でなくボディサイズで区切るのはフェアじゃない、という声もあるかもしれないが、要はいま、大きめのSUVで日本のスタンダードになっているのがレクサスRXである、ということだ。
さらに、レクサスの中でもRXは販売のリーダーで、今年2月までの半年間におけるRXの販売台数は、レクサス全体の約30%におよぶ。
見た目はワイルド、中身は快適
どうしてRXがこれほどの成功を収めることになったのか? それはひとえに、コンセプトをブレさせることなく4世代、20年あまりにわたって作り続けてきたからである、と、筆者は考える。
レクサスRXの初代モデルは1998年に北米で発売された。当時はまだレクサスが日本に進出していなかったことから、基本的に中身が共通のトヨタ「ハリアー」が1997年から日本では販売されていた。
デビュー当初のTVコマーシャル・フィルムのテーマは“WILD but FORMAL”。夜闇を駆ける金色のSUVをカメラは追うが、そのドライバーの顔は見えない。古典的な高級ホテルのエントランスにストレッチ リムジンに続いて滑り込み、ドアマンが出迎えると黒いスーツを着た、首から上がライオンの“ワイルドな”紳士が降り立つ。
もともと軍用車だったメルセデスGクラスや、英国王室御用達から高級化へ歩んだレンジローバーは、そもそも本格的なクロスカントリー4WDであるから別格として、乗用車の基本構造を利用して高級感を保ちながらSUVを仕立てるというRX/ハリアーのコンセプトは、その後多くのフォロワーを生む、当時としてはユニークなものだった。
トヨタ「ウィンダム」/レクサス「ES」等に搭載されたMZ系のV型6気筒エンジンはとても静かでトルクも十分。高級セダンに負けない乗り心地や静粛性には、急速にSUVへの対応を求められたタイヤ技術の進化も貢献していたはずだ。見た目はクロスカントリー車的でも走れば高級車的であるハリアーは、“WILD but FORMAL”のキャッチフレーズを具現していた。
変わらぬデザイン・コンセプト
現在では販売の6割を占めるハイブリッド バージョンや、人気の高いF SPORTモデルを追加し、日本でもレクサス ブランドから販売されるようになったRXであるものの、“高級感はあるけれど極端な高価格ではないクロスオーバー車”という立ち位置は、初代から揺らいでいない。
デザインの観点でもRXは一貫している。初代ハリアーから現行RXまでボディサイズはわずかずつ拡大されており、合計で全長は315mm、全幅は80mm、全高は55mm伸びた一方、それぞれの世代でホイールベースが全長に占める割合を計算すると、4世代すべてで57%台に収まっているのだ。
これは、マーケットの都合でボディを縮めたり伸ばしたりせず、レクサスRXらしいバランスを大事にしている証拠で、見た目の印象が世代を経て現代的になりつつも、大きくは変わっていない理由である。
こうした一貫性は、ひと言で言えばブランディング構築に寄与する。具体的には、たとえば販売面を考えると、旧型から新型への移行期間にはどうしても旧型をさっさと売り尽くして、新型の販売対応に切り替えたいという現場の意向があらわれる。そんなとき、新型があきらかに前とは別モノであったとすれば、旧型をいくら値引きしてもお客さんは買ってくれない。
そして新車は何年かすると、いずれ下取りに出される運命にあるが、新型と旧型で著しく中身やデザインが違い、旧型の中古車需要が落ちた場合、当然下取り価格は低迷する。下取り価格が低ければ、そのオーナーが新車に乗り換えるために支払う金額も増え、購買のハードルが高くなるという流れだ。
むろん、技術の革新や著しい市場の変化があれば、クルマのコンセプトは抜本的に見直されるべきだ。しかし時代の一歩先をゆくコンセプトを打ち立てて新しい市場を開拓し、それを慎重に磨きながら成長させていったハリアー/RXは、自動車の製品企画における貴重な成功例と言っていいだろう。
豪快な全開加速
さて、2015年末の登場から5年近くが経つ現行レクサスRXの現状と、今後どうあってほしいか、について語って本稿をまとめたい。試乗車は「RX450h“バージョンL”」。車両本体756万円にパノラマルーフ、アダプティブ・ハイビーム、リアシート・エンターテインメント、マークレビンソン・オーディオなど80万7400円のオプションを搭載している。
操った第1印象としては、ステアリング操作力がとても軽く、ドアミラー付近の見通しが良くて視界良好。小まわりも利き、運転席の座面角度まで微細に調整できるなど、日本車らしい配慮が好ましい。組立品質は、内外装ともあるべきものがあるべきところに収まっているのはさすがレクサス。
ハイブリッド・パワートレインは、アクセルペダルを慎重に踏み込めば発進からしばらくはモーターの力だけでエンジンを始動させずに走ってくれるし、エンジンの始動・停止に伴う振動もうまく抑えられている。街中で走らせる限りは回生ブレーキの違和感も皆無に近く、かつてのハリアー・ハイブリッドからの進化を如実に感じられた。
車重は2140kgに及ぶものの、自然吸気3.5リッターV型6気筒エンジン(262ps/335Nm)に前後ふたつのモーター(フロント:167ps/335Nm、リア:68ps/139Nm)を組み合わせての全開加速は、かなり豪快だ。
しかしこの加速力に相応なほど足まわりは引き締まった設定ではないし、一定速巡航でも欧州の高級SUVに比べると、ドライバーの目線が一定レベルにビシッと落ち着く安心感に乏しい。日本車が遅れていると言いたいのではなく、アメリカが主戦場でかつ“イージー・ゴーイング”な感覚が求められるSUVでは、こうした仕立てになるべくしてなるのだろう。
ハリアー・ハイブリッドの時代から変わらない傾向だなぁ、と、思ったのは、せっかくのマルチシリンダー・エンジンなのに、ハイブリッドシステムを組み合わせると滑らかさがあまり感じられない点だ。
昔トヨタのハイブリッド技術者に尋ねたところ、「エンジン自体は滑らかにまわっても、ハイブリッドのいろんなコンポーネンツを付けるとバランスを取るのが難しい」と、述べていたのを思い出した。それはいまでも変わらないのだろうか。
現状の、有り余るパワーと限られたシャシーのキャパシティを考慮すると、RXのクラスでも、ハイブリッドはもはや軽く燃費のいい4気筒ターボエンジンの方がふさわしいのかもしれない。
燃費の面でも、JC08モードで18.2km/Lとカタログ上では健闘しているものの、2.0リッター ディーゼルのレンジローバー「ヴェラール」(JC08モード:14.4km/L)あたりと実際に比較してどの程度リードが保てるかは興味をひくところだ。
SUVの世界も車両サイズや価格が細分化され、コンペティティブになる一方である。そんな中で、レクサスRXがもはや伝統とも言える高級クロスオーバーのコンセプトやさまざまなバランスをいかに保ちながら、世界をリードし日本の消費者を楽しませてくれるのか、注視したい。
文・田中誠司 写真・安井宏充(Weekend.)
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