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【ワーストシナリオも提示】自工会『ビジョン2035』に込めた強い想い。日本自動車産業界は正念場

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【ワーストシナリオも提示】自工会『ビジョン2035』に込めた強い想い。日本自動車産業界は正念場

積み上げていくだけでは未来を切り開けない

『ランクルミニ』、『プレリュード』、新型『CX-5』など、2025年発売へ。こうした話題で、ユーザーはワクワクする。ところが、自動車産業界を俯瞰すると、そんな呑気なことを言っていられる状況にない。

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むろん、新車それぞれに作り手としてのメーカーの気持ちが込められ、販売店での丁寧な接客があり、自動車産業全体としてユーザーにクルマを楽しんでもらおうという想いは今も昔も変わらない。しかし、『目の前のこと』を積み上げていくだけでは、日本の自動車産業の未来は切り開けないという情勢なのだ。

『100年に一度の自動車産業変革期』と言われるようになって久しいが、2025年は日本自動車産業界にとって、まさに『正念場』なのである。

日本の自動車産業を支える、『日本自動車工業会』(以下、自工会)、日本自動車部品工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会、そして日本自動車販売協会連合会、あわせて日本自動車5団体による賀詞交歓会が1月7日、都内で開催された。

会場には、トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、三菱自動車、日野自動車など自動車メーカー各社の社長や会長、経済産業大臣、国土交通大臣、そして衆参両院の国会議員が多数出席。筆者は日本自動車ジャーナリスト協会の会員として招待を受けて出席した。

本来、この場は新年の祝賀行事であり、各方面への挨拶周りを目的として参加する人が多い。だが、近年は自動車産業界、さら言えば日本の経済界が直面している『危機感』を共有する場になってきている。

冒頭、いすゞ会長で自工会・会長の片山正則氏が祝辞、また昨年12月25日にお亡くなりになったスズキの鈴木修氏に対する哀悼の意を述べた。そして、話は本題へと移った……。

7つの課題を議論するも時流変化さらに激しく

本題とは『自工会ビジョン2035(にーまるさんごー)』だ。策定の背景について、以下のような要因がある。

・国際情勢は混沌として深刻さを増している
・各国の新たなリーダーが生まれ、今後は通商・産業政策面でますます厳しい局面を迎える
・AIなど革新的技術が生活やビジネスに大きな恩恵をもたらす一方で、新技術がつくる負の側面をコントロールする力も必要
・国内では、少子高齢化、労働力不足、自然災害などの社会課題がより一層深刻に
・そして、自動車産業界は、カーボンニュートラル、CASE、MaaSへの対応が必須
・新たに多くのプレーヤーが自動車市場に参入し、企業単位での生存共創が熾烈化

こうした中で、自工会では以下7つの課題を抽出してワーキンググループで議論してきた。
・物流、商用、移動の高付加価値化/効率化
・電動車普及のための社会基盤整備
・国産電池、半導体の国際競争力確保
・重要資源の安定調達 強靭な供給源の構築
・国内投資が不利にならない通商政策
・競争力のあるクリーンエネルギー
・業界を跨いだデータ連携

ところが、これら7つの課題を自工会が定めた当初に比べて、世の中の流れがさらに加速している状況だ。そこで、政府・他の産業・スタートアップを含めて、10年後の未来を見据えた議論のためのプラットフォームとして『自工会ビジョン2035』にまとめたというわけだ。

自工会ビジョン2035の策定検討チームの関係者によれば、毎月1~2回会合を開いて、ゼロベースでの議論を重ねたという。その中で、注目するべき個所は『10年後を見据えた課題と危機管理』の項目だ。

ワーストシナリオとは?

課題として大きく2つあり、それぞれで『ワーストシナリオ』を明記した。

1つ目は『インフラ・デジタル分野』の課題。

充電ステーション整備、カーボンニュートラルや資源循環経済に向けた地域社会、行政の連携、中国の新興企業の驚異的な開発スピードへの対抗など、各種の課題がある。これらに対応できない場合のワーストシナリオは、『海外との電動車競争に敗北』、『ソフトウェア領域での競争力獲得に失敗』と想定した。

2つ目の課題は、『サプライチェーン・グローバル』とした。

半導体、レアメタルなどの安定調達。国土が狭いことで再エネ電源整備が不利。アメリカ、中国、欧州での保護主義的政策などとなる。そしてワーストシナリオは、『価格競争力低下・生産困難』、『海外市場での競争環境悪化』、『カーボンフットプリント等規制対応めぐり特定の市場から退出』が考えられるとした。

こうしたワーストシナリオは、自工会では過去に類のない極めて強烈なメッセージだ。言い換えれば、『現状把握を徹底』している。そうならないために、自動車産業界のみならず、社会全体での総括的な対応を議論するべき時期だということだ。

ただし、私見としては『産業としての勝った・負けた』という動機付けだけでは、人としてなんだか寂しいと思う。人としてどう生きたい、どんな社会で暮らしたい、そしてどんな国になってほしい。そんな、人としての原点に立ち返って、日本の未来を考えることが、結果的に自動車(モビリティ)産業やその周辺産業の国際競争力強化につながっていくのではないだろうか。

賀詞交歓会で各方面の方と意見交換しながら、そう感じた。

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みんなのコメント

1件
  • lar********
    ソフトウェアの分野においてはすでにアメリカや中国に追いつけないくらい差がついている。もう巻き返しは無理だろう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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