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ポルシェ・タイカンに初試乗 700ps/103.5kg-m以上 911に近い感覚

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ポルシェ・タイカンに初試乗 700ps/103.5kg-m以上 911に近い感覚

世界初の量産ドライバーズEV

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)理由はわかっているのだが、どうもしっくりこない。幸運にもモータージャーナリストをしている手前、毎週のように様々な土地へ行き、様々なクルマを運転している。だが、ポルシェ初となる純EVを運転した体験は、明らかにこれまでとは異なるものだった。

【画像】ポルシェ・タイカン・プロトタイプ 全114枚

その理由は、電気というエネルギー源がポルシェにとっては水と油のように、相容れないもののようなイメージがあるためだろう。それでも、このポルシェ・タイカンが量産化され、世界初となる量産のドライバーズEVとなる将来が目前のいま、その影響力は計り知れない。ポルシェのやることだから、抜かりはないはず。

重要なクルマで、かつ正式に発表される前ということもあり、ここに書き出せる情報は非常に限られている。公式情報として存在するのは、2015年にポルシェが発表したミッションEVコンセプトに関わるものくらい。だが、かなりの情報はわたしの元へと伝わっており、残るは実際にタイカンを運転するばかり、という状況でもあるのだが、正式発表があるまでは具体的な評価は尚早だ。

少なくとも確認できているのは、ポルシェが所有する2台のタイカンが存在すること。恐らく実際には3~4台は存在するはずだが、最近のポルシェ流のトップグレードから発表する順序を見る限り、残りのクルマは今回試乗したクルマよりパワーで劣るのではないかと思う。そして上級グレードとして、ターボとターボSと命名されるのではないかと噂される、この2台がある。EVだから実際にはターボチャージャーは搭載されないわけだけれど。

ターボで600ps、ターボSで700ps以上

この2台はどちらも90kWhのバッテリーを搭載し、ターボでも最高出力は600psを軽く超えるとされている。2.5秒有効な、オーバーブースト機能がどちらにも搭載される見込み。さらにターボSとなるはずのクルマには、セラミック・ブレーキに硬められた脚まわり、後輪操舵システム、21インチホイール、ハイパフォーマンス・タイヤが組み合わされる。タイカン・ターボSの最高出力は700ps以上、最大トルクは103.5kg-mに達するとされている。

予想通り車重は重く、2.25tもあるが、目を見開くほどに速い。2015年のミッションEの0-100km/h加速は3.2秒とされていた。恐らくタイカン・ターボSは3秒を切るだろう。

試乗車の車内はしっかり偽装が施されていたが、次世代水準の高精細映像技術が導入されることは明らかにされている。オプションとなる助手席側のインフォメーション・モニターを選択すれば、車内幅いっぱいのTFTモニターが装備されることになる。驚かされる雰囲気の車内になりそうだが、わたしが許された範囲で操作した限り、操作性は直感的で良好だった。

タイカンの静的な質感は充分に高い。4ドアボディの大きなボディを持つ重たいEVモデルでありながら、ポルシェがスポーティなドライバーズカーだと位置づける車内の居心地はいい。目を閉じるとポルシェ911に座っているかのように感じる。ポタンを押してスタンバイ状態にし、小さなレバーを倒して発進させる。ヴァイザッハにあるポルシェのテストコースから、一般道へと出る。

ポルシェらしいステアリングフィール

既に北極圏で数時間ほどタイカンの助手席に乗った経験もあるのだが、今ひとつ目指す姿がつかめない。大手の自動車メーカーからもEVが発表されることも珍しくなくなってきたが、このような感覚は初めてだ。大航海時代の始まりなのかもしれないが、馴染めるまでには数年かかりそうにも思える。

といっても、すべてがまったく新しいクルマでありながら、馴染みのあるポルシェらしさは感じ取れる。しかもカイエンやパナメーラとは異なる。車重やホイールベースを確認するほどに信じがたいが、どこか911に近いものを感じる。速度は50km/hも出さなくても、ステアリングフィールからはそう伝わってくる。操舵時の重み付けや正確性、切り初めからのリニアな感覚は、ポルシェ製スポーツカーの教科書どおり。出発して間もなくの感触に、とても期待が高まる。

ポルシェのエンジニアによって満席状態だが、タイカンのペースを速める。ひとりの方がいい仕事ができるし、同乗者がいる中で飛ばすことは好きではないが、選択の余地はない。

ターボSとなるはずのクルマは速い。オーバーブースト機能を使うと、気分が悪くなるほどに。トルクは即時的に生み出され、700psの加速は爆発的で暴力的。わたしには過剰に感じるほど。世の中には2000psを誇るハイパーEVも開発されているが、果たしてどんな加速感なのだろうか。運転免許が取り消しになる速度域までも、もちろん一瞬。これが一般化するという事実が恐ろしくもある。

サウンドは、間違いなく電気自動車のもの。一部のエンジンモデルと異なり、パワーを引き出しても不快さはない。既に発している音を強調するサウンドエンハンサーも装備されているが、意外にもわたしはかなり気に入った。僅かでも静かなクルマに性格付けができるから、歓迎できるものではないだろうか。

ボディサイズからは望外のコントロール性

速度を上げるほどに色々なことがわかってくる。サスペンションは基本的にパナメーラのメカニズムを展開したものだが、3チャンバーのエアサスペンションはタイカン専用開発。スポーツ・モードとスポーツプラス・モードでの減衰力は素晴らしく、正確なステアリングとシャープな加速と相まって、チャレンジングな道であっても途方もなく速く移動できる。

ボディコントロール性は、これほどの質量を持ったクルマとしては考えられないほどに良い。コンパクトで軽量なクルマのものとは異なるが、コーナリングラインへと導いた時の落ち着きは驚異的だ。驚愕のパフォーマンスをいつでも引き出せることは、楽しい体験ではある。だがポルシェ911ほど、ドリビングに没入していくような体験ではない。ポルシェ以外の大きな4ドアボディを持つモデルを、大きく引き離していると感じるほどでもなかった。

調整の必要もまだ少し残っていそうだ。アクセルペダルを戻した時の、エンジンブレーキの効きが弱いことは顕著。ポルシェの哲学としては、ペダルのひとつは加速させるため、もうひとつは止めるため、ということなのかもしれない。スロットルオフ時の減速率は変更できるのだが、最もレスポンスが高まるスポーツ・プラス・モードの状態でも、不足しているように感じた。

実際には存在しない変速を行う、シフトパドルを操作してコーナーへと攻め込む。ブレーキと回生ブレーキが機能するが、想像以上に制動力は高い。最大で80%ほどの減速は、巨大なディスクブレーキを必要としない、回生機能によるものだという。そのことを理屈以上に理解するのには、少し時間を要した。ブレーキ自体にも気になる点があった。ターボSにはセラミック・ブレーキが標準装備となるが、ターボの方に付くタングステン・コーティング・ブレーキの方が、感触が良かったためだ。

偉業と呼べるほどに現時点で最高のEV

タイカン・ターボの価格はターボSよりも1万5000ポンド(195万円)安い、12万ポンド(1560万円)ほどになるとのこと。わたしならターボで、小径な方の20インチホイールを選択するだろう。しなやかな足まわりにタッチのいいブレーキの組み合わせを好む。ターボSに標準装備される後輪操舵システムは、タイトコーナーでの身のこなしや安定性を考えると、追加したいところ。

実際のほとんどのオーナーは、1万5000ポンド(195万円)を節約するよりも、ターボSでさらにオプションを乗せるだろう。わたしや友人としては、少々財源が足りないようだけれど。

タイカンがEVだということを一度忘れて考えてみる。クルマの仕上がりや走りの面で、正式なポルシェといえるだろうか。カイエンとパナメーラという存在がある中で、プロトタイプの第一印象としては、間違いなくポルシェだと感じた。もしタイカン以上にドライビングを楽しみたいのなら、ドライバーの後ろに内燃機関がぶら下がっているポルシェを選ぶ必要がある。

また、わたしが知りうる限り、最も快適で、最も静かなグランドツアラーでもある。長距離移動を非常に快適にこなす完成度の高さは驚異的なレベルで、ひとつの偉業といえるものだと思う。では、EVスポーツカーとして、世界で初めて主流の存在になり得るだろうか。そこには疑問の余地がある。間違いなくスポーティなクルマだが、週末の早朝に目覚ましをセットして、郊外の道を目指すことはないだろう。そもそも、ピュアなスポーツカーは目指していないはず。

だとしてもポルシェ・タイカンは、現時点で最高のEVであり、1km走る毎に、高い満足感を得られるEVであることは、明言できそうだ。発表は9月上旬となっている。

ポルシェ・タイカン(ターボS・仮称)・プロトタイプのスペック

価格:13万5000ポンド(1755万円・予想)
全長:-
全幅:-
全高:-
最高速度:249km/h(以上)
0-100km/h加速:3秒以下
航続距離:498km(ミッションE)
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:2250kg(予想)
パワートレイン:ツイン電動モーター
バッテリー:90kWh以上
最高出力:700ps以上(オーバーブースト時)
最大トルク:103.5kg-m以上
ギアボックス:2速ダイレクトドライブ

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