メルセデス・ベンツの電気自動車EQシリーズのEQE350+に試乗してきた。そこには新しいエグゼクティブの世界観に触れる楽しさがあったのだ。
メルセデス・ベンツ EQE350+(AMGラインパッケージ装着車)メルセデス・ベンツが進めるEV化では、電気自動車専用のプラットフォームを使ったEQシリーズがあり、そのEQシリーズの「EQE350+」は、EVであることのメリットを最大限に活かしたクルマづくりをしており、新しい価値観を持っていた。
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今回試乗したルートは東京・品川を出発して静岡県の伊東市の少し先にある川奈ホテルまでの往復。おおよそ350kmの行程で、首都高速、東名高速、そして伊豆半島の海沿いを走るワインディングといったルートに4名乗車して試乗した。
FMヨコハマ「THE MOTOR WEEKLY」DJの山下麗奈さんと筆者EVでもっとも気になるのは航続距離だと思うが、スペックは624kmで90.6kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載している。実際の走行でも東京に戻った時点で40%の残量をやや切るレベルだったので、1.5往復は間違いなくできる航続距離だった。
つまり、1日で一気に500km以上をスペック通りに走れる性能であり、休憩時に急速充電をすればガソリン車と遜色ないレベルにまでの航続距離になっている。もちろん、急速充電のインフラ課題はあるが、現実に照らし合わせてみて、果たして急速充電が必要となるほどの距離を一気に走行する使い方をする人がどれほどいるのだろか。ちなみにバッテリーは10年もしくは25万kmの保証がされている。
さて、EV車であることのメリットは、デザインにも活かされている。真横から見たデザインは「ワン・ボウ」という弓のようなデザインだが、よく見れば、ショートノーズで前後のオーバーハングが小さい。これがメリットを活かしている証拠だ。
ボディカラーはMANUFAKTUR アルペングレー(オプション)ショートノーズによりキャブフォワードされ、室内を前方に引き伸ばすことができる。フロントウインドウはかなり前方に移動していることがわかると思う。その結果、室内は広くなるというメリットを生み、身長180cmのドライバーでも後席では足が組めるほど余裕の広さがあるというわけ。ボディサイズは全長4970mm、全幅1905mm、全高1495mm、ホイールベース3120mmでホイールベースの長さが際立つ。
さらにエンジンやミッション、マフラーがないためフロアにあるセンタートンネルが存在せず、フラットな床になる。足元はさらに広さを感じることができ、またセンターコンソールがダッシュボードへとつながるデザインだが、センターコンソールは宙に浮いたようなフローティングデザインにもなっている。これもセンタートンネルがないがために可能にしたデザインなのだ。
外観はワン・ボウデザインと相まって、継ぎ目のないシームレスデザインでツルッとしたエクステリアは新鮮さを感じさせる。これもメルセデスのデザイン言語である「Sensual Purity(官能的純粋)」の思想が反映されているものだ。ドアハンドルまでもがボディに埋め込まれ、走行中はフラットな状態になっている。駐車場でクルマに戻ると、自動でドアハンドルが浮き上がる仕組みだ。
じつはEV車になるとエンジン音がなくなるため、走行音が気になり始める。メルセデスでは、走行中の風切り音を徹底的に潰す技術を取り入れ、例えば、サイドウインドウのシールに特殊な防音材をしている。また、Aピラーとフロントウインドウの境目には特殊な形状のゴム製のトリムとしてノイズを低減しているのだ。
他にもパワートレインとなるモーターの開発でも、重きを置いているのがNVHということだ。モーター自体が発生するノイズを低減するために、ローター内の磁石の配置や巻線の形状なども、NVH を考慮した設計とし、ラバーマウントにして二重絶縁という配慮も行なっているのだ。
ブラックペイント19インチAMG5ツインスポークホイール試乗した350+のパワートレイン「eATS」をリア・アクスルに搭載し、出力/トルクは215kW(292ps)/565Nmで、永久磁石同期型モーターPSMとしている。
サスペンションはフロントが4リンク、リアがマルチリンクで、連続可変ダンピングシステムのADS+に、エアサスペンションのAIRMATICが標準装備されている。さらに、後輪が操舵するリア・アクスルステアリングも装備され、最大10度の舵角がある。
これらの組み合わせで乗り心地は快適そのもので、とくにワインディングでは横Gをあまり感じることがなく曲がっていくので疲れない。特に後席ではその威力をはっきりと感じられる。
これらのシャシー性能は60km/hまで逆位相で切れ、120km/hになると自動で車高が10mm下がる。さらに160km/hでもう10mm車高が下がり、安定性を増すという。逆に40km/h以下になれば+25mmとすることもでき、最適な走行姿勢が保てるというわけだ。
後輪操舵システムはステアリング舵角だけで制御しているのではなく、ブレーキとサスペンションと共に統合制御されている。そのためドライバーが感じる違和感は薄く、快適性が勝る仕上がりになっている。このあたりの制御技術もアクチュエーターやモーター駆動といった、電動化が裏側で活躍しているから達成した技術と言える。
実際、駐車場でもその恩恵を体験している。Cセグメントサイズのクルマでも入れにくく、切り返しが必須と感じる場所への駐車でも一発で駐車できる小回り性能を体験した。最小回転半径は4.9mと驚異的に小さいのだ。
もちろん、最新の安全装備、運転支援装備は言うまでもなくアップデートされており、特にADASのACCを起動させていなくても、ECOアシストモードでは自動で回生量が調整され、前車との車間距離が自動で維持さる。最終的には停止まで追従する機能まであるのだ。
これはコンフォートやスポーツモードでは機能せず、ECOアシストの場合のみ機能するので、非常に使い勝手がよい。というのは、トヨタでも同様の装備「PDA(プロアクティブ・ドライビング・アシスト)」があるのだが、モードに関係なく作動するので、危険と感じるしきい値に個人差があるため難しいと感じたことがあるからだ。そのあたりの人間研究というのか、使い勝手の研究ではさすがメルセデスだと唸らされる。
このように、エンジン音のない、静粛性の高い、そして広い空間を手に入れ、横Gを感じることもなく、高速移動では安定性を感じながら、快適な音楽とパヒュームの香り、そしてトンネルに入ると自動でドアトリム周辺のアンビエントライトでもてなされるインテリアには、時代の変化を感じさせられる。
デジタルとアナログの融合が見事であり、こうしたモデルが増えることで、徐々にEV車へのシフトができていくのだろうと感じる試乗だった。
試乗車価格(税込)
EQE350+:1248万円
AMGラインパッケージ:39万8000円、エクスクルーシブパッケージ:50万2000円、パノラミックスライディングルーフ:25万5000円、エナチャイジングパッケージ:11万5000円、有償ペイント:9万9000円
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みんなのコメント
デジタルとアナログの融合が見事
このほとんどが、高いお金を出してメルセデスを購入しなくても実現できるのが、BEVのいいところかもしれません。
エンジン車やエンジンを積むHVでは実現不可能なことが多いです。