この記事をまとめると
■2023年10月15日に山中湖交流プラザきららにて「カングージャンボリー2023」が開催された
かつては廉価モデルの象徴だった黒樹脂バンパー! いまやツール感の演出に欠かせない「オシャレアイテム」に昇格していた!!
■新型で初となる特別仕様車「カングー ヴァリエテ」と3列シート7人乗りの「グランカングー」を発表した
■フリーマーケットゾーンでは自由に感具を楽しんでいるオーナーさんの姿を見られた
雨が降ってもカングーオーナーのカングー愛は冷めなかった
生憎というか無情というか、冷たい雨が、開催当日の朝にずっと降りしきっていた。正午少し前には雨が止むという天気予報が出ていたとはいえ、それでも会場の山中湖交流プラザきららに黙々と、歴代のカングーたちが列をなしてやって来ていた。10月15日の日曜日、今年もカングージャンボリーの秋がやって来たのだ。コロナ関連による諸注意といったリミッターを、いよいよはずしての開催だ。
のちの主催者によるカウントでは、「カングージャンボリー2023」に集まったカングーの台数は1350台。昨年の久々のリアル開催再開時の1783台には及ばなかったが、前回は新型カングーが日本での初お披露目という10数年に一度のスペシャルなタイミングだったこと、また今年は同日に他にもフランス車関連のイベントが近隣で複数、開催されて動員数を分け合ったことを思えば、その盛り上がりに翳りはないといえる。6時の開場から、足もとのぬかるむパーキングに続々と、雨空の下でも色とりどりのカングーが、総じてやたらカラフルな集団が、1台また1台と元気に詰めかけてきた。
それにしてもさすがキャンプ慣れしているというか準備がいいというか、カングーから降りてくるオーナーや家族、友人仲間といった面々の、長靴装着率のやたら高いこと。ぬかるむ足もともなんのその、傘を手に、あるいはポンチョや雨がっぱをかぶって、けっこう外を歩いている人の多いことが、まず意外だった。
あるいは、このイベントの人気コンテンツのひとつであるフリーマーケット出展者らは、リヤ側にタープや簡易なテントを張っては、土砂降りに近い雨のなかだというのに売り場の準備を進めている。面白いのは、雨に対する準備万端の人々が、早い時間からメインステージの前を横切るように、9時オープンのピエール・エルメ・ブース前に向かって長い列ができていたこと。これは難病を闘う子どもたちのためのチャリティで、来場者にマカロンをひとり1個プレゼントしながら、寄付を募るという趣旨のものだ。
9時からはステージで、安田大サーカスの安田団長と、モータージャーナリストの竹岡 圭さんの司会進行により、公式プログラムがスタート。歓迎の辞が山中湖村の高村正一郎村長より述べられたのに続き、ルノー・ジャポンの小川隼平社長が開会の挨拶に立った。それでも雨足がいまだ弱まる気配もないなか、いよいよお待ちかねのニューモデル発表へと進み、ステージ前に多くのカングーオーナー&ファンが集まって来た。
まずステージ下手のソデから、プルミエール・エディションを除いて新型カングー初の限定仕様となる「カングー ヴァリエテ」が現れ、これが公式発表となった。さらに続いてステージ上に上がったのは、ルノー本社からカングージャンボリーの視察に訪れたLCV部門上席副社長、ハインツ・ユルゲン・レーヴ氏だ。
おなじみルノー・ジャポンのマーケティング・ディレクター、フレデリック・ブレン氏の通訳を介して、今度は上手のソデから、観客たちから大きなサプライズをもって迎えられたのが「グランカングー」だった。それぞれニューモデルの詳細は稿を改めるが、これらの実車を日本でいちばん早く眺められる機会としても、カングージャンボリーを訪れる意味は大きい。
ハインツ・ユルゲン・レーヴ氏はまた、「カングーを個性的にパーソナライズして乗っている日本のオーナーたちは、本国の商用バンとはひと味違う息吹を、このカングーというクルマに吹き込んでくれた」と、謝意を表した。実際、今回のカングージャンボリーには、欧州から自動車関連のジャーナリスト40人近くが取材に訪れた。パネルバンが主流で働くクルマとして広く認知されている、そんな本国でのカングーのイメージを覆すほどに、乗用マルチバンとしてカングーが生き生きと人々を楽しませている姿は、彼らにとっては「エキゾチック」なのだ。
この日、ステージ上では他にも、TVK系列のテレビ番組「クルマでいこう!」の、岡崎五郎さんと藤島知子さんによる公開収録が行われたり、イベント中に2023年開催をテーマにする大フォーマットの絵をペイントするオーバーオールズのふたりも登場した。
楽しそうにフリーマーケットを楽しむ姿が印象的
一方で、雨も徐々に小やみになってきて、11時過ぎには晴れ間さえのぞくようになった頃、ルノーのオフィシャルショップには、オーガニックコットンで作られたオリジナルトートやTシャツ、その他のグッズを目当てに、長い列ができ始めていた。というわけで、117台が出展したというフリーマーケットも、徐々に活況を呈してきた。フランスのマルシェを意識した、小洒落た感じの出店も多ければ、ひと昔前の下町のような雰囲気のお店も。でも意外だったのは、小ぎれいなところに限ってフリマ初参加のオーナーが多いという事実だった。
イエローの初代カングーで出店していたダンディな夫妻も、そんなひと組。愛車は4年前に近所の大型中古チェーンでさくっと買ったそうで、他にも1967年式VWタイプ2をお持ちだとか。「私がフリマをやりたくて、だから小カングーしか考えてませんでした」とは奥様。「VWだとパーツを売る店は多いんですけど、そうじゃないのをやりたくて」とは、旦那さんの弁だ。
念願かなって小カングーを入手したらコロナ禍が来てしまい、昨年のイベントは参加だけでフリマの雰囲気を観察、今年やっと念願の出店にこぎ着けたという。「AMI+」というブランド名で奥様が手作りするニットアクセサリーと、年に一度の断捨離を兼ねているアンティーク風のアイテム、いずれもお店として完成度は高い。「雨だけど大き目のスーツケースが売れたから、まずまずです」とのことだった。
さらに少し奥まったところで、イエローの2代目カングーでお花屋さんをしていたのは、葉山からやって来た3人組。ブリキや樹脂のバケツに差したブーケ、ハロウィン用のかぼちゃのこなれ具合からして、プロかと思いきや、普段は飲料メーカー勤めや事務職の方々なのだとか。
「まったくもってサンデーお花屋さんで、カングージャンボリーのフリマ出店も初めてです。お花を仕入れられるツテというかルートがたまたまあったので、店舗を構えるでなく、近隣のイベントや催し事があるたびに出かけています」
カングージャンボリーならではのアイディア商品は、青白赤をあしらったドリンク用カップに差したガーベラのブーケだ。「車内でドリンクホルダーに固定して、お花を楽しんでもらえたらと思い。雨だから思い切って値段も下げてます!」
こういう活気と笑顔がやっぱり、花以上に楽しませてくれる。
続いても花、とはいえ今度はドライフラワーを扱う、イエローの2代目カングーに出くわした。プレゼンのオシャレ度や売り物の完成度といい、今度こそプロの方? かと思いきや、「いえいえ、ドライフラワーは一緒に来ているおかんの趣味で、むしろ売っているのはウッド内装の方なんですよ。彼氏が職人なんです」と、静岡からやって来たワンコ女子は教えてくれた。
聞けば「YURT(ユルト)」というブランドで、「プチ部屋を持ち運ぶ」というコンセプトのもと、カングーやワンボックス車の内装に栂の木を板張りするカスタムを提案しているのだとか。
カングーの楽しさもさることながら、そのオーナーたちの枠にまるでとらわれない自由さ、ちょっとは伝わったでしょうか?
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