カーボンニュートラル社会の実現に向けて、クルマの電動化は避けて通れない。とはいえ、現在のところBEV(バッテリー電気自動車)は満充電時の走行可能距離は延びているが、充電するのに時間が掛かること。急速充電池の充実が課題だ。
全固体電池が実用化されれば、さらに普及が加速しそうだが現状は普及への足かせは多い。全固体電池を搭載したBEVが登場するまでの間、実用性の高い電動車がPHEV(プラグインハイブリッド)だ。
PHEVのモデルラインアップは欧州メーカーのほうが充実しているように見えるが、システムの主役はエンジンであるタイプが多い。
熱いスポーツカーにこそ先進安全装備を… 新型BRZのアイサイトがすばらしい!!
その一方で、国産メーカーのPHEVはモーターが主役のシステムが多く、さらにPHEVの特長である「エネルギーの地産地消」。すなわち走行しながらバッテリーを充電できるチャージモードをほとんどの車種が搭載しているのだ。
そこで、ここでは注目の高い国産SUVのPHEVを2モデル試乗することができたので、インプレッションを紹介したい。
文、写真/萩原文博
欧州プレミアムブランドに肩を並べる質感の高さを誇るレクサスNX
NX450h+Fスポーツの走行シーン
まず紹介するのは、レクサスNX。現行型レクサスNXは2021年10月にフルモデルチェンジを行った。次世代レクサスの第1弾モデルとして登場したNXは、6種類のパワートレインを導入。その中にレクサス初のPHEVである450h+がラインアップされている。
現行型NXはクルマの骨格にあたるプラットフォームから刷新。GA- Kプラットフォームを採用し、軽量で高剛性なボディと低重心化したパッケージを実現。車両の基本性能を大幅に向上させ、レクサスの乗り味であるドライバーの意図に忠実でリニアな応答性を継承している。
骨格の接合においては、レーザースクリューウェルディング(LSW)や構造用接着剤に加え、レーザーピニング溶接技術を採用。それらを適材適所に使用し、従来型に比べ約35%接着長を伸ばすことで接合強度を高めた。
また、アッパーボディにおいても構造から見直し、エンジンフードにはレクサス初となるツインフードロック構造を採用。また、リアのラゲージ開口部のマッチ箱変形を抑えるために、環状構造に加え、高剛性発泡剤をCAE解析により最も効果的に配置している。
外観デザインは、流麗なルーフラインによってクーペのようなサイドビューが特長。さらにリアオーバーハングを短くすることで軽快感を、そしてリアへ向かうキックアップを強調することで、キャビンの凝縮感を演出している。
インテリアは、人間中心の思想をさらに進化させた新たなコックピットデザインの考え方「Tazuna Concept」に基づき、コックピットを設計。
人が馬を操る際に使う「手綱」に着想を得て、ステアリングスイッチとヘッドアップディスプレイを高度に連携させ、視線移動や煩雑なスイッチ操作をすることなく、運転に集中しながらナビゲーションやオーディオ、ドライブモードセレクトなど、各種機能の制御が可能な空間を実現した。
NXに搭載されているパワートレインは450h+の2.5L直列4気筒エンジンのPHEVシステムをはじめ、350hに搭載されている2.5L直列4気筒エンジンのハイブリッドシステム。350には2.4L直列4気筒ターボエンジン。そして250は2.5L直列4気筒自然吸気エンジンを搭載している。
駆動方式は450h+と350は4WDのみ。350hと250は2WDと4WDを用意。ADASと呼ばれる運転支援システムは、進化した「レクサスセーフティシステム+」を採用。
ミリ波レーダーおよび単眼カメラの検知範囲拡大により、各機能の性能向上や一般道での支援を行う新機能として、高度運転支援技術「レクサスチームメイトアドバンスドパーク」を搭載し、安全/安心でスムーズな駐車を支援する。
試乗したのは、車両本体価格738万円の450h+ Fスポーツ。外観は20インチ専用アルミホイール、バンパーロアのスポイラー、存在感のあるフロントサイドガーニッシュなどを設定。インテリアは、新開発の専用ステアリングホイールに加え、フロントシート、アルミペダル、シフトレバーなどを専用設定し、走りのイメージを強化したグレードだ。
さらに、走行性能を向上させるため、車両の前後に「パフォーマンスダンパー」を装着。その結果、走行中、ボディに生じるしなりや微振動を速やかに吸収し、ハンドリングの特性を一層シャープにするとともに、乗り心地と静粛性を高めている。
個人的には旧型のNXもレクサスブランドの中で、1、2を争う優れた走行性能を実現したモデルと思っていたが、現行NX450h+ Fスポーツに乗って驚いたのは、ボディ剛性の高さ。
アイポイントの高さでSUVに乗っていることを確認できるが、ロール量が少なく無駄な動きがほとんどない走りはスポーツカーそのもの。大容量のリチウムイオンバッテリーを床下に配置することで、重心が低くなり雑味のないスッキリとした安定感抜群の走りを味わえるのだ。
PHEVシステムは満充電時のEV航続走行距離は88km。充電は普通充電しかなく、100Vで33時間、200Vで5.5時間となっている。個人的にはPHEVはチャージモードがあれば、エネルギーの地産地消ができるので急速充電は必要ないと思っている。
レクサスは100%BEVブランドに移行すると、すでに宣言されている。したがってバッテリーが無くなると走行できなくなるBEVに急速充電器を優先的に利用してもらい、PHEVは走行しながらバッテリーを充電して走行してもらいたいというレクサスの考えが表現されていると思う。
今回の試乗は街乗りを中心に100km程度だったので、ほとんどEV走行だった。途中でハイブリッドモードに切り替えて、エンジンを始動させても音や振動はシャットアウトされて、車内に進入してこないので、EV走行かと勘違いしてしまう程のレベルだ。
現行型NXは従来の特長だった高い走行性能に加えて、質感も向上している。試乗車はオプション装備を含めると800万円。ライバルは輸入車のBMW X3 30eやメルセデス・ベンツGLC350eとなる。
走行性能や質感もまったく引けを取らないし、何よりこの3モデルの中で電動感が最も高いのはレクサスNXであるのは間違いない。HP上で納車までの期間が長期になるとアナウンスされているが、待つ価値があるクルマだ。
三菱車用にチューニングされたマイパイロットを搭載し、さらに機能性を向上
エクリプスクロスPHEVの走行シーン
続いて、紹介するのは三菱エクリプスクロスPHEVだ。このモデルは2020年12月のマイナーチェンジの際に追加されているが、2021年11月の一部改良で、高速道路同一車線支援機能「マイパイロット」を採用したのだ。
「マイパイロット」は日産のプロパイロットをベースとしているが、三菱車用にシステムのキャリブレーションを行う必要があったため、このタイミングでの搭載となったのだ。
変更点は、PHEVに「マイパイロット」を採用したほか、これまで最上級グレードのPにのみ標準装備だった後側方車両検知警報システム及び後退時車両検知警報システムをGにも標準装備し、運転支援機能を充実させている。
スタイリッシュなクーペスタイルSUVの三菱エクリプスクロス。今回試乗したグレードはPHEV P。車両本体価格451万円。オプションカラーのレッドダイヤモンドをはじめ、本革シート、電気温水式ヒーターなど総額57万7500円のオプション装備が付いている。
エクリプスクロスPHEVは前後1基ずつの高出力モーター、大容量駆動用バッテリー、2.4Lエンジンで構成するツインモーター4WD方式のPHEVシステムを搭載。駆動用バッテリーは13.8kWhで満充電時のEV航続距離はWLTCモードで57.3km/Lを実現。
走行モードは、駆動用バッテリーの電力でモーターを駆動して走行する「EV走行モード」エンジンで発電した電力でモーターを駆動する「シリーズ走行モード」。そしてエンジンで発電した動力で走行し、モーターがアシストする「パラレル走行モード」の3つのモードから走行状況に応じて、自動で切り替えてモータードライブを楽しむことが可能。
さらに、バッテリーチャージモードを搭載。エンジンの発電によってバッテリー充電量をほぼ満充電まで増加させることができる。ただし、走行中は充電が遅くなることもある。
エクリプスクロスPHEVの伝達ロスがなく自由自在に前後駆動力配分を行えるツインモーター4WDとS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)が生み出す走りは、内燃機関のクルマの運動性能とは一線を画す。特にコーナリング時のクルマの動きは圧巻。
コーナリング時のロールを抑えるだけでなく、アクセルペダルを踏んでいくと、ドライバーの思い通りのラインを通りながら加速していく。この加速フィールはBEVと変わらない感覚となっている。
新搭載されたマイパイロットも制御系の調律は素晴らしく、先行車との距離が詰まったときのブレーキを掛けた際の前後の揺れも少ない。またカーブに差し掛かる際のハンドル&ペダル操作も自分が操っているような感覚になるほど違和感はない。
システム自体は旧型のアウトランダーのものだが、熟成の域に達しているので満足度は高い。諸費用を含んだ乗り出し価格は500万円オーバーとなるが、補助金があるのでかなり割安で手に入れることができる。
BEVはちょっとまだ早いかな。と電動車へ一歩踏み出せない人でもPHEVならば、充電器などの不安はないはず。そんな電動車ビギナーにエクリプスクロスは最適な1台とオススメできる。
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みんなのコメント
エクリプスクロスはサイズも価格も走りも良いが如何せんインテリアが古く、
エクステリアデザインも好みではない。
キャシュカイにこのPHEVを移植できないものか?