現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則106】レクサスGS350をBMW530i、アウディA6 3.2クワトロとの比較で検証

ここから本文です

【ヒットの法則106】レクサスGS350をBMW530i、アウディA6 3.2クワトロとの比較で検証

掲載 更新 15
【ヒットの法則106】レクサスGS350をBMW530i、アウディA6 3.2クワトロとの比較で検証

2005年に日本初のプレミアムブランドとして開業したレクサス。その実力はどんなものなのか、その個性はドイツのプレミアムブランドとどう違うのか、実に興味深かった。そこでMotor Magazine誌では、BMW530i、アウディA6 3.2クワトロとともに、登場したばかりのレクサスGS350をテスト、800kmのロングツーリングを行なっている。今回はその模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年11月号より)

既存の常識にとらわれないセダン
今、話題沸騰のレクサスGS。このクルマが目指す基本的なキャラクターは「走り最重点のセダン」であり、「異軸のセダン」であると言う。前者はいわゆるスポーツセダンとしてのポテンシャルの高さを表現するフレーズで、後者は「セダン」という言葉から連想される一般的なイメージに対して、より自由な発想に基づく既存の常識にとらわれないセダンづくりを意識したということを示すのは、何とはなしに理解できる。

2019年もっとも読まれた記事ランキング発表、2位は運転免許証の謎、さて1位は?

一方で、そんなGSの開発を担当してきた三吉CE(チーフエンジニア)は、「走りを語る上でハードウエアやスペック中心の議論を行うことはもうしたくない。それもあって、クルマ作りの考え方の柱をあえて『ダイナミズムの完結』と呼びつつ走りの熟成を続けてきた」ともコメントしている。

見方によってはどこか二律背反する事柄であるようにも思えるそんな命題を掲げた意味というのは、これまでプレミアムセダンの市場を牽引してきた世界のライバルたちに敬意を表しつつも、そうしたモデルたちに対しての明確な一線を画すべくレクサス流儀の雰囲気づくり、そして走りのテイストの演出を狙いたいという意識の表れであると私は思う。

前述のように「ダイナミズムの完結」を標榜するGS350。その基本的なデザイン、パッケージングは、V型8気筒エンジンを搭載するGS430ともちろん同様だ。

サイドまで大胆に回り込んだ切れ長のライトデザインなどにより、いかにもスポーティな躍動感を演じるBMW5シリーズや、シングルフレームグリルの採用で従来型よりもグンと強い自己主張を行うアウディA6に比べると、フロントマスクの表情はいささか「線が細い」印象も伴うのが、このレクサスGS。一方で、後方まで引かれたルーフラインや歴代GS=アリストのそれを継承するウインドウグラフィックなどにより、サイドビューでは確かに独特の表情を醸しだすことに成功している。

さらに、ボリューム感タップリのボディ幅一杯にタイヤがレイアウトされたリアビューは、フロントマスクに対してややエネルギーが弱い感じの漂うA6はもとより、フロントライトのデザインを反復するかのようにテールレンズがサイドへと回り込み、筋肉質のボディ造形とあいまってすこぶる強い躍動感を発する5シリーズにも負けない力強さだ。

遠目で見た際のフロントビューの印象度にはちょっとばかりの弱さが感じられるが、特に走り去る姿を目で追うというシーンでは確かにライバルたちとは異なるアプローチによる「走りのセダン」というアピールに成功している。

動力性能で好印象のGSだがフットワークの個性は薄い
ドアを開き、ドライバーズシートへと滑り込む。この時点でのプレミアムセダンとしての印象度の強さは、A6に3車の中での長があるように感じられた。むろん、各部の仕上がりでは、それぞれのモデルが簡単には甲乙付け難い高度な出来栄えを競い合う。トリムや木目類の質感などはもとより、触感や開閉スピードなどもそれぞれが吟味された末に生まれてきたという印象だ。

ただし、ダッシュボード回りのデザインを目にすると、T字型の左右対象形を基本的としたGSのそれは「異軸のセダン」という割にはコンサバティブに過ぎる印象が拭えないし、ダッシュアッパー部がメータークラスターとモニタークラスターのふたこぶ状に造形されている5シリーズのそれも、機能が前面に出過ぎてあまりエモーショナルという感じではない。その点、逆L字型を基本モチーフとしたA6のダッシュボード回りのデザインには、奇をてらった印象はない一方でGSや5シリーズ以上の華やかさが感じられる。

注目の走りの実力比較では、各車はどのような戦いを繰り広げるだろう。まずはGS350に積まれる新開発の3.5L V6ユニットに火を入れて軽くアクセルペダルを踏み込む。と、なるほどその出足の加速感、3.5Lという排気量から想像する以上に力強いことに感心。もちろん、6速ATの制御の巧みさによるところも大きいが、すでにこの時点でこれまでのトヨタエンジンが発するテイストからは何かがひと皮剥けている印象だ。

「これならばMTとの組み合わせで乗ってもかなり良さそう……」とそんな感覚すら漂うのは、やはり複雑なツインインジェクター方式採用のメリットが現れていると受け取るべきか。いずれにしても、高回転にかけての優れたパワーの伸び感なども含め、「レクサスに積むにあたってはこの程度の実力は必要」とそんな意気込みすらを感じられるこの心臓に支えられて、全般になかなかの好印象を得たのがGS350の動力性能だ。

こうして、それなりに色濃いキャラクターを実感できる動力性能に対し、フットワークのテイストの方は多少影が薄い感じが否めない。「とくにこの点が気になる」といったネガティブな印象があるというわけではない。むしろどのようなシーンでもスタビリティ性能は高いし、ボディサイズや重量を勘案すればハンドリングの自在度もなかなかと評すべきであろう。

ただし、それでも走りを訴求するモデルとしては、ドライバーズシートから降りたその瞬間にたちまち忘却の彼方へと飛び去ってしまいそうな味の薄さというのは、見方によってはウイークポイントのひとつとも受け取れそう。端的に言えば「エンジンの個性に対してフットワークの個性が物足らない」、これがGS350の走りの特徴とも言えるのだ。

個性を強く主張するBMWと、レクサスとBMWの中間に位置するアウディ
一方、クランクケースにマグネシウムテクノロジーを採用した最新のエンジンを搭載するBMW 530iの動力性能も、相当な高得点を与えたくなるもの。500cc近い排気量の差もあってやはり全般のトルク感ではGS350に分があるが、絶対的な加速力はもちろん、サウンド等を含めたフィーリング面ではGS350用のV6ユニットに勝るとも劣らない実力をアピールするのが530iの積む直6ユニットだ。

GS350と大きく雰囲気の異なるのがフットワークのテイスト。ひとことで言えば全般的な印象がより引き締まり、路面とのコンタクト感をより濃密にドライバーへとフィードバックしていかにもBMW車らしいよりダイレクトな操縦感覚を味わわせてくれるのが、このモデルのフットワークテイストと言えるのだ。

もっとも、こうしていかにも自己主張性の強い走りの味付けは、必ずしも万人向けとは言い難いのもまた事実。日本仕様には標準装備のアクティブステアリングは「可変ギア比」の部分にはいずれ慣れてしまうとしても、常にフリクション感がかなり大きいことがフィーリングをスポイル。やはり標準装備のランフラットタイヤも、とくに低速時の振動吸収性を筆頭にバネ下重量の大きさ感など、どうしてもいくつかのマイナスの影響を及ぼしている印象が否めない。

ところで、今回のモデルにはさらにオプションアイテムとして、ヘッドアップディスプレイも装着。が、この投影位置は同種のアイテムを備える他車のように微調整が効かず、「ドライバー側が投影位置に合わせてアイポイントを決定する」といういわばクルマ優先の設計思想となっている。

また、相変わらず説明書ナシでは到底使いこなすことなど不可能なiDriveの操作ロジックなども含め、このあたりの「設計者の理想を顧客に押しつける」といった感覚は、レクサスブランドでは到底有り得ないクルマづくりの考え方だろう。

一方、A6というモデルの走りをごく大雑把に表現すれば、その個性と汎用性のレベルは、GS350と530iの中間に位置すると言えそうだ。

搭載エンジンの排気量も今回の3車中の中間となるが、最も大柄サイズのボディに4WDシステムを組み合わせることもあり、車両重量も最大のおよそ1.8トン。スロットル線形の意図的なチューニングによるものかスタートの瞬間は加速Gがグッと立ち上がるものの、逆にそれが災いしてその後の加速の伸び感は今ひとつ。

ノーズヘビー感のつきまとうハンドリングの感覚も含めて、率直なところ前述の絶対的な重さが走り全般にややマイナスの影響を及ぼしている印象を常に受けるのがこのモデルの走りのテイストだ。

ただし、そんな走りがあらゆる天候、あらゆる路面状況からの影響を受けにくいのはクワトロシステムの持ち主ならでは。例えば、耐ハイドロプレーン性などはそんな4WDの有利さに加えて例の重さもプラス側に働く。ヘビーウエット下の高速道路での安心感などは、やはりGS350や530iの敵ではない。

こうして、まさに三者三様という言葉がピタリとあてはまりそうなキャラクターの持ち主である今回の3モデル。その中にあってレクサスGS350というのは、やはり「これみよがしにでしゃばらない範囲の中で、舞台の陰から主人を支える」といった、いかにも日本的なもてなしの感覚をベースとしたクルマ作りを窺がわせる一台に仕立てられていることに気付く。そこでは「個性が薄い」、「味が足らない」といった言葉を浴びせられるであろうことは、おそらくすでに織り込み済みなのだ。それがレクサス流のプレミアムカー作りのスタンスなのだろう。(文:河村康彦/Motor Magazine 2005年11月号より)



レクサスGS350(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4830×1820×1425mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3456cc
●最高出力:315ps/6400rpm
●最大トルク:377Nm/4800rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:520万円(2005年当時)

BMW530i(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4855×1845×1470mm
●ホイールベース:2890mm
●車両重量:1650kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2996cc
●最高出力:258ps/6600rpm
●最大トルク:300Nm/2500-4000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:712万円(2005年当時

アウディA6 3.2FSIクワトロ(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4915×1855×1455mm
●ホイールベース:2845mm
●車両重量:1790kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3122cc
●最高出力:255ps/6500rpm
●最大トルク:330Nm/3250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:700万円(2005年当時)

[ アルバム : レクサスGS350 BMW530i アウディA6 3.2FSIクワトロ はオリジナルサイトでご覧ください ]

こんな記事も読まれています

軽自動車ってのが凄すぎる…! 世界に誇れる自動車と言えば[スズキ ジムニー]でしょ! 
軽自動車ってのが凄すぎる…! 世界に誇れる自動車と言えば[スズキ ジムニー]でしょ! 
ベストカーWeb
レッドブル&HRC密着:突貫工事でリヤウイングを修正。マシン性能を出し切っての予選5番手にフェルスタッペンも満足
レッドブル&HRC密着:突貫工事でリヤウイングを修正。マシン性能を出し切っての予選5番手にフェルスタッペンも満足
AUTOSPORT web
ポールのラッセル「壁に接触、望みが消えたかと思った」マシンの速さについては「理由が分からない」/F1第22戦
ポールのラッセル「壁に接触、望みが消えたかと思った」マシンの速さについては「理由が分からない」/F1第22戦
AUTOSPORT web
次期デリカD5はこうなってほしい!! 唯一無二の価値を持つSUVミニバンへの期待
次期デリカD5はこうなってほしい!! 唯一無二の価値を持つSUVミニバンへの期待
ベストカーWeb
フェルスタッペン予選5番手「ベガス用リヤウイングを作らないという方針がハンデに」タイトルには有利な位置を確保
フェルスタッペン予選5番手「ベガス用リヤウイングを作らないという方針がハンデに」タイトルには有利な位置を確保
AUTOSPORT web
佐藤万璃音、2025年もユナイテッド・オートスポーツからWEC世界耐久選手権にフル参戦
佐藤万璃音、2025年もユナイテッド・オートスポーツからWEC世界耐久選手権にフル参戦
AUTOSPORT web
やっぱたまらんなV型エンジン!! [スカイラインNISMO]とレクサス[IS500]の[パンチ力]にひれ伏した件
やっぱたまらんなV型エンジン!! [スカイラインNISMO]とレクサス[IS500]の[パンチ力]にひれ伏した件
ベストカーWeb
エバンスとの実質的な一騎打ちもタナクはトップ譲らず。ヌービルは7番手に挽回【ラリージャパン デイ3】
エバンスとの実質的な一騎打ちもタナクはトップ譲らず。ヌービルは7番手に挽回【ラリージャパン デイ3】
AUTOSPORT web
【角田裕毅F1第22戦展望】ファクトリーと現場の連携で活きたレッドブル製リヤサスペンション。改善の継続が7番手に繋がる
【角田裕毅F1第22戦展望】ファクトリーと現場の連携で活きたレッドブル製リヤサスペンション。改善の継続が7番手に繋がる
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
AUTOCAR JAPAN
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
AUTOSPORT web
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
ベストカーWeb
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
Auto Messe Web
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
AUTOSPORT web
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
AUTOSPORT web
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
AUTOSPORT web
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
AUTOSPORT web
胸を打つ「上質な走り」 アウディQ6 e-トロン・クワトロへ試乗 優秀なシャシーを味わえる388ps!
胸を打つ「上質な走り」 アウディQ6 e-トロン・クワトロへ試乗 優秀なシャシーを味わえる388ps!
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

15件
  • また現れるぞ、日本人のくせに欧州車かぶれのカスが。

    欧州車かぶれの腐った能書きは飽き飽きする
  • ちょうどこの時期友人と新車で クラウン 5 GSと揃えてたけど どこでも気にせずずかずか行けたクラウンGSに対して 故障が半端なく頻発した5って印象だった 
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

969.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

29.0300.0万円

中古車を検索
A6オールロードクワトロの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

969.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

29.0300.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村