現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 水を得た鉄馬は、軽やかに走る──新型ハーレーダビッドソン・ナイトスター試乗記

ここから本文です

水を得た鉄馬は、軽やかに走る──新型ハーレーダビッドソン・ナイトスター試乗記

掲載 2
水を得た鉄馬は、軽やかに走る──新型ハーレーダビッドソン・ナイトスター試乗記

日本に上陸したハーレーダビッドソンの新型「ナイトスター」に河西啓介が試乗した!

空冷から水冷へ

新しいトヨタ・ハイランダー登場! かつてのクルーガーは今!?

ハーレーダビッドソンからあらたに発売された「ナイトスター」。ハーレーのラインナップにあって、軽量コンパクトなモデルとして人気を博してきたスポーツスター・シリーズのニューモデルだ。

従来のスポーツスターとの大きな違いは水冷エンジンを搭載している点。1957年の誕生以来、約65年にわたり空冷エンジンを使用し続けてきた(そして、それが魅力となっていた)スポーツスターであるが、環境対応など今の時代に求められる諸々の要件を適えるためついに水冷エンジンを積むに至った。

とはいえ“初”の水冷スポスタは昨夏発売された「スポーツスターS」で、このナイトスターは第2弾モデルということになる。

じつはハーレーにとって水冷エンジン化というのはひとつ“ハードル”とも言える。20年ほど前に発売した「Vロッド」やその後の「ストリート750」といった水冷モデルは、いずれも現在はラインナップから姿を消している。

つまりハーレーといえば“空冷Vツイン”であり、その特有の鼓動感やテイストによる魅力がファンに深く浸透している、ということなのだ。

そんな背景を踏まえると、このナイトスターについてもっとも気になるのは「水冷エンジンになっても、スポーツスターらしさ、ハーレーらしさは失われていないのか?」ということだろう。

今回の試乗が都心を1時間ほど走った“ちょい乗り”であることを断ったうえで言うなら、僕が感じたのは「これまでのスポスタとは“別モノ”と言えるぐらい変わっているが、“らしさ”は残されている」という点だ。

軽い!

まずナイトスターの外観は従来のスポーツスターのイメージを踏襲している。

フロント19インチ、リア16インチホイールを履き、全体に低く構えたプロポーション。小振りな燃料タンク、シングルシート、そしてリアフェンダーへとつながるライン。その姿は紛うかたなきスポーツスターであるが、その中心に鎮座する、金属から削り出したような“塊”感のある水冷Vツイン「レボリューションマックス975T」エンジンが、これが従来とは異なる新世代モデルであることを主張している。

低いシートに跨りサイドスタンドを払うと、空冷スポスタとの違いは明らかだった。すぐに分かるほど軽いのだ。車体を引き起こし、直立させるときに「ヨッコイショ」と気合を入れる必要がない。低めにセットされた幅広のハンドルを握り、前輪を左右に振ってフロントまわりの重さを確かめると、その印象は確信に変わる。ナイトスターの車重は221kgで、空冷モデル(2021年式スポーツスターXL883Nアイアン)の256kgに対しじつに35kgも軽量化されている。

軽めのクラッチを握り、左足でギアをローに踏み込むと、シフトフィールはやや曖昧というかシブい感じ。

とはいえここは従来のハーレー流で、乗り込んでいくうちに徐々に馴染んでいくだろう。新品のワークブーツ的な初期のゴワゴワ感については、少なくとも僕は“ハーレーだから”と許容できてしまう。

だがエンジンからはその“ゴワゴワ”が感じられなかった。空冷Vツインの鼓動を「ドコドコ」と表すなら、この975cc水冷Vツインは「ヒュンヒュン」だ。5000~6000rpmぐらいまで軽く、スムーズにまわる(レブリミットは7500rpm)。

そしてとてもパワフルだ。スペックを見ても最大トルクは95Nmと(ハーレーは慣例として最高出力は公表しない)、空冷モデル(2021年式スポーツスターXL883Nアイアンは68Nm)に比べ大幅に向上している。

ユーザーにとってはハッピーなモデルチェンジ

今回は都心での試乗で、主に首都高速を走ったが、その中で感じたのは空冷スポスタに比べると走りが格段に軽快になった点にある。

「ハーレーにしては」という言い訳をせずにスポーティーな走りを楽しめた。ひとつは燃料タンクをシート下に配置したことによる低重心化の恩恵で、身のこなしがとてもシャープになった(従来の燃料タンク位置にあるのは補機類や配線のカバーの役割を果たす)。またバンク角に思いのほか余裕があり、首都高を軽く流す程度ではステップを擦ることがなかったのも、気持ちよく走れた理由だった。

ざっくりと括るならば、ドゥカティやトライアンフといった欧州メーカーのネイキッドスポーツも比較対象となるほど、洗練された走りを実現したナイトスターであるが、いっぽうで従来のスポーツスター・シリーズの、いわゆる“鉄馬”的な無骨さや味わいというものが薄まったのは確かだ。

しかし個人的には、スタイリングをはじめとする伝統的な魅力を残しつつ、時代に合わせた環境性能、誰もが気持ちよく操れる走行性能などを実現した、ユーザーにとってはハッピーなモデルチェンジであると感じた。

自動車にたとえるなら、伝統のスタイルを保ちながら中身を進化させている、ジープ「ラングラー」やメルセデス・ベンツ「Gクラス」に近い感じ、とも言えるだろうか。とはいえこの“水を得た鉄馬”の登場で、もはや新車で手に入れることができなくなった空冷モデルの人気がこれからグンと上昇するであろうこともまた間違いないのだが。

文・河西啓介

こんな記事も読まれています

【F1第12戦予選の要点】ヒュルケンベルグが今季ベストの6番手。戦闘力向上はアップデートの好影響か
【F1第12戦予選の要点】ヒュルケンベルグが今季ベストの6番手。戦闘力向上はアップデートの好影響か
AUTOSPORT web
「むしろ再配達が倍増する」 物流ジャーナリストの私が安易な「再配達有料化論」に警鐘を鳴らすワケ
「むしろ再配達が倍増する」 物流ジャーナリストの私が安易な「再配達有料化論」に警鐘を鳴らすワケ
Merkmal
40年前の日伊合作ボーイズレーサー[シャレード・デ・トマソターボ]は拍手喝采だったのか? 過去を20代の若者に伝えたい【リバイバルBESTCAR】
40年前の日伊合作ボーイズレーサー[シャレード・デ・トマソターボ]は拍手喝采だったのか? 過去を20代の若者に伝えたい【リバイバルBESTCAR】
ベストカーWeb
SYM「NH X 125」【1分で読める 原付二種紹介 2024年現行モデル】
SYM「NH X 125」【1分で読める 原付二種紹介 2024年現行モデル】
webオートバイ
見た目も機能も大満足! 日産キャラバンがベースのキャンパー
見た目も機能も大満足! 日産キャラバンがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
[広すぎる後席]が世間をお騒がせ中!! WR-Vの後席に[インド事情]が深くからんでいる件
[広すぎる後席]が世間をお騒がせ中!! WR-Vの後席に[インド事情]が深くからんでいる件
ベストカーWeb
メルセデスのラッセルが今季2度目のPP獲得。イギリス人がトップ3占める【予選レポート/F1第12戦】
メルセデスのラッセルが今季2度目のPP獲得。イギリス人がトップ3占める【予選レポート/F1第12戦】
AUTOSPORT web
WRCパラグアイ大会の開催が決定。2025年は南アメリカで2ラウンドを実施へ
WRCパラグアイ大会の開催が決定。2025年は南アメリカで2ラウンドを実施へ
AUTOSPORT web
インディカーが全17戦の2025年カレンダーを公開。サーマルクラブ戦がポイントラウンドに
インディカーが全17戦の2025年カレンダーを公開。サーマルクラブ戦がポイントラウンドに
AUTOSPORT web
さすがにウソでしょ~ いいえ、本当なんです!! リモコンキーを頭につけると電波が遠くまで届く!?
さすがにウソでしょ~ いいえ、本当なんです!! リモコンキーを頭につけると電波が遠くまで届く!?
ベストカーWeb
アナリスト視点で読み解く型式認証不正「6・3ショック」 渦巻く議論の中「欠けているもの」がある??
アナリスト視点で読み解く型式認証不正「6・3ショック」 渦巻く議論の中「欠けているもの」がある??
ベストカーWeb
マルティンが後半にペースを上げて勝利。オリベイラ2位でスプリント初のメダル獲得/第9戦ドイツGP
マルティンが後半にペースを上げて勝利。オリベイラ2位でスプリント初のメダル獲得/第9戦ドイツGP
AUTOSPORT web
メルセデス育成アントネッリが初優勝。雨で大荒れの一戦で宮田莉朋は10位/FIA F2第8戦レース1
メルセデス育成アントネッリが初優勝。雨で大荒れの一戦で宮田莉朋は10位/FIA F2第8戦レース1
AUTOSPORT web
RB角田裕毅、“予想外”のイギリスGP入賞に満足「今回は雨に感謝します!」一方でマシンの課題も認識
RB角田裕毅、“予想外”のイギリスGP入賞に満足「今回は雨に感謝します!」一方でマシンの課題も認識
motorsport.com 日本版
久々勝利、しかも母国イギリスで……ルイス・ハミルトン感極まる「こういう自分に戻れるなんて……そう思えない日もあったんだ」
久々勝利、しかも母国イギリスで……ルイス・ハミルトン感極まる「こういう自分に戻れるなんて……そう思えない日もあったんだ」
motorsport.com 日本版
阪口晴南車がSUGO戦のクラッシュでモノコック交換。「開幕戦鈴鹿でポールを獲ったもの」と立川監督
阪口晴南車がSUGO戦のクラッシュでモノコック交換。「開幕戦鈴鹿でポールを獲ったもの」と立川監督
AUTOSPORT web
7度のF1王者ハミルトン、母国優勝! 2年半ぶりの劇的Vに涙を禁じ得ず。RB角田裕毅は10位入賞|イギリスGP決勝
7度のF1王者ハミルトン、母国優勝! 2年半ぶりの劇的Vに涙を禁じ得ず。RB角田裕毅は10位入賞|イギリスGP決勝
motorsport.com 日本版
F1イギリス決勝速報|ハミルトン、母国で2021年以来の優勝! フェルスタッペン&ノリス下す。角田裕毅10位でポイント獲得
F1イギリス決勝速報|ハミルトン、母国で2021年以来の優勝! フェルスタッペン&ノリス下す。角田裕毅10位でポイント獲得
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

2件
  • >(ハーレーは慣例として最高出力は公表しない)

    いや、ハーレーダビッドソンジャパンの公式HP
    にはナイトスターは89HP/7500rpmって書いてありますけど。

  • 水冷は鉄馬ではない、クジラ?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村