ついに11月1日から新東名の新静岡IC~森掛川IC(上り約49.7km、下り約50.1km)で最高速度110km/hの試行が始まった。1963年に高速道路が開業して以来、最高速度100km/h超の区間ができるのは初。正式な最高速度の引き上げにも注目が集まる。海外では最高速度100km/h超の高速道路は珍しくない。その筆頭で、速度無制限区間も存在するドイツのアウトバーンと、日本の新東名は何が違う?
文:清水草一/写真提供:中日本高速道路
設計思想は異なるも構造は近い新東名とアウトバーン
片側4車線区間のアウトバーン。速度無制限区間は半分程度で、速度制限がある区間も存在/shutterstock.com
新東名とドイツ・アウトバーンでは、実は設計思想がまったく違う。
ナチス政権下で道路総監を務めたフリッツ・トートは、可能な限り地形に沿い、自然と調和する高速道路網を目指した。ドイツに行くと、アウトバーンが風景に溶け込んでいて、パッと見どこに走っているのかわからなかったりする。
日本の高速道路も、名神・東名の建設時、アウトバーンの建設に携わったティルケ博士を招いて設計したため、地形に沿うのを旨としたが、日本とドイツでは地形の険しさがまったく違う。おかげで急すぎるカーブもできてしまい、開通後に事故が多発、後にトンネルを掘ってルートを変更した区間もある(関ケ原付近の今須トンネル)。
新東名・新名神は、140km/h走行での安全性を担保する設計だが、これは地形を完全に無視し、トンネルや橋梁、切り通し等ですべてを貫通することで、アウトバーンレベルの勾配やカーブの小ささを実現した。
このような違いはあるが、道路そのものの構造はかなり似ている。ドイツに比べ地盤が軟弱な日本では、土工部の基礎には軽い砂利などを使うのが通例だったが、新東名は山間部を通過している分地盤が強固なため、アウトバーン同様にコンクリート床板(アスファルト舗装の下)が多用できている。おかげで道路の沈降ムラが小さくて乗り心地が良く、舗装の補修も少なくて済むメリットがある。
新東名は「日本のアウトバーン」といえる設計
2017年11月1日より1年間、最高速度110km/hの試行が始まった新東名の新静岡IC-森掛川区間
アウトバーンは、原則として勾配4%以内だが、地形に沿って設計されているため、山間部には非常にキツいカーブもある。ただ、地形自体がおおむねゆるやかなので、多くの区間で新東名に似た、ゆったりした勾配と曲率になっている。
その新東名はというと、東名高速のカーブが最小半径300m、最大勾配5%なのに対し、新東名はそれぞれ3,000m、2%。また、路面の沈降が小さいためジョイント部の段差も小さく、「このまま速度無制限にできるのでは」と思わせる。なかでも御殿場~浜松いなさ間は、全体の約4割に「付加車線」が設置され、実質6車線で運用されている。まさに日本のアウトバーンだ。
日本とはまるで違うアウトバーンの運転マナー
しかし、運転マナーは大きく異なる。
全体の5~6割が速度無制限のアウトバーンは、完全な弱肉強食世界で、遅い車は速い車に絶対的に進路を譲らなければならない。
そのため、どんな速度で走っていても、「キープライト」が鉄則。右側追越(日本でいう左側からの追越)は重大な違反で、すぐに通報されてしまう。キープライト徹底なので、300km/h巡行でも、他に車がいなければ第一走行帯(一番右車線:日本でいう左側車線)に戻る。感嘆するほど見事なマナーである。
日本は制限速度が低いため、こういったマナーはまったく形成されていない。これは国民性ではなくルールが生んだもので、日本人が悪いわけではない。
また、アウトバーンではトレーラーは制限速度80km/hで、追越車線に出てくることは滅多にないが、これは交通量の少なさが貢献している面も大きい。
日本は、太平洋ベルト地帯の線上に大部分の大都市が集中していて、どうしても東名・名神に交通が集中する。しかも車線数は基本「4」と最小限。しかし、ドイツの都市は面に分散しており、車線数にも余裕があるので、混雑する区間そのものがあまりないのである。
最高速度は違っても死亡事故率は同水準
死亡事故発生率は、2010年の統計で、日本1.7、ドイツ1.9(1億台キロあたり)。ほぼ同水準だが、どちらも世界的に見ると低い部類に入る。ただ内容を見ると、ドイツでは高速走行ゆえに乗員の死亡事故が多いのに対して、日本では高速道路上の停止車両や、そこから降りた歩行者の死亡事故が多いのが特徴だ。
【清水草一】
◆ ◆ ◆
このように新東名とアウトバーンは、主に運転マナーの違いがあるいっぽうで、道路の構造で比べると、新東名はアウトバーンとほぼ同水準といえる作り。死亡事故率にも大差はない。
新東名の最高速度110km/h試行は1年間続けられ、そのうえで120km/hまで最高速度を引き上げるかどうか検討される見込み。今後、速度引き上げの議論が深まることに期待したい。
長い直線が続く新東名高速道路(写真提供/中日本高速道路)
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
トヨタ本気の「小さな高級車」に驚きの声! めちゃ豪華な「本革×本木目」内装を採用! 小型車に「クラウン品質」取り入れた“直列6気筒エンジン”搭載モデルに反響あり!
日産が93.5%の大幅減益! ハイブリッドの急速な伸びを読めなかったのは庶民感覚が欠けていたから…「技術の日産」の復活を望みます【Key’s note】
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
スズキ・フロンクスが月販目標の9倍も受注! 絶好調な理由は小さくて安いのに感じられる「高級感」!!
日産が93.5%の大幅減益! ハイブリッドの急速な伸びを読めなかったのは庶民感覚が欠けていたから…「技術の日産」の復活を望みます【Key’s note】
トヨタ『ランドクルーザー』リコール…ドライブシャフト不良、走行不可能になる恐れ
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
中古車バブル崩壊……その時あなたは何を買う!? 絶版国産[スポーツカー]ほしいランキング
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?