世田谷のM2本社まで足を運ばなければ買えなかった
今でこそトヨタのGRシリーズや日産のNISMOシリーズのように、メーカーが自社の車両をベースにカスタマイズしたコンプリートカーを販売するというのも珍しくなくなってきている。その昔、道路運送車両法の規制緩和がなされる1995年以前は、改造車全般に対してまだまだディーラーからの風当たりは強かった。
なぜ「ロードスター」なのか? ドラテク鍛錬車で「いの一番」に名前が挙がるワケ
そんな時代の真っただ中であった1991年12月に、「M2」がリリースしたロードスターがベースの特別仕様車「M2 1001」は、300台の限定台数に対し、800件以上の応募が集まるほどの人気となっていた。 このロードスターを作り上げた「M2」とは、マツダの商品企画の実験工房として設立されたもので、“第2のマツダ”を意味していた。
ロードスターを硬派なライトウェイトスポーツに仕立て直した
当時は世田谷区に立てられたM2ビルを拠点としており、ここにはマツダの開発スタッフが常駐。来場者と直接コミュニケーションを取り、M2が手掛けた車両やプロトタイプモデルに実際に触れることができる貴重な場所となっていた。 そんなM2が手掛けたM2 1001は、M2の立ち上げと同時にリリースされた。スポーツドライビングを手軽に楽しめるロードスターを本格的で硬派なライトウェイトスポーツに仕立て直したもの。
1.6LのB6エンジンはハイカムやハイコンプピストンなどを採用して圧縮比を10.67まで高め(ノーマルは9.4)、ポート研磨を実施。排気系には4-2-1レイアウトのエキゾーストマニホールドやスポーツマフラーを採用し、専用ECUによって出力は130ps/15.1kg-m(ノーマルは120ps/14.0kg-m)まで高められていた。
LSDも本格的な機械式を採用
もちろんエンジンだけではなく、サスペンションも専用に開発されたものが備わっており、車高は10mmダウン。当時は前述したように改造の規制緩和前だったため、車検証上の全高もきちんと1225mmに低められていた。
ブッシュ類も純正よりも硬度の高いものが採用され、LSDも本格的な機械式を採用。さらにエアコン、パワステ、パワーウインドウといった快適装備はすべてオミットされるという、まさに走りに振ったモデルだったのである(さすがにエアコンはオプション設定されていたが)。
ただし、このM2 1001はガチガチの走りのモデルというキャラクターを持っていた一方で、トラディショナルな内外装を持つモデルという側面も持ち合わせていた。
当時の価格は340万円だった
ひと目でそれとわかる、大型フォグランプがビルトインされたフロントバンパーやアルミ製のフューエルリッド、パナスポーツ製の15インチ8スポークホイールを備えたエクステリア。センターコンソールを廃したコンペティショナルなインテリアには専用フルバケットシートが2脚奢られていた。
ほかにも英国車を思わせる専用メーターや削り出しのシフトノブ&サイドブレーキレバー、専用のドアパネルを採用する。極めつけはアルミ製のロールバーが備わる本格的なものとなっていたのである。
当時の価格は340万円とロードスターとして考えると高額となっていたが、手が加えられている部分のことを考えればむしろ安いとも言えるもの。当時は、予約受付は世田谷のM2本社まで足を運ばなければならなかったが、納車はディーラーでも可能であった。予約が殺到したのも納得できる内容となっていたのだ。
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