2018年6月にドイツ本国で発表され、その半年後の2019年2月に極東で販売開始されたBMWの新型「X5」に初試乗した。
メイン市場の北米では、直列6気筒とV型8気筒の2種類のガソリン・エンジンがあるけれど、日本はとりあえず3.0リッター直列6気筒ディーゼルターボの「35d」のみでスタートした。
デカくてなにが悪い! 大型SUVとは思えぬ魅力とは?──新型BMW X7試乗記
装備の違いで、「スタンダード」とよりスポーティな「M Sport」の2グレードがある。試乗したのは、フロント・バンパー下部のアグレッシブな造形に目が止まる後者の「M Sport」だった。
新型X5、どこが変わったかというと、まずもって自動車の基本であるサイズからしてでっかくなった。隣にYカメラマンの日産の「エクストレイル」が並んだりすると、親子ほどにも違う。
♪ぞうさん、ぞうさん、お鼻が長いのね、そうよ、かあさんも長いのよ~とエクストレイルが仮に歌うとすると、かあさんのX5は体もデカイが耳(ドアミラー)も鼻(キドニーグリル)も足(タイヤ&ホイール)もデカイ。全部デカイから全体のバランスがとれていて、実際の大きさがよくわからない。
全長×全幅×全高の3サイズは4935×2005×1770mmである。なんと全幅は2mを超える。なお、これはドアミラーを含まないボディ幅だから、路地に行くときは要注意である。
先代比でいうと、36mm長く、66mm幅広く、19mm高い。新型X5は駐車場を選ぶ。と書いたけれど、考えてみたら、先代だって十分大きかった。オーナーにとっては大した違いではないのかもしれない……。
先代比42mmプラスで2975mmに延びたホイールベースは現行5シリーズとピッタンコ同一で、つまり、この第4世代のX5においても、5シリーズ・ベースのSUVという基本コンセプトは変わっていない。
プラットフォームはBMWの最新の「CLAR(Cluster Architecture)」だ。いまや7シリーズから3シリーズまで、変幻自在、融通無碍に幅広く使われている。
運転席に乗り込む前にタイヤをチェックする。なんと21インチ! 前275/40、後ろ315/35というビッグでファットな前後異サイズで、銘柄はピレリPゼロ。スーパーカーもかくやである。ちなみに、これは18万8000円のオプションだ。車両価格999万円に比して、比較的おやすいオシャレ・アイテムではあるまいか。オプション類は豊富で、22インチも選べる。
運転席によじ登ると、そこは新世代BMW製高級乗用車の世界だった。眼前には12.3インチのフル・デジタル・メーター・パネル、その左隣にも12.3インチのコントロール・ディスプレイがドライバー側にやや傾いて配置されている。ドライバー・オリエンテッドという、BMWオーナーにとってはおなじみのスタイルが新型X5でも貫かれている。
スペシャル感が漂うクリスタル製のシフトノブは、「BMW Individualパッケージ」というダッシュボードのレザー張りとレザーシートとセットになった33万7000円のオプションのなせるワザだ。これほどゴージャス感の漂うX5の内装を、筆者は見た記憶がない。
基本的な話だけれど、X5の最大のポイントは、215mmの最低地上高にある。これは同145mmの5セダンより70mm高い。わずか70mm、されど70mm。この視点の高さに、道路のほとんどをコンクリート、もしくはアスファルトで覆った先進国のひとびとが魅了されたのである。
筆者はそして、ドアを軽く閉めると、音もなくシュッと自動的に最後まで閉じるソフト・クローズ・ドアに魅了された。いかにも高級車ではないか。
走り出すと、乗り心地のスムーズなことに驚いた。21インチのでっかいホイール&タイヤで、しかもランフラット・タイヤだというのに低速でも荒々しいところが微塵もない。これこそ新型X5の最大の美点である、とすぐさま直感した。
おまけにディーゼル特有の低速トルクのおかげで、母親象のごとき巨体がスッと走り始める。これも好印象である。車重は先代より大型化したにもかかわらず、高張力鋼鈑を先代より多く使用することで、約18.5kg軽くなった。
とはいえ、車検証には車重2240kgとあるから、スーパー・ヘビー級であることに疑いはない。かように重いモノを排気量2992ccの直列6気筒DOHCターボ・ディーゼルエンジンが悠然と加速させる。なんという力持ちでありましょう。
620Nmもの最大トルクを2000~2500rpmで生み出すこのディーゼル・エンジンはxDrive35dの生命線である。全開時こそ、ムオーッという呻り声を発するけれど、それだって控えめといえば控えめで、室内はおおむね極めて静かだ。100km/h巡航は8ATのトップで1300rpmに過ぎない。主役なのに、バイエルン製のディーゼルは息を潜めるようにまわっている。
問題は、車速が上がると、俄然硬くなる点だ。新型X5は全車「ダイナミック・ダンパー・コントロール」という電子制御ダンパーを標準装備する。なお、「M Sport」はこれが「アダプティブMサスペンション」に変わる。
詳細は不明ながら、「スタンダード」モデルと較べ、最低地上高はおなじだけれど、ほかのMスポ同様、硬めの設定にしてあるに違いない。サスペンションのストロークをちょっと規制したようなスポーティ推しの乗り心地で、目地段差の続く西湘バイパスだとドシンバッタン、路面からの入力をお尻に伝えてくる。
そういう硬めの乗り心地と引き換えに、新型X5は巨体に似合わぬ俊敏さを得る。4WDの制御システムは通常は後輪にほぼ全トルクを伝え、いざというときに適切なトルクを前輪に配分する。
コーナリング時のターンインは後輪駆動で、ターンアウトは4WDとなって加速する。xDrive35dは、後輪操舵を持っていない分、ドライバーの入力に対して素直にボディが反応している感はある。バリアブル・スポーツ・ステアリングの低速側と高速側のギア比の差がさほど激しくなくて、クイック過ぎないのもいい。いかにもスポーティな大型サルーンを駆っている気分になる。
車検証による前後重量配分は1080:1160kgで、巨大な電動パノラマ・ガラス・サンルーフを装備していることもあってか、リアの方が重いのも、ハンドリングに貢献していると思われる。
というわけで、新型X5 35dのM Sportは一般道をフツウに走っているときの快適な乗り心地と、「駆けぬける歓び」の能力を発揮させようとするときの乗り心地の振れ幅がギョッとするほど大きいのだった。さながらロールズ・ロイスとミニほどに。
で、最初はギョッとしても、慣れてしまえば、こういうものだと思い始めるから人間の適応力というのはすばらしい。こんな両極端を1台のクルマが持っているのも、現代の電子制御技術あったればこそである。
ちなみに、新型X5にはXモデル初の4輪アダプティブ・エア・サスペンションもオプションで装備できるし、「スタンダード」のタイヤ&ホイールは19インチ、「M Sport」は20インチだったりするので、快適性重視の方はそちらも気にして試乗されることをオススメしておきたい。
そもそもBMW X5のようなSUVは BMW X5以前、地球上に存在しなかった。ということは自動車ファンであれば記憶しておきたい。1999年、初代X5は世界初のオンロード用高性能SUVとして登場し、自動車の歴史を変えた。
それまでエンジン横置きの乗用車用プラットフォームを使った高級SUVとして、トヨタ「ハリアー」、別名レクサス「RX」があった。けれど、縦置き後輪駆動ベースのドイツものとしては史上初だった。
X5のあと、ポルシェが「カイエン」を投入し、メルセデス、アウディが続いた。そして、ジャガー、マゼラーティにベントレー、ランボルギーニにロールズ・ロイスまでもがつくっちゃうというプレミアム・ブランドSUVの百花繚乱状態を出現させた。
BMW X5は自動車の標準形をセダンからSUVへと変える革命に火をつけたのである。
もうひとつ、X5というと、筆者は2009年公開の「しあわせの隠れ場所」というアメリカ映画を思い出す。コインランドリーで寝起きしているホームレスの黒人の中学生ぐらいの少年を、サンドラ・ブロック演ずる白人のお金持ちの夫人が拾って、じゃなかった、引き取って、家族同様の愛を注ぐ。少年は学校に行けるようになり、やがてアメリカン・フットボールのプロ選手になる……というシンデレラ・ストーリーである。
黒人と白人、貧者と富者の対立云々が語られるアメリカにあって、なんとまあ実話だそうで、そこにアメリカの凄みを感じる。
で、サンドラ・ブロック演ずる主人公のクルマが、何世代か前の、当時のおそらく最新のX5で、彼女はこのSUVでもって学校の送り迎えとか買い物とか女性同士の集まりとかに出かけていく。アクティブなママの実用の道具として、まことに使い勝手がよさげで、高級SUVの存在理由というものに得心した。
新型X5はようするに、このような用途にピッタンコな高級車としてアップデイトされている。リアゲートがレンジ・ローバーみたいに上下分割して開くのも見落とせない。高性能3眼カメラを使った最新の運転アシスト機能も付いている。
筆者の個人的見解によると、新型X5は新しい「しあわせの隠れ場所」なのである。隠れ場所としては大きすぎるような気もするけれど、狭い隠れ場所にしあわせが潜んでいる、というのもしあわせな感がしない。水前寺清子も歌っていた。♪しあわせは歩いてこない。だから歩いてゆくんだね。ワン・ツー、ワン・ツー~
新型X5があれば、(しあわせ探しも)だいぶ楽である。
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