2018レースカーから探るSTIの先端技術 Vol.6
前日の2月22日に、STIが参戦するスーパーGTとニュルブルクリンク24時間レース用のマシンがお披露目された。マシンの製作過程はこの連載企画でもお伝えしているようにSGTは初めてのシェイクダウンテスト。NBRマシンはすでに数回テストをしているが、外板が綺麗に塗装された姿は初お目見えだ。<レポート:編集部>
Test of the day after shakedown
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しかしながら、天候が悪く小雪が混じるような天気で完全ウエット。SGTマシンが走れるような低温、ウエットのタイヤはなくテスト走行は数周で断念。そのためNBRマシンも数周走行をしたが、ともにテストと呼べるような内容にはなっていない。
■マスターバックを活かすか?NBR ニュル・マシンWRX STI
本格的テストは翌日に持ち越された。今季変更したポイントとして、パワーはアンチラグの導入、ブレーキはマスターバックを外して左足ブレーキを駆使しコーナリング速度を上げる、そしてエアロダイナミクスでトップスピードを上げ、コーナリングも安定させる、といったものが大きな変更点だった。
今回のテストメニューの位置づけは、ニュル本番に向けての確認的意味合いが強く、これまで行なってきた変更点が、よい方向に改善しているのか?あるいは、効果が低いのか?などのチェックをするというのが目的だ。
辰己総監督に話を聞くと、まず、サスペンション周りはほぼOKで、この先は、特に大きな変更はなく、微調整の範囲でセッティングできるということだった。また、タイヤはこの日のような低温時用のタイヤがまだ完成していないため、そうしたタイヤとのマッチングはまだ、課題が残っている。
だが、現在装着しているタイヤは路面温度で15度近辺から35度付近まで対応できるという守備範囲の広いタイヤだそうで、そのタイヤは実績もあり不安はないということだ。ちなみに、この日の路面温度は7度が最高でそれを下回るような温度だった。
ブレーキのマスターバックを外し、アンチラグを使っていくやり方だが、ブレーキに関してドライバーの山内英輝からコメントとして、微調整が難しく、富士スピードウエイの1コーナーなどガツンと踏める場所は全く問題ないが、第3セクターで左足ブレーキを使うと、調整がしにくいという話がでたそうだ。
つまり、ハードブレーキは問題ないが、ソフトタッチでの微調整がしにくいということで、ブレーキパッドやローター、キャリパーなどのキャリブレーションが今一つのようだ。おそらく、ニュル用の耐久性の高い摩材だと、そうした問題が出てくるのかもしれない。無数ともいえる組み合わせを探すことは時間的に無駄が多く、現状としてはマスターバックを復活させるのが最善ではないか?という判断をしている。
このあとは、ロングランテストも控えており、そのあたりを見て判断していくようだ。ただ、マスターバックを復活させてしまうと、ブレーキ用の負圧が必要であり、アンチラグはエキマニで燃焼させた排ガスでタービンを回してしまうため、負圧が極端に小さくなってしまう。そうなるとマスターバックが機能しなくなるので、アンチラグは使えないという、なんとも残念なことになるのだ。
一方、ボディデザインの変更で、空気抵抗を減らし、ダウンフォースを増す方向のチューニングはいい方向に向いたようだ。この日は気温が低く、グリップがそう高くない状況でもリヤのダウンフォースがでていて、途中、さらにウイングを寝かせてドラッグを減らし、ダウンフォースを減らすチューニングまでテストできたという。
そうしたセッティングでも1分47秒台で走行できており、目標タイムの1秒落ちは十分すぎるタイムだと辰己総監督は言う。ニュルのレースで9分を切る目標だと、富士であれば46秒くらいで走れるセッティングになるという。
結果的にコーナーの立ち上がり重視のアンチラグは使わないテストだったが、本番もアンチラグは不要ではないか?という。アンチラグを使うと熱害のリスクも大きいので、敢えて無理をする必要性が低いという判断になるかもしれない。
この先は、ロングランテストによる耐久性テストが中心になるようだ。マシンは3月22日には出国し、ドイツへ空輸予定だ。そのため、大きな加工を伴う変更はいよいよ大詰めに来ていると言っていいだろう。
■SGT さまざまな組み合わせのテストでデータ収集 GT300 BRZ
前日の悪天候の影響で朝イチの路面はウエットだったが、次第にドライになり無事走行テストは開始された。が、この時期はまだ気温が低く、レースシーズン用のタイヤでは走行できないため、タイヤに合わせるセッティングは実施できない。そのため主に各変更点の確認という位置づけのテストだった。ブレーキの大径化、エアロダイナミクスの変更というのがポイントだ。
特にトップスピードが低かったのがこれまでで、その不足分をコーナリングで稼ぐ方向でマシンセッティングを行なってきた。しかし、今季は空力にも力を入れトップスピードを追求することもやっている。
特にトップスピード近辺での伸びがないのはパワー不足というより、抵抗が大きい面もあり、空気抵抗を減らす方向でエアロを作ってきている。だが、その分、ダウンフォースは減ることになるが、そこは最小限にとどめておきたいというのが狙いだ。
今回のテストではリヤウイングを2種類持ち込んできた。一つは2017年型にスワンネック形状のステーのものと、2016年型にストレートネックを組み合わせた形状のウイングだ。それぞれの違いのデータ取りというのが今回のテストの目的でもあり、渋谷総監督によれば、レースになれば、予選と決勝でウイングを変更したり、サーキットや季節によっても変更することになるだろうと。そのためにも、どのウイングだと、どういうドラッグとダウンフォースになるのか、データが必要であり、今回のテストの重要なポイントにもなったという。
ブレーキの大径化も今季行なっているが、この日のテストは路面温度が低く、本格的にセッティングを出すようなテストは行なっていない。あくまでもさまざまな部位の確認とデータ取りが中心のテストになっていた。それでもブレーキは、大径化することのデメリットは出ておらず、効かせ方の調整はまだ必要なものの十分いい感触を得たという。
サスペンションのセッティングでは、今季のエアロダイナミクスに合わせるようにダンパー、スプリングの交換をして、テストを行なった。これもダウンフォースが変わればスプリングレートもダンパー減衰も変更する必要があるのだが、タイヤが本番レース用とは異なるグリップのものだけに、感触を確かめ、ある程度のデータ取りにとどめるようなテストだった。
SGTマシンはトップスピードが不足している問題を今季は解決しようとしている。特にエアロダイナミクスの変更は大きく、空気抵抗を減らしながらダウンフォースを確保するという究極を追求した仕様に仕上げていくことだろう。
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*取材協力:SUBARU TECNICA INTERNATIONAL
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