日本のコンパクトカーは、「ボディサイズは小さいが、室内は広く、便利な機能がたくさん付いていて、さらに安い!」というように、あれこれ要素をてんこ盛りにしたモデルが多い。その反面、クルマ全体の完成度や質感、デザインなどは、欧州車が上回っている印象だった。
最近では、コンパクトカーにも最新のプラットフォームが採用されて、走りの質感が高まっていたり、ボディサイズも拡大されるようになってきた。それによって、これまでひと回り大きいセダンやワゴン、ハッチバックなどモデルに乗っていた人が、コンパクトカーへの乗り換えることも多くなったと聞く。
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そのような層に好まれるのは、とにかくコストパフォーマンスを重視した牛丼的なコンパクトカーよりも、欧州車などのように価格は少し高くてもじっくり味わえる上質なクルマなのではないだろうか。今回紹介する日産「ノート オーラ」は、まさにそういったユーザーの心を掴むモデルだと感じた。
文/伊藤 梓、写真/池之平昌信
【画像ギャラリー】オーラロードが開かれた!! 大人気のプレミアムコンパクト 日産 ノート オーラに試乗!!
■ノートからワンランクアップ! 高級感というオーラをまとったノート オーラ
日産 ノート オーラ。ノートをベースにデザインや質感を高め、ノートのワンランク上を目指したモデルだ
日産ノート オーラは、ノートをベースとしつつ、デザインや全体的な質感を高めることでノートからワンランクアップしたモデルだ。
まず、ひと目見て、ノーマルモデルとの違いがはっきりと分かるのはインテリア。ドアを開くと、車内はクルマというよりも家具をイメージさせる雰囲気になっている。
伊藤氏が特に気に入ったのがファブリックとこの木目。落ち着いた家具のようで車の中だということを忘れさせる
素材は、ファブリックと木目を基調としていて、とても居心地が良い。室内にいる限り、このクルマがノートだとは思えないほどだ。特に女性は、こういった柔らかい雰囲気のインテリアが好きな人は多いと思う。
エクステリアは、大きな変化がないように見えるが、ノーマルと見比べてみると、ヘッドライトが細くなってフルLED化されていたり、グリルのデザインがメッシュになっていたり、最近高級車ではトレンドになっている水平基調のリアランプの採用など、実は様々な細かい変化があることに気づく。
さらに、フェンダーが広がるような形状になったことで、ノーマルの5ナンバーに対し、オーラは3ナンバーとなった。
■細かな性能アップで所有する喜びを高めてくれる!
内装の質感も高い。液晶パネルもノートより大型のものが使われている
実物を見るまでは、「ノートの装備をちょちょいと変えた上級モデルなのだろうな」と思っていたが、自分の目で確かめてみると「オーラの商品企画をした人は天才かもしれない……」と思い始めた。
ベースのノートの良さを残しつつも、巧みに「これがオーラだ」と、ユーザーを納得させる要素が散りばめられている。
上質で大人っぽいデザインもそうだが、例えば、この3ナンバーサイズ化にも意図が感じられる。普通であれば、「5ナンバーサイズは取り回しやすい」という印象があるため、コンパクトカーがモデルチェンジして3ナンバーになっただけで「何事だ!」と批判されることがある。
その一方で、一般的には「3ナンバー=高級」というイメージも強い。オーラは、少しフェンダーが大きくなっただけで、取り回し自体はノーマルモデルとほぼ変わらないのは明白。
そのため、使い勝手はそのままに、この3ナンバーによって「ノートとは違います」「ちょっと良いクルマなんです」というオーナーの自尊心と所有欲を満たせる気がするのだ。
その他にも、モーターの出力は、ノーマルモデルに対して、20ps/20Nm増加した136ps/300Nmとなっている。試乗してみると、日常のシーンで使う分には、実はそこまでパワーアップしたようには感じない。
そもそもモーターは急激にトルクが出るようになっているので、思い切りアクセルペダルを踏み込むような比較をしない限り、加速感はそこまで変わらないのだろう。大切なのは、明確にパワーアップしていると数値で分かること。これも「良いものを買った」という納得感につながると思う。
さらに言えば、メーターの液晶パネルが7インチから12.3インチに拡大されていることもポイントだ。画面は高精細で綺麗だし、これまで高級車でしか見たことのないような大きさなので、新しいガジェットを手に入れたような嬉しさがある。
テレビやiPhoneなどと一緒で、画面が大きいというだけで、気持ちの上で「勝ってる」感が強い。
メーカーオプションの『BOSEパーソナルプラスサウンドシステム』。ヘッドレストにBOSE製スピーカーが内蔵される
これだけ上質さを感じさせてくれるオーラなら、「もっとオプションを盛りたい」というユーザーも多いはず。
そのひとつに、BOSEオーディオのオプションがある。ヘッドレストにスピーカーが内蔵されているので、運転席や助手席を開けた瞬間、そのスピーカーとBOSEのロゴが目に飛び込んで来る。これだけでも「良いもの感」のインパクト大だ。
ちなみにBOSEはセットオプションになっているので、単体では装着できず、運転支援機能のプロパイロットや純正のナビゲーションシステムなど、全てセットで付いてくることになる。これらがコミコミで、なんと約40万円の高額オプション!
これらのオプションを付けても、同様の装備を整えた欧州車よりも安いかもしれないが……それにしても高い。良いオプションが揃っているだけに、「それぞれ単体で装備できるなら、自分のライフスタイルに合わせてもっとオーラを自由にカスタマイズできるのに」と、ちょっと残念に思った。
■e-powerの滑らかさと力強さで運転を楽しめる
もちろん乗り味もアップ! e-powerらしい滑らかさと力強さで気持ちよく走れる
実際に運転してみると、日産のe-powerらしく、モーターの滑らかで力強い加速感が印象的だった。新型になり、ルノーと共通のCMF-Bプラットフォームを採用していることもあって、先代のノートと比べて飛躍的にスムーズに気持ちよく走らせられるようになっている。
e-powerは、モーター駆動なので電気自動車のような乗り味なのだが、クルマ全体のバランスが整っているので癖が少ない。これなら、電気自動車やe-powerに触れたことがない人でも、モーターでの新鮮な走行を楽しみつつ、不安なく運転できると思う。
ただ、少し気になったのは、乗り心地とエンジン音。サスペンションなどはノーマルと同様だが、タイヤサイズが1インチアップして17インチになった影響もあって、でこぼこした路面を走ると少し硬さを感じる。
また、モーターのみで走っている時にはとても快適だが、バッテリー充電のためにエンジンがかかると、途端にエンジンの唸る音が室内に入ってくる。インテリアが上質だからこそ、こういった騒音が余計に気になってしまうのかもしれない。
* * *
クルマを運転するのが好きな人は、「ノート オーラよりももっと運転しごたえのある欧州車が良い」と思うかもしれないが、運転の楽しさをそこまで追求しないのであれば、オーラは、生活を豊かにしてくれるコンパクトカーとして良い相棒になりそうだ。
上質なコンパクトカーを求めている人のツボを刺激する様々な要素に加えて、最新の安全装備や運転支援技術なども盛り込まれているので、その隙のなさに感服するばかり。正直、オーラは近年のモデルの中でも、万人に勧められるクルマの代表かもしれないと感じた。
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ストレートにあまりよくなかったでいいのでは?