2022年7月16日に発表された、トヨタ「新型クラウン」。4車種展開や奇抜なデザイン、FFベースの4WDなるなどビッグトピックが満載だが、なかでも注目なのが、デュアルブーストハイブリッドシステムという新開発のパラレル式ハイブリッドだ。
新型クラウン最大の武器といえるデュアルブーストハイブリッドシステム。はたしてその実力は!?? THS-IIとは何が違うのか?? いま判明している情報をもとに、この新パワートレインの真価について、考察しよう。
めっちゃ強そう!! 新型クラウン最大の武器 新開発デュアルブーストHVの真価
文:吉川賢一
写真:TOYOTA
エンジン主体のパラレルハイブリッド方式
トヨタのハイブリッドシステムといえば、初代プリウスから始まった歴史と実績のあるTHS(トヨタハイブリッドシステム)だ。THS(II含む)は、シリーズ・パラレル式ハイブリッドと呼ばれるハイブリッドシステムで、エンジン出力のみでも、モーター出力のみでも、そのミックスでも駆動できる万能型。トヨタのハイブリッド技術の粋が集められた、世界で最も優秀なパワートレインだ。
一方、今回の新型クラウンに採用された、新開発の「デュアルブーストハイブリッドシステム」は、パラレルハイブリッドと呼ばれるシステムで、エンジンの出力軸にモーターのアシストを加えた上で、トランスミッションへ入力して駆動するシステムだ。
エンジンとモーターの間にはギヤやクラッチはなく、基本的には、モーター単独での走行はできない。具体的には、スバルのe-BOXERや、古くはホンダのIMAなどと同じ部類のシステムだが、新型クラウンのパワートレインの出力は、他社の比でないほど強烈なスペックだ。
「ツインターボ」にも似たキーワードが名称につけられているが、2.4L直4ガソリンターボと、高出力モーターを直結した、2つの出力を組み合わせるため「デュアルブースト」と名付けられている。ここに有段の6速ATを組み合わせる。なお、後輪への動力伝達はプロペラシャフトではなく、BEVのレクサスUX300eやRZ、bZ4Xなどで採用されている、大出力の水冷付き電動パワートレイン「e-Axle」だ。
リニアでダイレクトで超速い!!
デュアルブーストハイブリッドシステムに採用されている2.4L直4ターボエンジンは、最高出力200kW(272ps)/6000prm、最大トルクは460Nm/2000-3000rpmと、非常に高出力なユニット。TNGAエンジン技術をベースに、センター直噴システムと高効率ツインスクロールターボにより高い燃焼効率を実現する「D-4ST」や、運転状態にあわせて最適な制御を実現する可変冷却システムなどを採用している。
これに、61kW(82.9ps)/292Nm出力のフロントモーターを採用、アクアから採用が始まったバイポーラ型ニッケル水素電池を組み合わせている。後輪側のe-Axleは59kW(80.2ps)/169Nm出力だ。
新型クラウンに搭載される2.4Lガソリンのデュアルブーストハイブリッドシステム。エンジンの出力軸上にあるモーターが、エンジンの出力をアシストする形となる。THSのようにモーター単独での走行はできないため燃費は落ちる
ターボの苦手な発進時はモーターが強烈にアシストし、速度に乗ったあとは、ターボのパワーで「ブースト」する。6速ATのシフトアップ瞬間のトルクの落ち込みは、モーターがアシストするため、加速の息継ぎのような感覚はないだろう。ドライバーのアクセル操作にリニアに反応し、そのレスポンスは、ダイレクトかつトルクフルで、ペダル操作に対して気持ちよく伸びるという。しかも、レスポンスの良い直4エンジンのサウンドも聞かせてくれるというおまけ付きだ。
油種はプレミアム指定(THS-IIはレギュラー)となり、燃費は15.7km/L(市街地12.6、郊外15.8、高速17.6)と、2.5Lハイブリッドの22.4km/L(市街地21.2、郊外23.2、高速22.1)に対して、約40%も落ちることなど、数字の上では気になるところはなくはない。また、トップグレードなのに「4気筒ターボ」(6気筒であって欲しかった)というのも、カタログ好きなオーナーには刺さりにくいかもしれない。
ただ、このようなエモーショナルな新パワートレインを、日本が誇る名車「クラウン」で用意してくれたのは、非常にうれしいことだ。
最新のクラウンに相応なエンジンを提供したかった
新型クラウンの開発責任者 チーフエンジニア皿田明弘氏は、「2.4L直4ターボハイブリッドは、クラウンのエモーショナルな部分をより伸ばすパワートレインとして、かつての大排気量大トルクのクラウン時代を知るオーナーの方にもぜひおすすめしたいパワートレイン」とし、電動化とパワーを両方兼ね備えた、エモーショナルなエンジンとしてデビューさせるには、今回の新型クラウンが最適だったという。
また、加速性能の味付けを検討した車両性能開発担当 岡松秀悟氏によると、加速時や通常走行時に、ドライバーの気持ちよいと感じる、その想像を超えてくるような加速を目指したという。アクセル操作に対して、しっかりとついてくる加速と音、それによって、お客様は高揚感を感じ、思わず笑顔になる「WOW感」を狙ったそうだ。
筆者も試乗の際には「WOW!!」と言わされることになるのか。苦労の末に完成した、デュアルブーストハイブリッドの新型クラウンに試乗させていただく日が、非常に楽しみだ。
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