ウラカンシリーズの集大成とも言えるテクニカだが、なぜランボルギーニの得意な4WDではなく、 RWDを採用したのか。そして先に登場したSTOと比較し、テクニカはどのような位置付けなのか?ランボルギーニ社の技術部門で車両開発全般を統括するヴィクトル・ウンダーベルグ氏に話を聞いた。(Motor Magazine 2022年10月号より)
RWD採用のキーワードは軽量化とエレクトロニクスの進化
ウラカン テクニカをスペインのヴァレンシアサーキットで試乗してなによりも印象的だったのは、クルマがスライドし始める感触を掴みやすく、またスライドし始めてからのコントロール性が高かったこと。この点を指摘すると、ヴィクトル・ウンダーベルグ氏は次のように語り始めた。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
「私たちは長年の開発を通じてウラカンのプラットフォームについて熟知しています。LDVI(ウラカンに搭載されているドライビングダイナミクスコントロールシステムのこと)をどう設定すればいいかも完璧に把握しています。もうひとつ重要な点は、テクニカはウラカンのフェイスリフトではなく、完全なニューモデルであるということです」
スライドし始める様子がわかりやすいことの重要性について、ウンダーベルグ氏はこんな説明を付け加えてくれた。
「クルマの挙動が予測しやすいので、ドライバーはすぐにそのハンドリングに慣れることができます。これが素早くできると、クルマを速く走らせるという次のステップへと直ちに移行できる。この段階では俊敏なスロットルレスポンスやギアシフトがあなたをサポートするはずです。
しかも、たとえば4ラップ立て続けにアタックしてもブレーキの温度は安定したまま。したがってドライバーは不安を抱かずにドライビングに集中できることでしょう」
一方で気になることもある。ウラカンの歴史は、このテクニカと間もなくデビューするオフロードモデルでいったん幕を閉じ、今後はハイブリッドモデルへと生まれ変わることが決まっている。つまり、テクニカはウラカンシリーズの実質的な集大成なのだ。ところが、テクニカの駆動方式には、ランボルギーニの得意な4WDはなく、あえてRWDを採用している。その理由はどのようなものだったのか?
「どんなクルマでも何らかの方法で性能のバランスをとる必要があります」とウンダーベルグ氏。
「私たちはウラカン テクニカに大パワーを与えたいと考えていましたが、それとともに軽量化を実現したいとも願っていました。もしも4WDを採用していたら、ドライブシャフトやディファレンシャルギアなどが必要になるので、当然のように車両重量が増加します。その代わり、我々は4WSのシステムに投資して、リアタイヤの接地面を適正化する方針を選びました。ウラカン テクニカにはRWDと4WSの組み合わせがベストとの結論に至ったのは、このためです」
日常的に使いこなせるSTO並みのハイスペック
RWDを採用した背景のひとつには、エレクトロニクスの進歩も挙げられそうだ。
「20年前に比べて、トラクションコントロール、スタビリティコントロール、パワートレーンのマネージメントなどは飛躍的な進歩を遂げています。これがRWDのポテンシャルをさらに引き出してくれたことも間違いありません」
最後に、ウンダーベルグ氏は先ごろデビューしたSTOと比較しながら、テクニカのポジションを次のように説明してくれた。
「STOはサーキット走行に焦点をあわせたモデルで、非常に優れたパフォーマンスを誇ります。したがって『STOこそが自分にとっては最適』というお客さまもいらっしゃるでしょうが、『STOのデザインは自分にはスポーティ過ぎる』と考えるお客さまがいても不思議ではありません。一方のテクニカは、スタイリングが過度にスポーティではなく、日常的に使うにしても不自由はしません。しかもSTOに近いファン トゥ ドライブを味わえるのです。パフォーマンスだって4WDモデルに大きく劣っているわけではありません。こうしたところにテクニカの魅力はあると私たちは考えています」
サーキットではSTOに肉薄する速さを発揮しながらも、街中にもしっくり馴染むエレガントなスタイルを得たスーパースポーツカー。それこそがウラカン テクニカの真の姿なのだ。(文:大谷達也/写真:アウトモビリ ランボルギーニ S.p.A )
[ アルバム : テクニカについてランボルギーニのテクニカルトップに聞く はオリジナルサイトでご覧ください ]
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