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新しくもないのに前年比2倍の売れ行きの怪! トヨタ・ルーミーが突如大躍進を遂げたワケ

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新しくもないのに前年比2倍の売れ行きの怪! トヨタ・ルーミーが突如大躍進を遂げたワケ

 売れ筋モデルのヤリス&ライズに続く大健闘!

 ルーミーの売れ行きが急増している。10月の登録台数は1万1487台に達し、前年の約1.7倍に。小型/普通車の登録台数ランキングでも、ヤリス(1万8592台)とライズ(1万3256台)に続き3位に入った。

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 ちなみにヤリスの登録台数には、SUVのヤリス クロスも約6900台が含まれる。ヤリスとヤリス クロスでは、車名には共通性があっても、ボディなど車両の作りはまったく違う。そこでヤリスクロスの台数を差し引いて、ヤリスの正味台数を割り出すと約1万1700台だ。つまり2020年10月の登録台数1位は、実質的に1万3256台のライズになり、約1万1700台のヤリスと1万1487台のルーミーが続いている。トヨタの3車がほぼ横並びの台数で上位を独占した。

 それにしても、なぜルーミーの登録台数が前年の約1.7倍まで急増したのか。コロナ禍の影響が収まってきた2020年6月~8月は、ルーミーの対前年比は60~80%だった。つまり前年に比べて20~40%減っていた。それが9月になると、対前年比の減少が約10%に収まり、10月は165%、すなわち前年の1.7倍に急増した。その結果、前述のとおり小型/普通車登録台数ランキングのトップ3車に入っている。

 ライズの発売は2019年11月、ヤリスは2020年2月だから、設計が新しく好調に売れるのも理解できる。しかしルーミーの発売は2016年11月だ。発売から約4年も経過しながら、なぜ急増したのか。

 もっとも大きな理由は、2020年9月に実施されたルーミーのマイナーチェンジにある。このときにはカスタムのフロントマスクに装着されたメッキグリルの存在感を従来以上に強めた。いわゆるエアロミニバン風の顔立ちになり、衝突被害軽減ブレーキも改善され、今のユーザーニーズに適した変更を行っている。

 さらにトヨタが2020年5月から、全国の全店で全車を販売する体制に移行したのを受けて、マイナーチェンジで姉妹車のタンクを廃止しルーミーに統合したことだ。発売時点では、トヨタ店とトヨタカローラ店はルーミー、トヨペット店とネッツトヨタ店はタンクを扱ったが、今はトヨペット店とネッツトヨタ店もルーミーを販売する。そうなればルーミーはタンクの需要も吸収するから、売れ行きも伸びるわけだ。

 ちなみに2018年と2019年の登録台数を見ると、1カ月平均で、ルーミーが7200~7600台、タンクは6100~6200台であった。ルーミー+タンクの姉妹車を合計すると、1カ月当たり1万3300~1万3800台となっていた。

 2020年10月はタンクを吸収したルーミーが1万1487台だから、少し減ったものの、立派な販売実績だろう。発売から約4年を経過して、なおかつタンクを廃止してルーミーに統合しながら、ルーミー+タンクとして販売していた前年と同等の台数を保っているからだ。

 全店舗全車種取り扱いによる影響も見え始めた

 トヨタが全店で全車を扱う体制に移行した目的のひとつに、この“車種の削減”がある。開発者は「姉妹車は基本的に同じクルマだから合理的に開発できるが、それでも複数のデザインを揃えると、部品の点数も増えて開発や製造に要するコストが高まる」という。

 そして全店が全車を扱うと、ルーミー、ライズ、ヤリス、アルファード、ハリアーなどは売れ行きを伸ばして登録台数ランキングの上位に入り、逆に売れない車種はますます低迷する。

 たとえば2020年10月にアルファードは1万93台を登録して対前年比も約2倍に達したが、ヴェルファイアはわずか1261台まで落ち込んだ。基本的に同じクルマなのに、ヴェルファイアの売れ行きはアルファードの12%で、対前年比も半減している。今後ヴェルファイアは、マイナーチェンジなどのときに廃止される可能性がある。全店が全車を扱うと、車種のリストラが自動的に進むわけだ。

 この体制がトヨタにとって幸せな将来をもたらすとは限らない。日産やホンダを見ればわかるとおり、全店/全車扱いになると、軽自動車やコンパクトカーなど販売しやすい割安な車種だけが売れ行きを伸ばすからだ。

 ルーミーはコンパクトカーだから好調に売れるが、高価格車のクラウンは、発売後2年半なのに登録台数が先代型のモデル末期と同等まで下がった。クラウンをSUVに変更する破天荒な話まで飛び出している。

 SUVは売れ筋カテゴリーだから、上級車種を投入すれば車名に係わらず相応に売れるだろう。しかしそれは、もはやクラウンではない。クラウンの価値は、低重心で高剛性のセダンボディと、それに基づく優れた快適性や走行安定性にあるからだ。クラウンのブランドイメージはSUVに合わないから、クラウンの命名が、新しい上級SUVの売れ行きを妨げる可能性もある。

 ルーミーの月販1万台突破と、クラウンをSUVに変更する報道がほぼ同時に生じたことは、まさに今の国内におけるトヨタを象徴している。全店で全車を得ることの明暗が、早くも浮き彫りになってきた。

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