メルセデス・ベンツの新型「Eクラス」のセダン、ステーションワゴンとほぼ同時にミドルクラスクーペの「CLE」が日本導入された。これまでEクラス、Cクラスそれぞれにあったクーペを統合、ダイナミックなスポーツクーペとなっているのが特徴。
メルセデス・ベンツがこれまで築き上げてきたクーペの伝統・歴史を受け継ぐ「CLE」クーペは、革新的なコンセプトとテクノロジーを採用しながら、派生モデルではない独立したクラスであることを主張したデザインで、スポーティなイメージが強調された2ドアクーペだ。
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エレガントというよりは力強いイメージのエクステリアデザインのメルセデス CLE。メルセデス・ベンツの2ドアクーペ伝統のロングホイールベース、ショートオーバーハング、ロングボンネットを採用したプロポーションは、メルセデスデザインの基本思想である「Sensual Purity(センシュアルピュリティ)」によって磨き上げられ、ダイナミックかつエモーショナルなスタイリングを形成している。
「CLE」は、CクラスクーペとEクラスクーペの後継車という位置付けだが、厳密に言えば、2010年まで生産されていたCLKの正当な後継車である。ボディサイズは全長4,850mm、全幅1,860mm、全高1,420mm となっており、「Cクラス クーペ」より16cm長く5cm広い。
いかにも速そうに見えるCLEのサイドビュー。全く新しいクラスとなる「CLE」は逆スラントしたシャークノーズと、下に広がるグリルによる精悍なフロントマスクと、これまでにないボリューム感のあるリアビューがスポーティなイメージを強めている。Bピラーを残したところは賛否両論ありそうだが、ここが剛性感のあるスポーティな走りを実現している部分でもある。
今回試乗した「CLE 200 クーペ スポーツ(ISG 搭載モデル)」は、AMGラインエクステリアが標準採用され、ボディカラーはマグノ(艶消し)カラーを含む9色展開となっている。
Cクラスのコックピット「CLE」のコックピットは現行「Cクラス」のそれをほぼ踏襲しているのが少々残念だが、「CLE」専用のスポーツシートは着座位置が低く心地よい。運転席のヘッドルームは十分すぎるほどだ。但し、後席は状況が異なる。ホイールベースが2.87mと長いため、十分なレッグルームで驚かされるが、頭上は少々窮屈だ。定員は4名。
ダッシュボードのデザインはCクラスによく似ている。座り心地の良いフロントシートに対して狭くはないが閉鎖感のあるリアシート。デジタルメーターディスプレイ(12.3インチ)とドライバー側に6度傾いたインフォテインメントタッチスクリーン(11.9インチ)、キーレスエントリー、シートベルトリマインダー、メモリー付き電動調整シートが標準装備だ。シート素材は標準でレザーARTICO(ブラック)、オプションで4色の本革が用意されている。本革内装を選択した場合は、マルチコントロールシートバックパッケージ(運転席・助手席)やシートベンチレーター(シートヒーター機能含む)(運転席・助手席)も装備される。「CLE 200」 は、AMGラインインテリアが標準採用され、3ツインスポークとフラットボトムデザインが特徴のマルチファンクションステアリングやARTICOダッシュボードなどが一層スポーティかつ上質な室内空間に仕立てている。トランク容量は420リットルで、Eクラスクーペ(425リットル)とほぼ同等となっている。
第3世代のMBUXメルセデス・ベンツとして初採用のナッパレザーのストラップを採用した後席へのイージーエントリー機能などプレミアムクーペに相応しい数多くの装備が採用されており、学習能力や使い勝手を高めた第3世代のMBUXも搭載。音声アシスタント「Hi, Mercedes」は、Mercedes meアプリ内のオンラインサービスを起動することで、優れた対話と学習機能を発揮。新採用のJust Talk機能に より、音声操作をキーワードの「Hi, Mercedes」を発話せずに行うことができるようになり、利便性が高まっている。その他ドライバーの操作負担を軽減するルーティン機能や予測提案を行うゼロレイヤーなど、インテリジェント機能にも磨きがかかっている。
「Hi, Mercedes」と言わずに指示ができるJust Talk機能は意外と便利。パワフルな2.0リッター直列4ターボ+ISG「CLE 200」は2.0リッター直列4気筒直噴ターボエンジン(M254)とトランスミッションの間に配置される第2世代のISGと組み合わされたマイルドハイブリッド。ISGは短時間最大で23PS(17kW)、205N・mの電動ブーストが可能。最高出力は204PS(150kW)、最大トルク320N・mでスポーツクーペらしい力強い加速を楽しむことができる。トランスミッションは9G-TRONICオートマチックトランスミッションを採用。1速から9速までの変速比幅が広いことから、エンジン回転数が大幅に低減され、優れたエネルギー効率と快適性を実現している。
標準装備のスポーツサスペンションは通常走行時には、しなやかで快適な乗り心地でありながら、ハードなコーナーリング時など一定以上の負荷がかかった場合に、瞬時に減衰力を高められるセレクティブダンピングシステムが採用され、かなり固めのスプリング/ダンパー設定やスポーティな設定のダイレクトステアリングによって走行安定性が向上。AMGバージョンのような硬派な性格となっている。その他、連続可変ダンピングシステム搭載のDYNAMIC BODY CONTROL サスペンションとリア・アクスルステアリングがオプションで用意され、スポーティでダイナミックなドライビングが可能となっている。
独立したクラスであることがわかるCLEのフロントビュー。特に後ろの眺めは新鮮に見える。リア・アクスルステアリングの特徴「CLE」にオプション設定されているリア・アクスルステアリングは、時速60km以下では、リアホイールをフロントホイールとは逆方向に最大2.5°傾けて、時速60kmを超えると、フロントホイールと同じ方向に最大2.5°傾けることで、最小回転半径を小さく、取り回しの良い走行安定性を大きく高める。なお、リア・アクスルステアリング装着車の最小回転半径は5.0m(非装着モデル:5.2m)を実現している。・駐車時の最小回転半径縮小:フロントホイールと逆方向に最大2.5°・市街地走行時の取り回し向上:フロントホイールと逆方向に最大2.5・ドライビングダイナミクスの向上:フロントホイールと同方向に最大2.5°・高速域での走行安定性向上:フロントホイールと同方向に最大2.5°
DYNAMIC SELECTドライブ、ステアリング、ESP、サスペンション、サウンドの設定を統合制御するDYNAMIC SELECT を標準装備。「Eco」「Comfort」「Sport」「Individual」の計4つの走行モードによって、車両の特性を明確に切り替えることができる。普段は「Comfort」がおすすめだが、それでも充分硬い。
先進アシスタンスシステム「CLE」には、ステレオマルチパーパスカメラとレーダーセンサーにより、高速道路や一般道などの走行時に先行車を認識して、速度に応じて車間距離を調節する「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック」をはじめ「アクティブステアリングアシスト」、「渋滞時緊急ブレーキ機能」、「アクティブエマージェンシーストップアシスト」、「アクティブブラインドスポットアシスト」などなど先進の運転サポート、ドライバー支援システムが備わっている。
モデルエンジンメーカー希望小売価格CLE 200 クーペ スポーツ(ISG 搭載モデル)2.0L、直列4 気筒直噴ターボ¥8,500,000 (¥ 7,727,273)結論:メルセデスによれば、「Cクラス クーペ」のドライバーが車体の大きさに不満を抱いていたのに対し、「Eクラス クーペ」のオーナーはよりダイナミックなものを求めていたという。その結果、新型「CLE」が誕生した。しかし、派生モデルではないのだからインテリアはもっと独創的であってほしかった。また、細かいところでは、64色(!)から好きなカラーを選べる他、複数のカラーを組み合わせた演出も可能なアンビエント ライトプレミアムとフレグランス機能、イオナイザー機能、エアフィルター機能の3 つを備えたエアバランスパッケージ (これはオプションで良かった)は理解できない。本当に必要だろうか?
CLEクーペはCクラス クーペとEクラス クーペの不足分を補って、Sクラス クーペよりもアグレッシブなスポーツクーペだ。こういうかっこいいクルマが増えることを切に願う。そして、より強力な6気筒エンジン版、AMGバージョン、さらにラインナップから外れて久しい「カブリオレ」が待ち遠しい。
Text:Auto Bild Japan
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