どんなクルマ?
text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
【画像】都市型の電気自動車 ホンダe【細部まで見る】 全164枚
photo:Masanobu Ikenohira(池之平昌信)
走らせて楽しく、さりとて好事家限定でもなく、肩肘張らずにホンダらしい「わくわく」を楽しませてくれるのがホンダe。
車名に「ホンダ」を冠するのも納得できる。
とはいえ開発の背景の1つにEUでのCAFE規制という大人の事情があるのは違いなく、その辺りはけっこう理性的だ。
規制値を燃費で示すならガソリン車なら24.4km/L以上、ディーゼル車では27.1km/L以上。あまりに高いハードルである。
ここに二酸化炭素排出量「0」のEV(電気自動車)を投入すれば、計算上はEV1台売れば12km/Lのモデルなら1台、16km/Lなら2台販売してもノーペナルティ。
販売台数を稼げるEVの投入は、自動車メーカーにとっては死活問題。EVとしては手頃な価格で、実用コスパのハンデを背負ってなおかつ魅力的なクルマは必須。ホンダeはその回答でもある。
ホンダeは、ファーストカーとしての汎用性を求めていない。
WLTCモードに於ける航続距離は標準車が283km、上級設定のアドバンスが259km。タウンコミューターという程でなくても短中距離用途向けの航続距離であり、一般的なファーストカー用途には厳しい。
言い方を換えるならばHV(ハイブリッド)も含む内燃機系車種の代替は狙っていない。インフラなどの現状も考慮して、用途を絞って中身を濃くしたのがホンダeなのだ。
どんな感じ?
エヌサンの薫りも漂う2BOXフォルム。FF車のように見えるが駆動方式はモーター位置ではRR。
もっとも駆動に関わる電装系は前後に配置されるので、RRともミドシップとも言い難いのだが、ホンダMM思想を感じさせるレイアウトである。
当然、ホンダ車の現行ラインナップに同様のプラットフォームはなく、ホンダeのために起こされたもの。
安上がりにするならe:HEVから内燃機系を取っ払ってしまえばいいのに、とも思うのだが、RRレイアウトによる後輪駆動ユニットは、例えばe:HEVベースのハイブリッドSH-AWDなど電動4WDへの展開もあり、ハードや技術の転用も見据えたものとのこと。
つまりシャシー/駆動系の先行技術開発車でもあるのだ。
フットワークは、RRあるいはミドシップらしい味わい。鼻先軽く回頭し、グッグッとリアに荷重が乗るような挙動が印象的。
だからといって、切れ味鋭く回り込むハンドリングではない。応答遅れ少なく、反応量は過不足なし。早い時期に後輪荷重を立ち上げるので、少ない挙動で綺麗にラインに乗る。
加速しながらコーナーから立ち上がるのがとても心地いい。
こういった特性を幅広い速度域で維持するのも見所。この辺りはS660も思わせ、アジャイルハンドリングアシストの効果も大きいのだろう。
乗り心地/加速/高速性能
しかも、乗り心地もしなやか。
段差乗り越えなどの突き上げで多少の硬さや車軸まわりの振動を感じるものの、アドバンスが履く45扁平17インチ・タイヤを考慮すれば穏やか。
同サイズの2BOX車平均と照らし合わせても、ストローク感のある乗り心地である。
60扁平の16インチ・タイヤを履く標準車では、路面当たり感は穏やかになる。
高速直進の操舵感の据わりがあまくなるのだが、不安感もなく、ハンドリングのRR感覚はより強化される。ホイール周りのルックスに拘らなければ標準車は狙い目である。
「一気呵成の加速力!」が、動力性能で最も印象に残った部分。
113kW(アドバンス)のパワーを内燃機MT車の1速相当のギア比で駆動。
しかも、実質タイムラグ無しで反応する電動である。速くて当然だが、力も御せなくては粗暴に陥る。
ホンダeの巧みさは電動を御す手綱捌きにある。
緩やかなアクセル操作では滑らかに連続的な加減速を、素早く深く踏み込めば間髪入れずのダッシュ力をもたらす。
ペダルストローク量に対する加減速反応が異なるが、走行モードを変えても同様の印象。
しかも高速域でも加速のダレが少ない。
アドバンスと標準車
100km/h以下なら俊足も悠々も翳り無し。ちなみに設計上の最高速度は145km/hに設定されているが、ハード面の限界ではなく、効率と実用性能による制限。
145km/hは最高速度であると同時に、巡航速度の上限でもある。
パワートレインのオマケ的機能だが、アクセルオフ回生を強化する1ペダルドライブにも対応。
停車までサポートすることを除けばエンブレモードと大差なく、またフットブレーキに回生油圧協調制御を採用するので、ペダル踏み替えを減らす程度の効果しかないが、減速時にダウンシフトを多用するドライバーには、これもファントゥドライブの要素の1つとなるだろう。
なお、標準車の最高出力はアドバンスより13kW低い100kWとなるが、ダッシュを利かせた時や高速加速性能が大半。
感覚的には、加速性能低下というより急加速時の特性がマイルドになったくらい。
ホンダe相対では穏やか志向でも、コンパクトカーとしては頗るパワフルなのは言うまでもない。
気になる5連ディスプレイは?
左右両端にサイドビュー、舵輪奧にはメーターパネル、中央から助手席前には横並びに2つのモニター。
インパネを横断するように液晶モニターを設ける。画像モニターによるTPOに応じた多重表示は、グラス・コクピットそのもの。IT時代を直感させるインパネだ。
ただし、機能的というよりも未来感の演出という印象が強い。表示機能でとくに目新しいものはない。
走行中はナビ以外の動画表示不可などの規制も影響しているが、会話型ボイスコマンドなども含めて他社の車載IT系同様に模索中の感は否めない。
また、助手席前モニターの視認性も今ひとつ。視認性では中央配置縦長大画面タイプに分がある。
ミラー/後席/トランクの実用性
サイド・カメラミラー・システム(サイドビュー)も、評価が分かれる部分。
キレのいい画像で認識性は悪くないが、モニターの設置場所が低く、通常のサイドミラーに比べると下方視線移動量が大きい。
また、立体視ではないので距離感が掴みにくい。
ルームミラーの場合は鏡面との切り替えも可能だが、サイドミラーはカメラ画像のみ。
距離を掴みやすくするためのガイドラインも表示されるが、違和感を払拭できるかは個人差が大きそうだ。
キャビンスペースは全長4m弱にしては広く、レッグスペースはフィットと大差なく、ゆったりした座り心地や見晴らしのよさもあって、同サイズのクルマでは寛げる後席だ。
荷室は奥行きはクラス相応だが、RRレイアウトゆえに深さに余裕がない。また、後席収納は左右一体型のシングルフォールディング式。
フィットやフリードの多才な積載性とは比べるべくもないが、コミューター用途中心のモデルを意識させられる。
「買い」か?
プラットフォームは新規開発で、フロントウインドウにはデフロスター用の細かな熱線が鋳込まれていたり、色々と凝ったことをやったせいか、価格は標準車で451万円。
WLTCモード航続距離322kmのリーフの最上級グレードが、約419万円である。航続距離中心のコスパで見ると分が悪い。
反面、未来感あるいは特別な存在と思わせる演出は、ホンダeのほうが幾枚か上手。中でもRRと電動のタッグでもたらした走りは、大きなセールスポイントである。
付け加えるなら十分な出力の急速充電スタンドで急速充電に於ける満充電となる80%までの所要時間は、EVでも最速クラスの30分。
長距離レースのピットストップ戦略みたいだが、充電時間の短縮で充電頻度をカバーするのもホンダeの狙いである。
内装の質感はコンパクトカー相応。航続距離は300kmに満たず、キャビンユーティリティは多用途性に欠く。実用車としては割高なのは否定できない。現状でEVに実用車としてのコスパを求めることに無理があり、ホンダeも例外ではないのだ。
それでもホンダeは魅力的。ハードコアスポーツとは別のファントゥドライブがある。走りのセオリーに忠実である。
ちょっと大袈裟かもしれないがNSXと同じ根っ子を感じてしまった。生活の場で使いやすく、それでいてマニア心もくすぐる。
クルマの評価としては歪かもしれないが、この価格も仕方ないと思わせるだけの説得性はある。
ホンダ・ホンダeアドバンス スペック
価格:495万円
全長:3895mm
全幅:1750mm
全高:1510mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
航続距離(WLTC):最大259km
車両重量:1540kg
最高出力:154ps/3497-10000rpm
最大トルク:32.1kg-m/0-2000rpm
駆動方式:RR
乗車定員:4人
タイヤサイズ:205/45ZR17(前)225/45ZR17(後)
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