初代同様に戦闘機をイメージした
2021年8月30日に2022年モデルとして正式発表されたNSXの最終限定車「タイプS」は、外観は前後バンパー、足元のホイール、ボディカラーの変更を行っている。デザインを担当した原 大氏にデザインのポイントについて聞いた。
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■新色のマットカラーについて
マットカラーは、開発の初期段階で水上(聡)LPL(ラージ・プロジェクト・リーダー=開発責任者)と、パフォーマンスの象徴となるカラーということで採用を決めました。マットカラーがくることがわかったうえで、デザインもスタイリングもしていったという感じです。色と形が一体となって開発していきました。
■マットカラーに最適なスタイリングになりましたか?
もちろん、マットカラー(カーボンマットグレーメタリック)1色だけではないので、どのカラーでも似合うのですが、象徴的なカラーとしてマットグレーの設定が決まっていたので、よりそれを引き立たせるようなシャープな形状であったりとか、戦闘機のような佇まいとか。そういったところを意識してスタイリングしました。
■イメージとしては戦闘機ですか?
そうですね。1990年に登場した初代NSXのスタイリングのモチーフが、F-16のジェットファイターだということを知っていました。ですので、初代のオマージュではありませんが、全体のシルエットや佇まいを、同じようにステルス戦闘機をモチーフにしています。ステルス機のようにより低く、地を這うように、高速で突き進んでいくような、そういったオーラみたいなものが感じられるようなスタイリングを目指しました。初代NSXとは全体のシルエットも大きく変わっていますが、より低さが強調されて、かつての面影に近づけられたらいいなと思ってデザインしました。
■空力をかなり意識しましたか?
直感的に開口が大きくなったというのも、もちろんあると思いますが、ぜひ実際に見ていただきたいのは、穴の中の形状までこだわって作った点です。ただ口を大きくして風がたくさん入ることだけじゃなくて、風がどう入っていくかとか、風の入り方、量のコントロール、向き、速さとか、そういったところまでスタイリングで最適化しています。
■風洞を使って空力を検証したのですか?
栃木県さくら市にあるスーパーGTやレーシング車両の開発時に使っている風洞に実際にクルマを持ち込みまして、レース部門出身の空力のエンジニアといっしょになって作った感じですね。(リヤバンパー下部の)ディフューザーのフィン1本1本の角度とか、そういったところも作り込みました。ただスタイリングのみを行って、それを最適化するというわけではなくて、もっとこうしたらどうかというのをお互いにディスカッションしながら、形を作っていきました。
■デザイナーとしてこだわった部分は?
私がすごくこだわったのはクルマ全体のシルエットです。具体的にいうと、従来型に対してノーズが延長されて、より低くなったのがかなり顕著に出ています。シルエットだけでも「タイプS」だとわかるような、速そうに見える佇まいです。サイドビューからフロントにかけての、全体に前に突き進んでいくようなシルエットの強さみたいなところに、注目していただければと思います。
今回、エンブレムの位置も従来型がボンネットフードにあったものを、ノーズの鼻先のバンパー側に移動しました。本当に何十mm単位でエンブレムの位置は下がっています。それに合わせてライセンスプレートの位置も下がっているので、パッと見てめちゃくちゃ低いなというのが直感的にわかっていただけると思います。ちなみに、エンブレムは装着する面が変わるので、海外仕様のアキュラエンブレムとともに、新しく作り直しています。そこまでやってでも、低さを表現したかったのです。
■タイプSへの思いが感じられますね。
開発をしていくなかで、「最終限定モデル」であることがわかると、みんな気持ちが1つになり、やりたいことを全部やろうと。私もやっていて、1人でも多くの方に刺さるような強いデザインにしたいなと思いました。みんなが一丸となって、悔いのないようにやりきろう。全部それが表現されている感じです。
〈文=ドライバーWeb編集部〉
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