この記事をまとめると
■カーボンという素材はレースの世界はもちろん市販車にも投入されつつある
どんなに大切にしても経年劣化は避けられない! クルマの「ヤレやすい」パーツとは
■記事ではカーボンでよくいわれる「割れたら直せない」は本当かの真相を探っている
■実際のところは修理可能なケースも多いが強度やコストが課題となる場合もある
誰もが憧れるカーボンパーツのメリットとは
外装のカスタムパーツの素材で最上級といわれるカーボン。そのカーボンのなかでも、航空&宇宙分野で開発され、F1を始めとするモータースポーツでも活用されている最高性能の複合素材が「CFRP」と呼ばれるドライカーボンです。
そのドライカーボンは複合樹脂素材としては最高の性能を有しているため、今では外装の軽量化を図るための素材として普及し、カスタム車両やサーキット向け車両に多く装着されるようになってきました。 しかしドライカーボンは特殊な製法で製造されるために補修が困難とも言われています。
ここではそんなドライカーボンの補修が可能かどうか、できるならどうやるのか、紹介していこうと思います。
■CFRPとドライカーボンとはどんな素材?
「CFRP」とは「Carbon Fiber Reinforced Plastics」の略で、直訳すると「炭素の繊維で強化された樹脂」となります。
基本的な部分では「FRP(Fiber Reinforced Plastics)」の一種で、一般的なFRPの場合はガラス繊維でエポキシ樹脂を補強したものになります。なので「GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic)」と呼ぶのが正式ですが、標準化しているため「FRP」と呼ばれています。
その繊維をカーボンに置き換えたものが「CFRP」です。ガラス繊維に比べて2~3倍の引っ張り強度があるそうです。ちなみにスチールとの比較では比重が4分の1、強度が10倍といわれています。
そして、単にFRPと同じ製法で、繊維をカーボンに置き換えたものをウエットカーボンと呼びます。
ドライカーボンは、カーボン繊維に樹脂を含ませたところまでは同じですが、真空引きをして余分な樹脂を抜き、さらに高圧を掛けながら高温で焼き固めて作られます。この製法をオートクレープ成型といいます。 このオートクレープ成形は無駄な樹脂が省かれるため極限まで軽くできます。
そして気泡による細かな空洞が取り除かれることで樹脂とカーボン繊維の性能が最大限引き出され、高い強度を誇ります。
一方で最大のデメリットはコストの高さです。上記のように込み入った工法で手間と時間が掛かってしまうので、元々のカーボン繊維の高い価格に加えてコストが上乗せされてしまうのです。
とは言ってもゴルフクラブや釣り竿、そして自動車などさまざまな分野の製品に使われるようになったことで、以前に比べたら価格はかなりこなれてきました。外装のカスタムパーツも今では20年前より数分の1の価格で購入できることが多いです。
ぶっちゃけカーボンって直せるの?
■主な使用箇所
「FRP」が自動車関係に使用され始めたのは想像よりだいぶ古く、最初の使用例は不明ですが、1953年に発売の初代「シボレー・コルベット」のボディはこの時点でFRP製です。おそらくレースの現場ではその少し後から使用され始めたと思われます。
日本でも1970年代中盤あたりからレースで使われ始めたのをきっかけに、市販車用のスポイラーやフェンダーなどのカスタムパーツがリリースされていきました。
カーボンが使われ出したのはバイクが先だったでしょうか、だいたい1940年代の終わりくらいでした。1980年代の後半にはボディのさまざまな部分に採用されるようになります。
市販車でも高性能な車種ではボンネットやルーフにドライカーボンを採用する車種も増えています。カスタムパーツとしてはまず巨大なGTウイングあたりからでしょうか。軽量化が効く車体の末端部分で、大きなダウンフォースに耐える強度が必要なウイングには最適の素材です。
ほかの空力パーツとしてはカナードやディフューザーもドライカーボン製が多く売られています。
■ドライカーボンの補修は可能なのか?
そんなこんなで、今ではさまざまな部分に「CFRP」製パーツがラインアップされるようになってきましたが、その一方で「ドライカーボンのパーツは補修ができないから、破損させたら交換しかない」という声もけっこう耳に届くようになってきました。
実際のところはどうなのでしょうか。
結論からいうと、ウエットはもちろんですがドライでも補修はできます。ただし、ドライの場合は100%の性能は発揮出来ないことが多いようです。
ウエットの「CFRP」は、カーボン繊維で編まれたクロスにエポキシ樹脂を染みこませて固めています。なので破損した場合は破損箇所を被うようにクロスを貼り込み樹脂で固めれば、樹脂が接着剤の役も果たし、強度的にもほぼ元の状態に戻すことができます。ただし、カーボンクロスの継ぎ目は消せないので、無塗装の場合は補修跡が残ります。
問題のドライカーボンの場合も破損箇所にバッチをあてる方法なのでやることは同じなのですが、元々大きな釜のなかで真空引きしながら高温高圧で焼き固めることで、薄く固く作ることができているので、補修の場合もそれに近い工程をおこなわないと、単にウエットのバッチをあてただけになってしまいます。
細かくは教えてもらえませんでしたが、部分的に真空引きをおこない、高温で焼き固める方法を施しているようです。
この方法で補修した箇所は、実際にレースの現場で再び酷使され、しっかり負荷に耐えているということだったので、強度的にもある程度復活させられるようです。
しかしこの補修には専用の装置や設備が不可欠で、とても素人がDIYでおこなえるものではないでしょう。補修のコストもそれなりに掛かるそうです。
なので、思い入れのある替えの利かない部品や、ボンネットやバンパーなどの高コストな部品にはそのコストと手間を費やす意味はありますが、カナードなどの小物の場合は交換した方が早いかもしれません。
予算と目的を考えて補修を実行するかどうかを決めましょう。
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みんなのコメント
知識もやる気もないライターには思いもよらなかったのでしょうね。
i3の場合、ボディの損傷時にはあらかじめ決められたところで切り離し、パーツごと交換するという方式になっていました。