どんなクルマ?
text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
【画像】改良型レクサスLS、ベンツSクラス、BMW 7シリーズ【高級セダンを比べる】 全76枚
photo:Keisuke Maeda(前田恵介)、LEXUS
このMCの1つの柱が「原点回帰」。初代レクサスLS(セルシオ)は1989年に誕生。包まれるような静粛性、穏やかさと精度感を融合した乗り心地は、革新的と評するに相応だった。
自説ではあるが、超高速域の巡航も含めて快適性では世界一であり、同時に欧米の価値感に媚びない“日本発の高級車”という印象も受けた。クルマ界の「日本の誇り」だった。
一方、レクサス・ブランドは「先鋭」や「躍動」をテーマに高性能やファントゥドライブの要素を強めていく。ショーファードリブン需要が少なくなかったせいか、LSはフォーマル寄りのポジションにあったのだが、先代のビッグMCからスポーツ志向を強め、現行型ではGSの上位らしいモデルに一新された。
ハードウェア関連のMC要点は3.5Lツインターボの改良を除けば、ほとんどが静粛性と乗り心地の改善が主眼。また内装には西陣織を用いるなど「和」の美意識を盛り込んでいる。
こういった改良の発想は、初代LSのコンセプトにも似ている。「揺り返し?」と言っては皮肉が過ぎるが、初代LSに感動を受けた者にすれば歓迎すべきMCである。
マイナーチェンジ車 どんな感じ?
前項で「快適性重視」と振ったものの、試乗車はハイブリッドのFスポーツ。
言うまでもなく富士スピードウェイに由来する「F」を掲げたFスポーツはレクサスのダイナミズムを象徴するスポーツグレードであり、快適性最優先のモデルではない。
MCの趣旨とは多少異なる路線だが、ファントゥドライブを求めてなお快適性を犠牲にしないのも頂点クラスのセダンでは重要だろう。
パワートレインは、ハイブリッド専用チューニングの3.5LのV6を核に、動力分割機構をスプリット式にステップ変速ミッションを組み合わせたマルチステージ・ハイブリッド。
同系パワートレインはLCにも採用され、トヨタ系ハイブリッドでは最も高性能である。
しかし、その振る舞いはとても紳士的だ。
アクセル踏み増しに対する応答遅れはほとんどなく、ペダルコントロールに過不足なく追従。極端なトルク変化を抑えた過渡特性もあって、コントロールに神経質になる必要もない。
加速/足さばきを検証
エンジンフル稼働の全開加速でも猛々しさは皆無。エンジン回転上昇はあっても滑らか穏やか、排気音も遠くで鳴っているような感じだ。
低中負荷域では電動との二人三脚がさらに優れた静粛性をもたらし、ロードノイズも際立って少ない。迫力不足という言い方も可能だが、涼しい顔で際立つ性能なのもLSらしさである。
LSは全モデルに電子制御エアサスを採用。2WD仕様は前輪切れ角の微小補正を行うアクティブステアリング統合制御付きVDIMを装着する。
Fスポーツはターボ車ならアクティブ・スタビライザーが装着されるが、ハイブリッド車の基本サス構成は他グレードと共通している。
スポーツモデルならハンドリングの手応えとか切れ味という話になるのだろうが、そういった演出がないのが特徴だ。
車体の重さを感じさせない追従性と挙動が印象的。車重は2.2tを超えるが、初期の反応や動きが素直であり、収束感がとても自然である。
しかも、硬いバネやダンパーで無理矢理抑え込んでいる感じもなし。もちろん、走行モードをスポーツS+にセットすれば引き締まったサス制御となるが、多少切れ味がよくなる程度で基本的な特性に変化はない。
乗り心地/タイヤの話
逆にコンフォート・モードを選択しても挙動は落ち着いており、スポーティドライビングも難なくこなす。セオリーどおりの懐深いハンドリングである。
ただ、乗り心地では多少不満がある。
45扁平20インチで、しかもランフラットのせいか目地越えなどで車軸周りがばたつくような振動が目立つ。まるでタイヤが自身の存在を主張しているようだ。
他が洗練されているだけにミスマッチのように思えた。
一方で、安全&運転支援機能の進化もMCの要点の1つ。もちろん、原点回帰ではなく近未来標準への積極的なアプローチである。
その中でも使用頻度も実効性も高いのが、ハイブリッド車に採用された「アドバンストパーク」だ。
アドバンストパークを試す
アドバンストパークの使い方は駐車したスペースの横に止め、モニターで駐車したい場所と方向を指定するだけ。あとはシステムが操舵加減速を自動制御してくれる。
駐車区画の指定は白線を基本とするが、駐車位置を画像上で記憶させれば白線がなくても自動駐車が可能。また、縦列駐車では出庫も自動で行える。
実際に試してみたが、効率的且つスムーズにこなす。しかも加減速も転舵も丁寧で違和感がない。
全長5.2m強、全幅1.9m、最小回転半径5.6mで長いホイールベースのため内輪差も大きい。
LSを扱ううえで最も気を使う状況の1つであり、手動で駐車すれば時間も安全確認に要する精神的な負担も大きいだけに、実に有り難い機能である。
その他の機能向上では、衝突回避システムが右左折時の歩行者、右折時の対向車にも対応、AHS(アダプティブ・ハイビーム・システム)はRXで採用した走査式照射のブレードスキャン型に変更。
また、ドライバーに優しい運転支援を実現すべく、ディープラーニングを中心としたAI技術の導入をするなど、次世代に向かって着実に進化している。
「買い」か?
LSにスポーティなキャラを求めるならパワートレインの形式やスペックからしてもターボ車のFスポーツを狙うのが順当。
しかも、ハイブリッド車よりも100万円以上安い。だからといってハイブリッドのFスポーツはミスチョイスとも思わない。
LS500hのWLTC総合モード燃費は13.6km/L。高速モードなら15.5km/L。
同クラスでは最高水準の燃費であり、高性能と環境性能の両立はレクサスのフラッグシップに相応しい。そういった特徴を損なう事なくクルマ好きの雰囲気を纏ったモデルがハイブリッドのFスポーツである。
これまで、あるいは他のレクサス車の印象からFスポーツと言えば走りにアグレッシブなドライバー向けのモデルのように考えてしまうが、LS500hのFスポーツは内外装の好みで選べるモデル。
フォーマルの標準系に対してカジュアルな趣のFスポーツという捉え方でもいいだろう。
また、価格はバージョンLの約140万円減。1350万円をして言うには抵抗があるもののLSでは手頃。プレミアムの頂点クラスの先進的モデルとしてはコスパでも優等生である。
レクサスLS改良新型 スペック
レクサスLS500h Fスポーツ
価格:1351万円
全長:5235mm
全幅:1900mm
全高:1450mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費(WLTC):13.6km/L
CO2排出量:171g/km
車両重量:2260kg
パワートレイン:3456cc V6+モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力(エンジン):299ps/6600rpm
最大トルク(エンジン):36.3kg-m/5100rpm
最高出力(モーター):180ps
最大トルク(モーター):30.6kg-m
ギアボックス:電気式無段変速機
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