■なぜトヨタが叩かれる記事が出てくるのか
現代ビジネスWebにアップされた「トヨタが『世界一』から転落し、日本の自動車産業の『ヤバすぎる大崩壊』が始まる」という記事について、少なからぬ業界関係者から意見を求められた。
【画像】グリーンピースに名指しの批判受けた新型「プリウス」の画像を見る!(34枚)
書いたのは井上久男さんという朝日新聞出身のジャーナリストです。
ゴーン失脚事案のときに何度か一緒にTV出演してます。自分の考え方をしっかり持った人だ。それだけに反響も大きいのだろう。
同業者の意見なので良いも悪いもない。数字については間違っていない、と信じる。
井上さん、自分の意見に持っていく筆力は素晴らしい。
そういった点からすれば、直球勝負しかできない私よりはるかに頭良いです。
ただミスリードを招くブブンがいくつかあり、業界関係者はそれについて「ホントなの?」と私に聞いてくる。ミスリードされやすい点だけ取り上げ、解説したい。
まずタイトルの「トヨタが世界一から転落」という点だけれど、皆さん「ホントですか?」と思うようだ。
記事によれば「特に落ち込みが激しかったのがトヨタである。乗用車の販売台数では同社の減少幅が最大で、12%減の約125万台だった」とある。
125万台の内容は不明。未だ発表されていない2022年に於けるメーカー毎の世界販売台数を井上さんの取材ルートで得たのだろう。
ただそれでも2022年の世界販売台数はトヨタが2位のフォルクスワーゲンと、3位GMの差を広げて1位だと思う。
というのも2022年11月までの数字でフォルクスワーゲンに挽回不可能な台数差を付けていたからだ。
もっといえばトヨタの台数は本来なら傘下のダイハツと日野自動車を含めるべきで(トヨタはなぜかトヨタ+レクサスの台数のみ出す)、フォルクスワーゲングループや中国の通用五菱すら含めるGMを圧倒してます。
本文を読んでいくと「半導体不足は各国共通の事情ではあるものの、22年の中国の新車販売は2%程度伸びた。GMも米国で新車販売を約3%増やし、トヨタを抜いて首位の座を奪い返した。言い訳が許される状況ではない」とトヨタに厳しい。
GMに抜かれたといっても、2021年は新型コロナで生産調整したGMをトヨタが僅差で抜いたという事情。これといった驚きはない。
さらに数字のマジシャンぶりが並ぶ。曰く「電気自動車は出遅れた」となり、トヨタの電気自動車「bZ4X」は1か月でリコールになった一方、メルセデスやヒョンデなど輸入車勢が2021年の107倍売れたという。
数字は正しいけれど、bZ4Xのリコールってハブ(車軸)の問題だし、売れているというヒョンデの台数は2022年で500台ほど。そもそも2021年についていえば販売していない。
その後、BYDの凄さがトクトクと続く。これは個人の印象なので御自由に。
この記事の最後に「トヨタが中国企業に『敗北』する日がやってくる…日本の基幹産業を襲う『悲劇的な結末』」という第2弾のお知らせが出る。
多くの人は「心配だ! 次を読まなくちゃ!」と思うだろう。第2弾もBYDの凄さ紹介なのだけれど、突然豊田章男社長の話が出てくる。
同業者の池田直渡さんがITメディアニュースに書いた「トヨタは日本を諦めつつある 豊田章男社長のメッセージ」という記事を読んだ結論として「思惑通りに運ばないなら、日本から出ていくぞ」という意思を示したと結論付ける。
実は池田さんが書いた記事の取材は私も同席していた。豊田章男さんって超が3つつくらい日本好き。しかもタイに軸足を置くリスクの大きさだって御存知だ。
井上さんの記事の結論は、EVシフトという大変革に直面しているのに「トヨタが真正面から向き合おうとしていない。それでは国民に『このまま中国の軍門に下っていいのか』と言われても、文句は言えないだろう」である。
いかにトヨタが出遅れてダメな状況かを説明したいんだろう。
トヨタを叩くとジャーナリストとしてカッコいいし、トヨタの悪口を読みたい人って多い。数字取れる。
エンジン車も電気自動車も好きだし、自動車産業に関わる全ての人が幸せになって欲しい私からすれば、トヨタは日本の自動車企業のなかでもっとも先を見ていると思う。
少しばかり普及の速度を遅く見積もったものの、電気自動車に対する準備だっておこなっている。
もし日本を叱咤激励するなら、叩くべきはトヨタじゃなく、さまざまな規制で足を引っ張りまくる政治や行政だと思う。
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みんなのコメント
国内の自動車が全てEVになったらどうするの?
世間では節電なんて言って、原子力だの問題は先送り。
ガソリン単価が上がった時のトリガーは国が決めたのに無視。ユーザーに多大な税金を掛けてるし。
残念ながら政府の莫大な支援で成長してる中国、韓国と
足を引っ張られ続けてる日本メーカー。
いずれ逆転されるかも。