名車と迷車、ヒット作と失敗作、この差は紙一重だ。開発者と経営者は誰でもヒットすることを祈っている。
が、最高、一番へのこだわりが強すぎたり、開発の途中で潮目が変わったり、出たタイミングが悪くて時流に乗れなかった不運のクルマも少なくない。昭和から平成にかけての数年間、日本にはバブル景気が到来した。
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販売が伸びていたこともあり、経営者も開発陣も気が大きくなり、それまでは通らなかった大胆な企画にまでゴーサインが出されている。当然、失敗作の烙印を押される意欲的な作品も生み出された。
バブル景気が収束した後も自動車は花形産業だったが、バブルの感覚を引きずったり、時代を読み違えた経営陣も少なくない。
また、21世紀は地球に優しいクルマ、燃費のいいクルマが最良と考え、多くのメーカーがクリーンなクルマの開発に着手している。が、理論と意欲が空回りし、市販車に大切なバランス感管を欠いたクルマも生み出された。
その多くは失敗作の烙印を押されている。そこで頑張りすぎが仇となった迷車を5台選んでみた。
文:片岡英明/写真:ベストカー編集部、TOYOTA、HONDA
コンパクト=短さを追求したトヨタiQ
トヨタiQは、鳴り物入りで登場した新世代のマイクロコンパクトカーだ。全長は軽自動車より短い3000mm、背は立体駐車場も使える1500mmとしている。
が、全幅は1680mmと、小型車枠をいっぱいに使った。エンジンとデフの位置を反転させ、前輪をエンジン前方にレイアウトしたため、キャビンは思いのほか広い。
涙ぐましい努力の結果、前席は広く、大柄な人でも最適なドライビングポジションを取ることができた。また、後席には大人と子どもが座るスペースを確保した。
革新的なパッケージングにより、ミニマムサイズで4人乗りを実現している。このことに驚かされたし、走りの実力もなかなかのレベルに達していた。が、日本でもヨーロッパでも小さいことによる価値を見出せなかったため、販売は低迷している。
特に日本にはできのいい軽自動車がたくさんある。しかもタントの登場以降、キャビンの広いクルマが販売の主役になっていた。iQは話題をまいたが、130万円からのスタート価格で、主力グレードは150万円を超えていたから、多くの人は見向きもしなかったのである。
リアシート広さを追求したトヨタアバロン(初代)
アバロンはアメリカのトヨタテクニカルセンターが開発し、トヨタモーター・マニュファクチャリングが製造した4ドアセダンだ。1995年春に日本に導入され、発売時は大きな話題となった。
当時のウィンダムより大きいFF最高級セダンで、今見ると納得のサイズだが、デビュー時は大柄に感じられたものである。しかもFF方式だからキャビンもセルシオを凌ぐほど広い。
また、快適装備だけでなく、安全装備も世界トップレベルにあった。
後席はVIPカーと呼べるほど快適で、頭上だけでなく足元も広々としている。3点式シートベルトも5名分が標準だ。センターアームレストも大きいから二人がけでのドライブは快適だった。
エンジンは3.0LのV型6気筒ハイメカツインカムだから余裕があり、快適性も群を抜く。だが、アメリカのトヨタの意気込みとは裏腹に、販売は今一歩にとどまっている。トヨタではセルシオとクラウンが依然として主役だったのだ。
アバロンは無名の新規ブランドだったし、FF方式のビッグセダンだったからユーザーも戸惑った。また、アメリカ車は品質面で日本車に及ばない、という先入観も客足を鈍らせている。
5年後の2000年に後継のプロナードにバトンを託し、日本市場から消えていった。
軽さと空力をストイックに追求したホンダインサイト(初代)
オデッセイに代表されるクリエイティブムーバーの成功によって息を吹き返したホンダは、1990年台後半に反撃に出る。特に力を入れたのは環境性能の追求だ。1997年にリース販売の形でEVプラスを送り出した。
これに続く第2弾が量産ハイブリッド車のインサイトである。プリウスに先を越されたが、1999年11月に個性派2シーター・ハッチバッククーペのインサイトを市場に送り出した。
注目したいのは、燃費向上のためにパワートレインだけでなくボディ設計にも並々ならぬ力を注いだことである。NSXと同じように押し出し材を中心としたフレームを採用し、ボンネットやドア、ルーフなどのボディも軽量なアルミ製だ。
また、リアフェンダーにスパッツを被せるなど、空力性能にも徹底してこだわった。空気抵抗係数は当時の量産車としては驚異的なCd=0.25。1Lの3気筒エンジンと薄型ブラシレスDCモーターの効率もよかったから、10.15モード燃費は当時としては世界最高の35.0km/Lをマークしている。
採算を度外視して軽量化と燃費向上に挑んだハイブリッド車の傑作だった。が、個性の強すぎるデザインと実用性の低さが災いしてか、販売は伸び悩んだ。
そのため2代目は5人乗りのセダンとして設計されたが、平成が終わろうとしている今、ホンダ設計陣の心意気を感じるのは初代インサイトである。
シャープなハンドリングを追求したマツダAZ-1
1990年春、軽自動車は排気量を660ccに拡大し、ボディサイズもひと回り大きくした。この時期はバブル期の真っ只中だったから、企画されたクルマは高性能だし、デザインもコンセプトも跳んでいる。
特にスポーツモデルは個性を競い合った。その筆頭にあげられるのが、92年にマツダが発売した過激な軽スポーツカー、AZ-1だ。
ロードスター、コスモ、RX-7(FD3S)と、矢継ぎ早にスポーツモデルを送り出したマツダは、軽自動車にミッドシップのスポーツカーを企画し、市場に放ったのである。
スケルトン・モノコックフレームにスズキ製のパワフルなF6A型3気筒DOHCターボを搭載し、サスペンションは4輪ともストラットとした。ドアはスーパーカーのように開閉するガルウイングドアを採用する。
AZ-1はレーシングカーに近いシャープなハンドリングのマイクロスポーツだ。人馬一体の痛快な走りを存分に楽しめた。
だが、ピーキーな操縦性も顔を覗かせ、ドライバーを選んだのである。当然、ワインディングロードでホットに攻めると手に汗握るドライビングを強いられ、時にはスピンすることもあった。
タイヤが前後で異なるサイズを採用していたなら怖い思いをしなくてすんだはずである。開発陣は頑張りすぎて足元が見えなかったのだろう。
背の高さ=快適性を追求したダイハツウェイク
ウェイクはタントをベースに開発され、2014年11月に発売されたダイハツ初のスーパートールワゴンだ。軽自動車は全長と全幅が決まっているから、より広いキャビンスペースを生み出すには全高を高くするしかない。
そこでウェイクは、背をアトレーワゴン並みの1835mmまで引き上げた。フロントウィンドウを遠くに持っていっているし、面も思い切り立てたのでキャビンは軽自動車とは思えないくらい広い。
見晴らしのいい前席だけでなく、後席の足元と頭上も群を抜く広さを誇っている。テレビCMで自慢したように、荷室も驚くほどの広さだ。
開発陣は自信満々ウェイクを送り出した。が、フタを開けてみると販売は低迷したのである。飽きるほどテレビCMを打ったが、カンフル剤にはならなかった。多くの人はNボックスやタント、スペーシアなど、全高が1800mm未満のトールワゴンを選び、乗り換えは進まなかった。
理論的には背の高いほうがキャビンは広く、買い得に感じる。しかし、背が高いと横風にあおられやすいし、コーナリングでの挙動も不安定になりやすい。既存のトールワゴンでも充分に広いし、使い勝手がいいから多くの人はウェイクになびかなかったのだろう。
★ ★ ★
こうして「やりすぎたクルマ」たちを見てみると、どれも広範な支持こそ得られなかったものの、一部のニーズにはしっかりと応えており、なにより日本の自動車史を彩って強烈な足跡を残したクルマたちだということがわかる。
近年こうした個性的で尖ったクルマを見かける機会が減ったのは、日本の自動車市場全体が痩せてしまってきたからなのかもしれない。そう考えると少し寂しいし、メーカーの皆さんには、(「クルマの楽しさ」を広める意味でも)やや無理をしてでも「やりすぎ」を続けてほしい。
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