フィアットは2020年3月4日、FCAグループ初の電気自動車となった新型「500」を発表した。新型「500」は愛すべきキャラクターとして確立されたデザイン・テイストを引き継ぎながらも、より広い室内スペース、先進の技術を搭載し、フィアットとして、さらにAセグメントとして初となる電気駆動を実現している。
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持続可能性を追求するブランドとして登場
新型フィアット500は、FCAグループとしても初の革新的なゼロエミッションの電気自動車となるが、この500を開発するにあたり、フィアット・ブランドとしてこれまでの人気の秘密を探ることからスタートしたという。
1960年代に登場した第1世代で愛されるブランドとなり、フィアットのアイコンとなった。2007年にデビューした第2世代は、レトロ・モダンのコンセプトのもと、イタリアン・スタイルを採り入れたクールで魅力的なシティカーとして高い評価を得た。そして13年間にわたって進化を続け、30種類を超える限定モデルも販売された。
今回発表されたフィアット500は第3世代となり、持続可能なモビリティ=EV、運転支援システムやコネクテッド機能など、最新の技術トレンドを備え、なおかつ卓越したデザインとドライビング・プレジャーを兼ね備えた最先端のAセグメントカーとして実現している。
この新型500の開発プロジェクトには、環境活動家としても知られる俳優のレオナルド・デカプリオも支持しており、この新しいシティEVのビジョンに対し、「誰もが自分で可能な貢献のことを考える時に来ている」というメッセージを送っている。
またデカプリオだけではなく、新型フィアット500の追求するビジョンに対してジョルジオ・アルマーニ、ブルガリ、カルテルという「メイド・イン・イタリア」の世界的なアイコン企業も共感し、フィアット・ブランドと協力し、新型フィアット500をベースにした、ユニークで豪華な3種類の「ワンオフカー」が実現。3社それぞれの価値とニューモデルを組み合わせ、スタイル、創造力、クラフトマンシップに溢れるユニークなモデルが生まれている。
もはや芸術作品ともいえる3台のワンオフカーは、持続可能な素材、天然の素材、リサイクル素材を活用するという取り組みによって誕生。この3台のユニークなモデル、「500 ジョルジオ・アルマーニ」、ブルガリの手掛けた「B.500マイトロッポ」、「500カルテル」はチャリティーオークションにかけられ、その収益はデカプリオが設立した地球環境と生物の多様性を守るべくNPOに寄付される。
実用性の高いシティEV
電気自動車としての開発にあたり、フィアットは航続距離、充電、ドライビング・プレジャーを追求し、最高のソリューションを実現すべくゼロからスタートを切っている。
電気自動車のユーザーにとって、航続距離と充電時間は重要な問題だ。そのため42kWhの容量を持つリチウムイオンバッテリーを搭載し、日常で使用するのに十分な航続距離、すなわちWLTPモードで最大320kmを実現している。
一方で、動力性能はモーター出力87kW(118ps)、最高時速は150km/h(電子リミッター作動)、0-100km/h加速は9.0秒、0-50km/h加速は3.1秒となっている。
また充電では85kWの急速充電システムに対応しており、きわめて短時間で充電が可能だ。例えば、日常の足としては十分な50kmを走行するために必要な電力は、わずか5分間で充電可能だ。また35分間でバッテリー容量の80%まで充電できる。急速充電器への接続は、車体の右側後部パネルに設置されたコンボ2ソケットを使用し、AC(交流)およびDC(直流)のいずれにも対応する。
家庭における充電装置として、またヨーロッパ市場向けの新型500のローンチエディションには、家庭用固定チャージングシステム「イージーウォールボックス」が付属している。
このシステムは、500の発売に合わせ、ヨーロッパでMOPAR(FCAのパーツ・アクセサリー部門)が販売する。これはBluetooth経由で管理できるシンプルでアクセスが簡単な 家庭充電で、最大3kWで充電することにより家庭のエネルギー負荷を安定させることができる。
この「イージーウォールボックス」は最高7.4kWまでアップグレードが可能で、その場合は約6時間でフル充電が可能になる。もちろん公共充電ステーションを利用するためのケーブルも付属している。
新型フィアット500は、3種類のドライビングモードを備えており、ドライバーの好みに合わせて「Normal(ノーマル)」、「Range(レンジ)」、「Sherpa(シェルパ)」を選択できる。「Sherpa(シェルパ)」は、目的地に確実に到達できるように電力消費量を最適化するモードだ。このモードでは車両コンポーネントの各種の電力消費量を最小限に抑え、ナビゲーションシステムで設定した目的地、最も近い充電ステーションへ確実に到達できるよう制御するモードで、最高速は80km/hに抑制される。
「Range(レンジ)」はワンペダルドライブが可能だ。このモードでは、ほぼアクセルペダルの操作だけでフィアット500を走らせることができる。アクセルオフの回生ブレーキで通常の内燃エンジンが生み出すエンジンブレーキよりもはるかに強力な制動力を発生する。クルマを完全に停止させるためにはブレーキペダルの使用が必要だが、日常生活ではアクセルペダルだけで走行することができる。
デザインとパッケージ
新型フィアット500は未来のモビリティをイタリア的な解釈で表現し、先行する2世代が残したレガシーを巧みに融合。先代と同様のプロポーションとクリーンなデザインを備えたアイコン的シティカーであり、時代を象徴するデザインとしている。
クラシックでありながら、クールでもあり、63年の歴史を感じさせる。クリーンなラインと先代から一貫するデザイン言語を追求し、シャープで最先端を感じさせ、コンパクト、しなやかでエレガントな形状と、シャシーに対して均整の取れたプロポーションを生み出している。
フロントでは、従来のフィアット・ロゴに替わってセンターに設置された新しい「500」ロゴが採用されている。電動化したことでライトブルーの縁飾り、遊び心のあるデザインとカラーを使用することで、最後の「0」を「E」にも見えるようにデザインしている。
もちろんこの第3世代でも、笑顔のように見え、屈託のなさを表現するフロントマスクも踏襲されている。
この新型は新しいプラットフォームが採用され、信じられないほどの存在感を生み出している。全長が3630mm、全幅が1690mmで、それぞれ60mm拡大され、全高は40mm高い1530mmとなっている。またホイールベースも20mm延長され2500mmとなっている。
ホイールはより大径になり、全長は4m未満にも関わらず、より力強い個性と優れた快適性が実現している。インテリアは、キャビン内のさまざまな機能を効率的にレイアウトしながら、端正なシンプルさ、各要素の美しさ、視覚的な明快さを表現し、全体としてエレガントさを増している。
ショルダールームやレッグスペースは拡大され、フラットなボトムを持つ車体は、リチウムイオンバッテリーを搭載しているにもかかわらずラゲッジ容量に影響はなく、先代モデルと同じ容量を確保。考え抜かれ、クリーンさを増したインテリアは、ボタンの数はより少なくなり、シャープで調和の取れたラインが、このクルマの新しさ、持続可能性を表現している。
シートには、海洋から回収したプラスチック素材をリサイクルして作った生地、上級仕様では本革ではなくエコレザーを使用している。
Aセグメントで抜群の先進装備
新型フィアット500は電気駆動のシティカーというだけではなく、セグメントで初めてとなる、最新のレベル2の高度運転支援システムを搭載している。高精度フロント・カメラと超音波センサーにより車両の全周を監視し、インテリジェント・アダプティブ・クルーズコントロール(iACC)は、検出されたクルマ、自転車、歩行者などに対応し、自動的にアクセルやブレーキを操作。レーンセンタリングは、道路の車線を検出できる場合、クルマの位置をレーンの中央を維持するようステアリングをアシストする。
インテリジェント・スピードアシストは道路標識の速度制限を検出して、それに従うことをドライバーに推奨。アーバン・ブラインドスポットは、超音波センサーを活用して死角を監視し、障害物を検出した場合はウイングミラーに設置された三角形の警告灯を点灯させる。
アテンション・アシストは、長時間走行時にはドライバーに休憩を取るように警告する。また360度モニターにより、車庫入れ時や複数の切り返しが必要な場面において、バードビューの画面表示を行ない、障害物を避けることができるなど、このセグメントの常識を破っている。
また新型フィアット500は、最新の接続プラットフォームである「Uコネクト5」インフォテインメントシステムを搭載する。このインフォテイメント・システムは、使いやすく簡単で直感的で、幅広いカスタマイゼーションを実現するAndroid オート・オペレーティングシステムを採用する。
車両機能やアプリの表示方法はウィジェット経由で調整できる。Apple CarPlayもワイヤレス接続でき、Android Auto向けにも同様の機能を提供する。つまりユーザーのスマートフォンとシームレスに連携し、アプリのコンテンツはクルマのダッシュボードが描くラインに違和感なくマッチする10.25インチ高解像度タッチスクリーンに表示される。
またUコネクト5は、通信モジュールと組み合わせることでエマージェンシーeコール機能など革新的な接続サービスを提供できる。
コネクト・サービスは次のような内容だ。
故障の際にアシスタントに連絡して支援を要請し、問題解決をサポート。ドライバーにeメールでレポートを送付する「マイ・アシスタント」。
スマートフォンを経由してバッテリー充電レベルの確認、より低コストで充電できる時間帯の設定、クルマの正確な場所の把握、ドアのロックやロック解除、照明のオン・オフ切り替え、エアコンディショナーシステムのプログラムなどを行なう「マイ・リモート」。
タイヤ空気圧から定期点検スケジュールまで、さまざまなパラメーターを確認して、車両のコンディションをチェックできる「マイ・カー」。
モバイルアプリ経由で、クルマのナビゲーションシステムに目的地情報を送り、ルートを探し、渋滞の状態や目的地の天候を確認することができ、さらに現在のバッテリー充電レベルに基づいて到達可能なポイントを地図上で検索。近くにある充電ステーションを表示することもできる「マイ・ナビゲーション」。
車内で最大8台のデバイスをインターネットに接続することができ、業界リーダーであるAmazon Alexaの音声アシスタンスも使用できる「マイWi-Fi」。
自動車が盗難された場合、ユーザーに通知し、警察が盗難を確認した場合、カスタマーセーフティアシスタンスが、クルマを回収するためのサポートを提供する「マイ・セフト・アシスタンス」。
また新型フィアット500のローンチエディションには、音声認識機能を備えた自然会話インターフェイス・システムも搭載されており、パラメーターの調整、空調、音楽の選定などは、クルマに話しかけるだけで操作することができる。
甘い生活
新型フィアット500はコンバーチブル・バージョンとしてデビューするが、これはゼロエミッションのオープンエア4シーターとして世界初となる。
このシティカーに後日採用されるユニークな機能がある。それはアコースティック・ビークルアラートシステム(AVAS)という名称が与えられ、20km/h以下の速度において歩行者保護のために搭載が義務つけられている警告システムだが、そのサウンドはただの音声信号ではなく、ニーノ・ロータが映画「フェリーニのアマルコルド」のために作った曲が採用され、まさに甘い生活のスタイル、イタリアの創造性を演出するのだ。
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