DSオートモビルのキーパーソンとなる、バステァン・シュップ氏とベトリアス・フシェCEOのふたりが来日、本誌は単独インタビューの機会を得た。時間の許されるかぎり、DSブランドの現状や今後の予定などを聞いた。(聞き手:千葉知充 Motor Magazine編集長/Motor Magazine2023年2月号より)
新ブランディング方針「French art of TRAVEL」とは?
千葉知充 来日の目的は何ですか。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
バスティアン・シュップ氏(以下シュップ) 貴方のインタビューのためですよ(笑)。日本のDSチームとマーケティングプランを話し合いにきました。さらに日本のお客様と会う機会もあって有意義な時間を過ごせました。
ベアトリス・フシェCEO(以下フシェCEO) 日本チームのみなさんと一緒に対面で話をすることで、私たちがどういったサポートができるかなどを考えることです。渡航が解禁されて、重要な国を訊ねていますが、日本は重要な国ですからやってきました。
千葉 日本市場はどう見えますか。
シュップ DSは日本に適応しています。日本の人たちはとてもフランスに興味があり、フランスのラグジュアリーが好きです。また日本は洗練されていて、たとえば着こなしや細かいところへの気配りなどです。そうしたところに目が行く人たちは、DSの持つ匠の技に気が付いてもらえます。
フシェCEO コロナ禍の数年間で日本の行動や趣味、仕事の仕方など変わりましたか?とチームに聞いてみました。すると日本の社会も変わっているという答えが返ってきました。それは私たちにはすぐにわかるものはありませんから、DSがどういったものをお客様にもたらすべきなのかなどを話し、継続的にお客様の期待に応えられるようにしたいのです。
千葉 新しいブランディング方針「French art of TRAVEL」ですが、これはどのようなことですか。
シュップ これにはふたつの柱があります。ひとつはプロダクトで、静粛性や快適性、マテリアル、クラフトマンシップなどです。そしてもうひとつがエクスペリエンスです。若い世代のお客様はエクスペリエンスに注目している人が多く、そのためトラベル部分を構築するためテストしています。
千葉 文字どおりフランス芸術に触れるということなのですか。
シュップ はい、フランスにリンクしています。普通のものではなく、フレンチのラグジュアリーブランドとして特別なエクスペリエンスです。たとえばデザイナーとコラボレーションしてアトリエを訪れるなどですが、フランスらしさは、つねに意識しています。
進む電動化の先駆けとして「プレミアムな未来」を拓く
千葉 ステランティスグループ内でDSの電動化が進んでいます。
フシェCEO 電動化は、早くから手掛けています。14年のDSブランドを立ち上げ時から電動化を決めています。我々は、ステランティスグループの中では電動化のパイオニアです。すでに製品の50%がPHEVやBEVですが、24年からはBEVだけになります。さらに24年には2車種の新型車が出ますが、これもBEVです。専用プラットフォームを採用し、航続距離も700kmとなります。
千葉 空いている数字の1や2や5や6というモデルが登場する可能性はあるのでしょうか。
フシェCEO おっしゃるとおりまだ空いている数字がありますね。ただまずは現行モデルが優先です。23年にDS7、そしてDS3の新型を投入します。そして24 年にはDS44をBEV化し、さらに新しいモデルも追加するので、おっしゃっている番号が埋まっていくことになりますね。すべて電動化されますが、どのモデルでもドライビングエクスぺエリエンスは提供していきます。
千葉 現在、課題はありますか。
シュップ まずは電動化です。ただしこれは我々にはチャンスです。DSは早くから電動化しているブランドですし、世界で2回、フォーミュラeのチャンピオンにもなっています。そしてサスティナビリティです。グループもカーボンニュートラルに取り組み、38年までにカーボンニュートラルになると表明しています。
フシェCEO 38年までにカーボンニュートラルになるのはグローバルな課題ですが、これは重要な達成すべきことです。だからこそ1000%電動化であり、素材も注意深くリサイクル素材などを選ぶようにしています。そしてダブルチャレンジとしてDSのユニークさやブランドのポジショニングを固めることにも注力しています。
千葉 グループ内でDSはどのような役割を担っていますか。
シュップ プレミアムな未来を作っていくという役割があります。イタリアンスポーツカーのアルファロメオ、イタリアンクラシックエレガンスのランチア、フレンチアートオブトラベルのDSという3つのブランドがそれぞれを補完できるようにしています。
フシェCEO グループには多くのブランドがあり、それぞれのポジションを明確するのは大きなチャレンジです。同時に共通の開発ができるので新しい技術をタイムリーに投入できるというメリットがあります。一定レベルの自由があってブランドを構築できるのはとても幸運なことです。
(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:伊藤嘉啓、DS オートモビル)
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