この記事をまとめると
■昨年より「スーパー耐久」シリーズに「ST-Q」クラスが設けられた
水素エンジンは思ったよりもずっと現実的! 水素カローラのレースでの活躍を追ったら市販車への採用の可能性が見えた
■このクラスは実験、開発車が想定されている
■今回はカーボンニュートラル燃料で参加を表明したスバルにスポットを当てた
カーボンニュートラル燃料は2つのタイプに分けられる
モータースポーツは、よく先進技術の研究・開発の場と言われるが、現在の「スーパー耐久」シリーズには、まさにこのことを象徴する新クラスが存在している。ご存じの方も多いかと思うが、昨年から設けられた「ST-Q」クラスである。
量産車を対象に、幅広い車両カテゴリーに応じている点がスーパー耐久シリーズの大きな特徴だが、昨年から市販量産車の範疇には含まれない、言ってみれば実験、開発車を想定したST-Qクラスが追加された。折しも、時代はカーボンニュートラルが声高に叫ばれる状態。運営側と自動車メーカーとの間で、いろいろな話し合いも持たれたことは想像に難くない。昨年、いきなりトヨタが水素燃料によるカローラ・スポーツを走らせてきたことは衝撃的だった。
2年目を迎えた今年は、メーカーによる実験、開発の姿勢がさらに鮮明に表れるようになり、スーパー耐久シリーズの頂点に位置する「富士24時間レース」(6月3~5日)に、各社が相次いで新時代を想定する車両を送り出しきた。水素燃料によるカローラH2コンセプトについては、すでに紹介したとおりだが、もうひとつ燃料によるカーボンニュートラルの試み「カーボンニュートラル燃料」車が、期せずして何台か参戦を果たしてきた。これらの車両について紹介してみたいと思う。
さて、今シーズンの開幕直前に話題となったのが「カーボンニュートラル燃料」で参加を表明したスバルだった。BRZを使い、カーボンニュートラル燃料の可能性、有用性を探るための参戦プロジェクトである。このBRZのプロジェクトを、開発担当責任者であるスバル研究実験センターのセンター長である本井雅人氏に窺ってみたが、その前に、カーボンニュートラル燃料とは何か、について簡単に触れておきたい。
まず、カーボンゼロではなくカーボンニュートラルという表現に留意したい。日本語訳すれば「炭素中立」(不自然な訳だが)と言い換えられる表記で、中立、すなわち相殺関係によるプラスマイナスゼロを意味する表現となっていることだ。
このカーボンニュートラル燃料を大別すると2タイプに分けられる。ひとつはバイオ燃料系、もうひとつは合成燃料系で、バイオ燃料系については、さらにバイオエタノールとバイオディーゼルに分けられる。バイオエタノールは植物のデンプン質や糖質(主にセルロース)を原料とするエタノール、バイオディーゼルは廃食用油や植物油脂、動物油脂を原料として作られるメチルエステルが主体となり、合成燃料系は、水素と二酸化炭素の化学合成で作られたメタン、メタノールと考えてよいものだ。
いずれも、それぞれの燃料を自動車用燃料として使用した場合、地球上に存在する二酸化炭素の絶対量が増えないことを特徴としている。たとえば、植物由来の燃料であれば、その植物が光合成によって大気中から吸収する二酸化炭素の量と、燃料として燃焼した場合に排出する二酸化炭素の量が相殺関係、プラスマイナスゼロと見なせるため、カーボンニュートラルという考え方が成立することになる。
さて、スバルが取り組むカーボンニュートラル燃料車は、2.4リッターエンジンを搭載するBRZだ。開発責任者の本井氏によれば、トヨタからカーボンニュートラル燃料に取り組んでみないか、という誘いがあり、先進技術の研究・開発、若手エンジニアの人材育成の観点から、スーパー耐久シリーズへの参戦を決めたという。
ドライバー曰く「フィーリングはガソリン機関と識別がつかない」
基本的には、カーボンニュートラルの選択肢を増やしたいという発想が原点にあり、クルマを作るのはエンジニア、すなわち開発者の育成にも力を注ぎたい、という意向が強く働いたことによるという。このため、過去のモータースポーツ参画では、外部企業(WRC=プロドライブ社、スーパーGT=STI社など)との連携で体制を作ってきたが、今回はすべて社内の人材、体制のみで行っているという。ちなみに、カーボンニュートラル燃料車のプロジェクトに関わる人員は、優に100人を超えているという。
レースは、やってきたことが即座に結果として表れ、レースとレースの間隔も短いことから、対応するエンジニアには、短時間での対策、状況に対する即断即決の判断が求められることになる。スバルでは、我々は量産車を生産するメーカーであり、よりよい製品をユーザーに提供するには、優秀な人材が必要不可欠だという判断が働き、その人材育成には、モータースポーツがまたとない条件を備えていると見ているのだ。
さて、使用する燃料は、二酸化炭素と水素、非食用バイオマス由来の成分を合成し、ガソリンのJIS規格に合致するよう調節されたものが使われているという。なお、燃料自体はカーボンニュートラルと見なせる状態だが、燃料の製造、輸送に関しては二酸化炭素排出の可能性も含まれるため、厳密に言えば完全なカーボンニュートラル状態ではない、と付け加えてくれた。
燃料に含まれる酸素含有量がガソリンより若干少ないため、厳密に言えば出力レベルは低くなるが、こうしたあたりも留意してレース仕様車は設定されてるという。ガソリンと比べた場合のドライバビリティの違いが気になり、ドライバーにフィーリングを求めてみたが、ガソリン機関と識別がつかないレベルで仕上がっている、という答えが返ってきた。
ちなみに、トヨタは水素燃料車のカローラほかに、カーボンニュートラル燃料の86も参戦させているが、BRZもこれと同じ燃料を使っているという。ただし、トヨタのエンジンは86用でなく、直列3気筒ターボのG16E型を1.4リッターに縮小したものを使っている。
一方、24時間レースのスタート直前に開かれたプレスコンファレンスで、2台参戦する新型フェアレディZのうちの1台が、カーボンニュートラル燃料車であることを日産が表明した。もう1台のガソリン燃料車と比べ、動力性能面で遜色がなかったことは、スタート直後から車両の走行スピードで確認することができた。
そしてもう1台、バイオディーゼル燃料で参戦してきたマツダ2も見逃せない存在だった。こちらはガソリン機関がベースではなく、ディーゼル機関をベースとするカーボンニュートラル燃料が特徴の車両で、燃料の原料はミドリムシ、すなわちワカメやコンブと同じ「藻」の仲間で、化石燃料(軽油)でないことから二酸化炭素の発生がない。
ちなみにディーゼル機関は、もともと落花生油を使う機関として開発され、そのルーツはカーボンニュートラルだった。それが石油燃料の発見、発達により、ディーゼル機関には軽油が用いられるようになったものである。
ミドリムシ燃料は、カーボンニュートラルを実現するディーゼル機関用の燃料として研究・開発が進められているが、現状、1リッターあたり1万円ほどするらしく、コストダウンが急務、大きな課題となっている。ちなみに、マツダ2のレース燃費は、富士スピードウェイ1周でほぼ1リッター前後らしく、まともなペースで24時間を完走すれば、燃料代だけで数百万円が消える勘定になる。
水素も含めたカーボンニュートラル燃料の実現化にメドが立てば、EVに頼らぬ二酸化炭素の排出削減が可能となる。とくに燃料を補給することで走ることができる内燃機関の特徴は、電池=充電に依存するEVにはないメリットと言うことができ、これの実用化には大きな期待が寄せられている。
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