5代目となるメルセデスベンツCクラスに試乗した。Cクラスと言えば、190クラスから続く後輪駆動メルセデスベンツのエントリーモデル・・・という存在だったのだが、この新型はまさに最新のSクラスをスケールダウンしたかのような存在感を漂わせる。
何しろマイルドハイブリッドのISGモデルとPHVモデルの投入によって全車が電動化されたとともに、サポート精度を高めた万全の安全運転支援システム、直感的な操作設定が可能な11.9インチもの縦型大型センターディスプレイ、直感的な行先案内が可能なDセグメント初の先進のARナビゲーション、生体認証によるシートポジション等の設定、片側130万画素を誇るDIGITALライトによる効果的な夜間の視界確保を始め、取りまわし性、小回り性抜群の優れたハンドリングを実現するリア・アクスルステアリング(オプション)など、フラッグシップモデルの新型Sクラス譲りの新技術をふんだんに採用しているのである。
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また、ボディサイズは全長4793×全幅1820×全高1446mm、ホイールベース2865mmと、先代より全幅こそ10mm増しながら、全長で88mm、ホイールベースで25mm伸び、もはやエントリーメルセデスとは言えない伸びやかで堂々とした、繰り返すけれど、Sクラスと相似形のスタイリングを持っている。ちなみに、2021年夏に導入されたのはセダンのみ。ステーションワゴンやPHVは遅れてやってくるという。
試乗したのはC200アバンギャルド(車両本体価格654万円)。アバンギャルドはメルセデスベンツの人気グレードであり、より精悍なアピアランスを提供してくれるのだが、試乗車はさらにこれまた人気オプションのAMGライン(32万6000円)を装着。フロントグリルはAMGラインならではのスターパターングリルとなり、先進感と迫力満点。リヤコンビランプのデザインは言うまでもなくSクラス譲りである。
インテリアも素晴らしい。Sクラス譲りの11.9インチもの縦型大型センターディスプレイは、ナビを始め様々な操作を集約。例えばライバルのBMWの横細長画面と比べると圧巻のサイズというしかない。実測で、画面全体は縦240mm、幅205mm、マップ画面だけでも縦180mm、幅205mmもあるからデカい、見やすい。ナビ画面における自車の走行位置がCクラスセダンのアイコンになっているのもニクいではないか。さらに目的地を設定すると、これまた大画面ヘッドアップディスプレイに様々な情報が投影される仕組み。情報が豊富すぎて、前が見にくい!?と感じてしまったほどである。
ARナビゲーションは案内画面で車両前方の景色が画像としてリアルに映し出されるだけでなく、進路を示す矢印が大きく表示されるのがポイント。三叉路など、ただの方向指示案内だけでは分かりにくい誘導が可能になるのである。さらに、ナビ案内をしていないときでも、停車時に高精細で美しいAR画面に自動で切り替わり、「信号画像」を表示してくれるから親切極まりなしである。
さすがに室内空間までSクラス並み、とはいかないものの、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準でごく低く座らせる前席頭上に170mm、後席頭上に130mm、膝周りに足がゆったり組める220mmのスペースが確保される。先代の後席膝周り空間が190mmだったから、特に後席足元の余裕が増しているというわけだ(祝)。
そんな新型C200アバンギャルドのパワーユニットは1.5L直4ターボ、204ps、30.6kg-mというスペックの持ち主で、9ATのトランスミッションには、マイルドハイブリッドのゆえんとなるISG、15kW/200N・mのモーターが組み込まれ、エンジンにアドオンされる。先代のスペックが184ps、28.5kg-mだったから、パワー、トルクともに大幅に増強されたことになる。もちろん、マイルドハイブリッドだから、ストロングハイブリッドのようなモーター走行はできない。モーターはあくまでアシストに徹する。
AMGラインをオプション装着することで、前後異サイズのF225/45R18、R245/40R18となるピレリP7(試乗車)を履くC200の走りは、ズバリ、スポーツセダンそのものだった。ドライブフィールはメルセデス一流の上質さと洗練されたスポーツフィールが両立した軽快感あるもの。乗り心地はさすがに超扁平タイヤだけに、路面の凸凹や荒れ、ロードノイズを伝えてはくるものの、それを荒々しく感じさせないところがメルセデス流。スポーティなクルマが好きなドライバーであれば、むしろそのドシリとして角の取れた硬さが快感に思えるはずである。
驚くべきはステアリングフィールだ。試乗車にはリア・アクスルステアリングのオプション(14万5000円)が装着されていたのだが、約60km/h以下ではリアホイールをフロントホイールとは逆方向に最大2.5度傾け、驚異的な小回り性とステアリングの切れ味を披露。一方、約60km/hを超えると、リアホイールをフロントホイールと同じ方向に最大2.5度操舵することで、高速域、カーブなどでの安定感、ドライビングダイナミクスを飛躍的に高めてくれるのである。それは、先代で一気に高めたアジリティー性能を、さらに進化させたと断言できる。だから、大柄になったボディでも扱いやすく、走りやすい。どころか、余裕あるパワー、トルクもあって、BMWのお株を奪うかのような、ダイレクト感たっぷりの、意のままのスポーティな操縦性と加速力を楽しみ尽くせるのである。
ただし、少し前のCクラスオーナーだと、駐車時に、幅ではなく、全長が伸びた影響が気になるかも知れない。実際、筆者が自宅の駐車スペースにバックで入れる際、角度を間違えたりすると、最初はけっこう盛大な音とショックを伴う接触防止のブレーキアシスト(バック時にも働く)が作動し、驚かされたものだった。とはいえ、全長、ホイールベースの拡大による後席足元の拡大とトランクルームの広さとバーターと考えれば、納得できるというものだろう。要は、慣れである。
おなじみの「はいメルセデス」の音声認識機能=MBUXも一段とレベルアップしているようで、理解力に長けた女性アシスタントが車内のどこかにこっそり潜んでいるような気にさせてくれたのも本当である。また、ACC(アダプティブクルーズコントロール)の作動も依然、世界最高峰のレベルにあり、流れのいい高速追従走行からの再加速性能、渋滞時の停止保持機能からの自動再発進など、制御は素晴らしいの一言である。だから、日常域での一時停止時にも便利なオートブレーキホールド機能を働かせるのに、ほかのクルマより強めにグイっとブレーキペダルを踏まなければならないことなど、この際、忘れよう・・・。
メルセデスベンツCクラス
写真・文/青山尚暉
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