街でよく見る特装車といえば塵芥車(じんかいしゃ)だ。塵芥車は1950年代に日本で使われ始めたが、呼び方は塵芥収集車、ゴミ収集車、パッカー車などさまざま。家庭などから排出されるゴミを収集し、焼却場など処理施設に運搬するのが主な仕事となっている。
タイプは「回転板式」「圧縮板式(プレス式)」「荷箱回転式(ロータリー式)」の3種類。回転板式はテールゲート内の回転板でかき上げたゴミを押込板で荷箱内に積み込むもの。排出はダンプ式だ。
8月発表10月発売!!! スバルフォレスター ビッグマイナーチェンジで堂々帰還!!!!
いっぽう、圧縮板式はテールゲート内の圧縮版と荷箱内の排出板でゴミを圧縮しながら積み込むもの。排出は押出式である。荷箱回転式は円筒ドラム型の荷箱を回転させながらゴミの積み込みを行なうものだが、台数はあまり多くない。
塵芥車メーカーは大きさもさまざまだが、街でよく見る小型(2t車級)や中型(4t車級)が主力。そのなかから今回は大手3社の最新モデルをご紹介。これが進化し続ける塵芥車の最新トレンドだ!
文・写真 「フルロード」編集部
※2017年9月発売トラックマガジン「フルロード」第26号&2019年12月発売「フルロード」第35号より
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■後ろ姿はまるでスポーツカー!? モリタエコノスのパックマスター&プレスマスター
モリタエコノスが2019年3月に発売したプレスマスターPB7型(4t車級)。スタイリッシュなデザインは消防はしご車や消化器などを手がける専属デザイナーによって行なわれたという
モリタエコノスは消防はしご車や消化器で有名なモリタグループの環境車両メーカー。塵芥車のほか高圧吸引車やバキュームカーの製造・販売も行なう。塵芥車は回転板式の「パックマスター」と圧縮板式の「プレスマスター」というラインナップだ。
同社は2014年のパックマスターKA7型(2~3.5t車級)を皮切りに、パックマスターKB7型(4t車級)、プレスマスターPA7型(2~3.5t車級)と相次いでフルモデルチェンジを実施。2019年3月に残るプレスマスターPB7型(4t車級)をフルモデルチェンジして全機種リニューアルを完了した。
新型パックマスター&プレスマスターの最大の特徴は、なんといってもその斬新な外装デザインだろう。
これまで塵芥車はゴツゴツした無骨なボディに丸目4灯のテールランプ&ウインカーというのが当たり前だったが、新型は独自の「ハイマウントストップランプ」を基調としたスタイリッシュなデザインを採用。まるでスポーツカーのような後ろ姿は同社の塵芥車の新しいアイデンティティだ。
モリタエコノスが2016年12月に発売したプレスマスターPA7型(2~3t車級)はゴツっとした外観が特徴。ドイツの「iFデザイン賞(プロダクト部門)」の受賞でも話題となった
ちなみにハイマウントストップランプは、テールランプ、ウインカー、および「作業中」などの表示を行なうLEDパネルを高い場所に集中配置するもので、後方視認性アップに寄与。見た目だけじゃない、機能性の高さも特徴である。
プレスマスターの積込装置は基本的に従来型を踏襲。細部の見直しで作業性アップを図っている。いっぽうパックマスターの積込装置は回転板や押込板が改良され積込性能アップを実現。こちらも細部の見直しによる作業性アップが実現している。
■こだわり満載の曲線デザイン 極東開発工業のパックマンチルト&プレスパック
極東開発工業が2017年11月に発売した4t車級のパックマンチルト(左)とプレスパック(右)。機構が異なる回転板式と圧縮板式でまったく同じデザインを採用しているのが特徴だ
極東開発工業はコンクリートポンプ車や粉粒体運搬車などさまざまな働くクルマの製造・販売を行なう特装車の総合メーカー。塵芥車は回転板式の「パックマンチルト」と圧縮板式の「プレスパック」のほか、都市型ゴミ収集車「スライドパック」などの派生モデルもラインナップしている。
同社は2017年にプレスパック&パックマンチルト(どちらも4t車級)の同時フルモデルチェンジを実施。その後、2018年にプレスパック(2~3.5t車級)を、2019年10月にパックマンチルト(2~3.5t車級)を一新。主要ラインナップのフルモデルチェンジを完了した。
極東開発工業が2018年5月に発売した2~3.5t車級のパックマンチルト(右手前)とプレスパック(左奥)。4t車級と同じく曲線的な統一デザインを採用する
新型プレスパック&パックマンチルトは積込方式が異なる2機種でまったく同じデザインを採用しているのが特徴。コンセプトは「塵芥車のイメージを払拭する町並みに似合うシンプルなデザイン」で、そこに「安全性」「作業性」「品質」を盛り込んだという。
流れるようにデザインされた曲線的なプレスラインは、ひと目で識別できるキャラクターを持たせると同時に、新採用の大型LEDリアコンビネーションランプを引き立たせるため。大型リアコンビネーションランプはコの字に光るポジションランプが目印で、ウインカーとともに後方および側方の視認性アップに寄与。
プレスパックの積込装置は「原点に帰って開発し直した」という力作で、プレスプレートの形状や取り付け位置、さらに制御面の見直しにより性能をアップ。
いっぽうパックマンチルトの積込装置は従来型を継承するが、回転板と回転板駆動用チェーンのスプロケットギアの変更などでゴミを押し込む能力をアップするなど商品力を高めている。
■中身も外見も大幅リニューアル 新明和工業のG-PX&G-RX
新明和工業が2017年5月に発売した4t車級のG-PX。約12年ぶりのフルモデルチェンジにふさわしいスマートな外観が特徴だ
新明和工業はダンプトラックや脱着ボディ車などさまざまな働くクルマの製造・販売を行なう特装車の総合メーカー。塵芥車は国内シェアトップで、回転板式の「G-RX」と圧縮板式の「G-PX」などをラインナップする。
同社は2016年のG-PX(2~3t車級)のフルモデルチェンジを皮切りに、2017年にG-PX(4t車級)、2019年にG-RX(2~3t車級)と続けざまにフルモデルチェンジを実施。主要モデルのリニューアルを完了した。※G-RX(4t車級)は従来モデルを継続販売する
新型は「街にとけ込み一体化するスマートなデザイン」がコンセプトの統一デザインを採用。新採用となる専用設計の大型リアコンビネーションランプは優れた視認性を誇り、樹脂製レンズで耐久性も向上。
さらにルーフカバー中央部にもLED式ハイマウントストップランプを採用し、後方・側方の視認性を大幅にアップしている。
G-PXの積込装置は油圧や制御を最適化するとともに、収集するゴミに応じて制御を切り替える積込モード切換スイッチを標準装備。これにより積載できるゴミの量を2~3t車級で最大20%、4t車級で最大8%向上。
いっぽう、G-RXは押込板と回転板の刃先出力を向上し、ボディの大きさを変えず積み込めるゴミの量をアップしているという。
新明和工業が2019年10月に発売した2t車級のG-RX。G-PX系とデザインの統一感をもたせつつ、専用のルーフカバーで個性も演出する(写真提供/新明和工業)
ちなみに、同社の塵芥車には臭気対策剤「デオマジック」が使用可能だ。同製品は塵芥車の構造および運用上、どうしても防げない作業中の生ゴミの「イヤなにおい」を、同社がシキボウ、山本香料、凸版印刷と共同開発したもの。
■ICTやAIの活用が活発化 ハイテク化する塵芥車の最新トレンド
G-RXと同時発売となったSmart Eye Motionの検出イメージ。危険エリアに入ると装置が自動停止する仕組みだ
塵芥車は特装車として異例の「モデルチェンジ」の概念が存在。数年~10数年おきにモデルチェンジを行なっており、そのたびにさまざまな進化を遂げてきた。とりわけ近年は先進安全機能の進歩がめざましい。ここではその一例を紹介しよう。
新明和工業が2019年10月に発売した「Smart Eye Motion」は世界初の塵芥車用巻き込まれ被害軽減装置。バックアイカメラの画像から、AIが人の頭部と色彩を検出。人が危険エリアに入ると装置を自動停止させる。
頭部検出は、AIが事前に性別や髪型などの特徴を学習。帽子もOKだ。いっぽう色彩検出は事前に赤・青・緑のいずれかを設定しておけば、その色を検出するもの。作業用グローブの色を合わせれば安全効果も高まるという。
他方、極東開発工業が2020年8月に発売した「KIES(Kyokuto Intellisgent Eye System)」も画像認識AIを用いて巻き込まれリスクを軽減する安全支援システムだ。
仕組みは似ており、専用カメラとAI画像認識により、人を検知。危険を察知すると積込装置を自動停止する。ただし検出メカニズムは若干異なり、こちらは人全体を把握して検知する。また色彩検出は行なわれない。
いっぽう、極東開発工業が2019年1月にサービス提供を開始したのが、特装車の稼働状況を記録・蓄積するIoT基盤を活用した車両管理支援システム「K-DaSS(Kyokuto Data Sharing Service)」だ。
これは架装物の制御システム(ECU)に通信端末を搭載。端末が記録・蓄積した各種稼働データをスマホやタブレットから閲覧できるもので、当初はメンテナンス時期の提案などの機能にとどまったが、2020年7月より塵芥車ユーザー向けアプリとWebサービスの提供も開始。今後のアップデートも含めて注目されている。
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