全日本ラリー選手権や世界ラリー選手権などで活躍する日本を代表するラリースト 新井敏弘選手によって、いま最も「旬」なクルマたちを徹底比較してもらう試乗企画。今回は最新SUVの5台が出揃った!
・三菱 エクリプスクロス
【緊急情報入電!!】アクセラ後継 新型マツダ3 来月予約開始!!
・スズキ ジムニー
・マツダ CX-5
・ホンダ CR-V
・スバル フォレスター
20年ぶりのモデルチェンジで新型になったジムニーの雪上走破性能には大いに期待が寄せられるが、実際どんなもんなのか!? ホンダi-MMDハイブリッド初の4WDとなった新型CR-Vのスノー性能は!? 新型になったフォレスターや、新たに2.5Lガソリンターボエンジンを搭載したCX-5の雪上走破性能も気になる! エクリプスクロスの4WDは評判がいいけれど、雪道を走って他車と比べたらどうなのか!?
4WDの性能を試すにはうってつけの雪道で、加速タイム、制動距離、スラローム&ハンドリングはもちろん、雪上&一般道での燃費性能もテスト! また今回はエントリーが叶わなかったノートe-POWERについても最下段に掲載。合わせてお楽しみください!
※本稿は2019年1月のものです
文:ベストカー編集部/撮影:池之平昌信、西尾タクト
初出:『ベストカー』 2019年2月10日号
■[TEST01] 0 → 50m加速タイム
1.5Lターボと、CR-VやCX-5と比べてトルクもパワーも低いエクリプスクロスが5秒35のベストタイム。
「エクリプスクロスはS-AWCをスノーモードにして発進すると、スタートの瞬間から4輪にしっかりと駆動力が配分され、後輪が押し出すようにクルマが前に出て行く。1.5Lターボのトルクは、2.5LターボのCX-5と比べると非力だけど、雪上のスタートでは功を奏して、絶妙なトラクションを発揮。
CX-5では微妙なアクセルワークでトラクションを引き出したけど、エクリプスクロスはガバッとアクセルを踏み込んでもしっかりと雪面を捉えてグイグイ加速した」と新井選手は分析。
「CR-Vのモータートルクはもの凄いね! 出だしから30km/hあたりまでの加速感は圧倒的。以前テストしたCX-5のディーゼルターボよりも力強い。
フォレスターはちょっと走るとあっという間にモーター用バッテリーが減ってしまってアシストが効かなくなり、スタートの瞬間のトルクがもの足りない印象。ジムニーは圧倒的なトラクションでグイグイ行くんだけど、いかんせんトルクがもの足りないのが残念」と。
■[TEST02] 50km/hからの制動距離テスト
クルマを走らせる場合、特に滑りやすい雪道では発進加速よりも大切なのが制動性能だ。なにしろ「止まらない」のは事故に直結する。しっかりと止まれてこそ、雪道を安全に、楽しく走ることができるというものだ。
「一般的には軽いほうが制動には有利とされていますが、雪道では必ずしも軽ければいい、というものではありません」と新井選手は言う。
「ある程度の車重があることでタイヤに荷重がかかり、しっかりと雪面に食い込むようにグリップ力を発揮することができます。前後の重量配分も大切で、フロントばかりに荷重がかかってしまうとリアタイヤのグリップ力を活かすことができず、フロントの2輪だけで制動力を負担することになってしまう。
そうなると当然、制動距離は伸びてしまう。フォレスターは後輪もしっかりと接地していて挙動が安定しています」と解説。
「また、タイヤは幅広化による横長の接地面よりも、大径、つまり円周が大きいタイヤによる縦長の接地面のほうがブレーキングでは有利です。総じてSUVのタイヤは大径なので、ブレーキンググリップは出しやすいのです」と言う。
ジムニーはスッと停止した印象。テストシーンを外から見ていても、特に挙動を乱すことはなく、ABSが激しく介入しているようにも見えなかった。CX-5もABSの介入が適度で、スッと減速していく感覚だったと新井選手は評価した。
■[TEST03] スラローム&ハンドリングテスト
圧倒的に速かったのがジムニー。13秒15は2番手だったCX-5の13秒24を0.8秒上回り、CR-Vと比べれば1秒以上速い。
「車体がコンパクトだから、間隔が狭く、タイトに切り返す今回のスラロームでは圧倒的に走りやすかった。また、今回のジムニーはMTなのでアクセル操作に対する機敏な駆動力の反応も得られ、姿勢制御がしやすかった。
軽ターボのトルク不足は、半クラでエンジン回転を高めてカバー。曲がりのきっかけにサイドブレーキを使ったり、ドライバーがいろいろと“介入”できる。ただ、トラクションコントロールをオフにしているにもかかわらず、20km/h程度になると自動的にオンになってしまい、ちょっとストレスがたまります」と評価。
「フォレスターは前後の重量配分に優れ、雪道での姿勢変化の少なさなどポテンシャルの高さは感じるものの、テスト走行的な走り方をすると、あっという間にハイブリッド用バッテリーを使い切ってしまい、モーターアシストが効かなくなってしまう。
一般道ならば減速時の回生で充電が間に合いますが、頻繁に加速すると充電が間に合わない。そうなるとただの2L NAのトルクになってしまい、アクセルオンオフによる切り返しのテンポや、姿勢作りに機敏な反応が得られないため、タイムもイマイチ上がりませんでした」とのこと。
「CR-Vのモーター走行はダイレクトにトルクがドンと立ち上がるので、大きく重たい車体にもかかわらず、アクセルワークで姿勢のコントロールがしやすく運転していて楽しい。
ただ、車体が大きく、狭いパイロン間隔でちょっと苦戦。その点CX-5やエクリプスクロスは軽さもあって機敏な走りができたのが印象的。CX-5の2.5Lガソリンターボはトルクもありアクセル操作で積極的に姿勢を制御でき、楽しく走れます」。
雪道での走りが特に楽しくタイムもよかったのがエクリプスクロス。
「S-AWCをスノーモードにすると後輪にも積極的にトルク配分をするのがよくわかり、アクセルオンでテールを振り出すような姿勢を作りやすい。挙動コントロールを積極的に行いたいドライバーにはいいと思います。一方、オートモードは挙動が穏やかで雪道初心者でも安心して走れるし、必要な時にはしっかりと後輪にトラクションがかかるので安定して速い。よくできていると感じました」と高い評価となった。
[総括!]最新SUVの4WD性能、どれが優れている!?
総評を新井選手にまとめていただこう。
* * *
ジムニーは1台手元にあったら楽しい! 本格派クロカンを目指しているだけあって、新雪が降り積もった山道でもグイグイと入り込んでいける。ただ、これ1台でロングドライブまでこなせるかというと、やはりちょっと厳しい。
ほかのミドルサイズSUV4台はというと、エクリプスクロスのS-AWCのチューニングにランエボ開発陣の魂を感じた。つまり、最近主流となった「安定志向」に終始するのではなく、積極的にクルマを動かしてドライバーにコントロールする余地を残す、という駆動力配分が絶妙なのだ。
ある程度クルマの挙動を意図してコントロールできるドライバーにとっては『SNOWモード』でグイグイ走らせるのはとても楽しい。一方『AUTOモード』では安定した走りが可能である。CX-5の2.5Lターボはトルクが大きく、アクセルワークで姿勢制御ができるが、基本的には安定志向の4WDチューニング。
フォレスターはハイブリッドの電力不足。一般道でモーターアシストが効く状態では、もっと機敏にアクセルワークに対して車体が反応してくれる。その点、CR-Vハイブリッドのモーターはダイレクトに大トルクが得られ楽しい。実走行燃費にも優れているのでトータル性能は高いと思う。
【番外コラム・気になるクルマTEST!】 ノートe-POWER 4WDの実力は!?
ノートe-POWERに4WDモデルが追加となった。インパネに2WD/4WD切り替えスイッチがあり、4WDにしておけば発進時には4.8ps/1.5kgmの後輪駆動用モーターがアクセルオンとともに作動し、雪道などの滑りやすい路面でも安定した発進が可能となる。さて新井選手のインプレは!?
「あくまでも街中での雪道などでの走りやすさのための4WD。スタートの一瞬は後輪が駆動することでスッとクルマが出ていきますが、ある程度速度が出てしまうと後輪用モーターは駆動力を出すことなくFF状態で走ります。速度の乗ったコーナリングで後輪のトラクションを期待してもダメです。特性を理解したうえで、街乗り用4WDとして使えば便利です」。
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