■新型「“電気”ハイエース」間もなく登場か
トヨタの人気商用バン「ハイエース」の現行モデル(通称「200系ハイエース」)が発売されたのは2004年8月のこと。間もなくデビュー20周年を迎えます。
絶え間ない改良の積み重ねにより進化を続けているとはいえ、そろそろ次期型ハイエースの登場にも期待したいところです。新型はいつ現れるのでしょうか。
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はたらくクルマの代表格であるハイエース。
昨今は、一般ユーザーがおしゃれなカスタムを施して、アウトドアライフなどを楽しむクルマとしても浸透してきました。
そのハイエースの海外向けラージサイズバン(H300系)をベースに、BEV(バッテリーEV:電気自動車)に仕立てたのが、「グローバル ハイエース BEV コンセプト」(以下、ハイエースコンセプト)です。
2023年10月に開催された第1回「ジャパンモビリティショー2023」でトヨタ車体が出展したコンセプトモデルで、全長5280mm×全幅1950mm×全高1990mm、ホイールベース3210mmという超大型サイズのバンに圧倒されます。
乗車定員は1名。最大荷室長3490mm、荷室幅1715mm、荷室高1270mmという、広大な荷室エリアが与えられています。
なお大型の走行用バッテリーは、フラットなフロアの下に敷き詰める設計です。
会場のトヨタ車体担当者によると、ハイエースコンセプトは走行用バッテリーを最大2列まで積むことができる想定になっているといいます。
詳細なバッテリースペックや積載容量は検討段階だといいますが、たとえば車両価格を抑えたいユーザーの選択肢として、走行用バッテリーを1列のみにすることで、価格を抑えつつフロアも低い仕様を設定できるような工夫がなされているのです。
しかし筆者(自動車ジャーナリスト 吉川賢一)は、「BEVのハイエース」には課題が多くあると考えています。
そのひとつはバッテリー容量と価格の兼ね合いです。
BEVは走行用バッテリーを多く積むほど、長距離を走ることができるようになりますが、そのぶん車両価格は上昇します。
乗用車に対し、よりシビアに“コスパ”が求められる商用車ですから、このバッテリー容量と価格の兼ね合いは非常に難しい課題になります。
また5分程度の給油で再び500km程度の走行が可能なエンジン車と違い、BEVではエネルギー補充に時間を要するというのも、ビジネスで用いるハイエースにとっては厳しい足かせとなりそうです。
たとえ2列積みのバッテリーで長距離対応をしても、充電時間はそのぶん長くなるうえ購入価格もはね上がり、さらには荷室も狭くなります。
バッテリーの耐久性の問題もあります。
平均で年間3万キロから4万キロ、なかには5年間で30万キロを超える距離を走るような使い方をするハイエースですから、一般人が乗るBEVよりも数倍は走行することが想定されます。
日本で使われなくなった走行20万キロオーバーのハイエースの中古車がそのまま海外へと輸出され、現地で100万キロまで走り続けている場合もざらにみられるほど、タフな使われ方をするクルマなのです。
そんなタフな使用条件なうえ、寒冷地から熱帯まで様々な地域で販売されていることから、バッテリー温度をコントロールするための技術的な対策も必要となり、さらにコストが上がることも考えられます。
現状のハイエースの使われ方を考えれば、やはりエンジン車を選ぶユーザーが大半でしょう。
ただし、決まったルートを決まった時間で巡回する配送バンや送迎バス、また屋内工場を走行する用途などでは、BEVハイエースが活躍するかもしれません。
こうしたことから前出のトヨタ車体の担当者は、次世代のハイエースはエンジン仕様とBEV仕様を選べるようにしておくのが良いと考えていると話していました。
※ ※ ※
いずれにせよ、現段階の技術の延長線上にある走行用バッテリーを使う場合、容量の「落としどころ」を探すのは非常に難しい課題といえます。
たとえばラジコンカーのように、バッテリー交換が簡単にできるシステムなど、悩みを解決できる技術やサービスが整えば、電動のハイエースにも活路があるかもしれません。
バッテリー性能の飛躍的な向上も含め、今後BEVの商用車が広く普及するためにはまだまだ多くの技術的なブレークスルーが求められるといえます。
そうした過渡期にいるハイエースですが、2025年頃にハイエースコンセプトを市販化しつつも、いっぽうでまだしばらくは現行型200系ハイエースに改良を重ねつつ併売していくものと筆者は予想しています。
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まだ自動車ライターやってたの?