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高級なトラック──新型レクサスLX600“OFFROAD”試乗記

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高級なトラック──新型レクサスLX600“OFFROAD”試乗記

新型レクサス「LX600」に設定された「“OFFROAD”」に今尾直樹が乗った!

見かけとは異なり洗練されている

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2022年1月に発売となった新型レクサスLXに“OFFROAD”なる新しい仕様が設定されていたことをご存じでしょうか?

その名称が示すように、悪路走破性を高めた国内専用モデルである。これがカッチョいい。待ち合わせ場所の東北自動車道のとあるパーキング・エリアにやってきたLX600“OFFROAD”をひと目見てグッときた。

試乗車のカーキ色のボディ・カラーもよかった。間違いなく、今年上半期の注目色であろう。正式名称「テレーンカーキマイカメタリック」というこれは、曇り空の下だとマットのようにも見える。巨大なスピンドル・グリルをはじめ、いつもはシルバーに輝いているパーツがブラック、もしくはダーク系でまとめられて全体を引き締めている感じがする。

足元はブロックの凸凹が目立つオフロード専用タイヤに、マットグレー塗装の18インチ・ホイールを合わせていて迫力十分。いますぐにでも冒険に飛び出ていけそうな、完璧といってもよいコーディネートだ。タイヤ・サイズが265/65と、視覚的にゴム面積が広いところが機能重視を感じさせもする。

「ランドクルーザー」(以下、ランクル)の双子車だからして、ランクル同様、乗り込むには、よっこらせ、とよじ登る必要がある。最低地上高が200mmとたっぷりとられているうえ、ラダー・フレームの上にボディが載っていから着座位置が高い。おかげで、SUV花盛りのこんにちにあっても見晴らしはとてもよい。これぞコマンド・ポジションである。

インテリアはダッシュボードのセンターに大きな12.3インチのスクリーンがあったりして、これが民生用であると知れる。液晶スクリーンの右横に設けられているスタートのボタンを押せば、ガソリンの3.5リッターV6ツイン・ターボが目を覚ます。最高出力415ps/5200rpm、  最大トルク650Nm /2000~3600rpmという数値はランクルのガソリンV6とまったくおなじだ。試乗車のレクサスLX600“OFFROAD”は1290万円。ランクルのV6ガソリンのいちばん安いモデルは510万円である。価格が2.5倍も違うのに、動力性能においては差を設けていない。そこにトヨタのよき平等主義がある。

ちなみに、同じ3.5リッターV6ツイン・ターボの「LS500」は422ps/6000rpmとパワーで若干勝り、600Nm/1600~4800rpmとトルクで若干劣っている。LX/ランクル用はSUVらしくトルク重視のチューニングが施してあるのだ。

LX/ランクルはボディの空気抵抗がいかにも大きいだろうし、なにより車重がおよそ2.5tある。対して、LSは4WDのいちばん重いモデルでも2320kgと100kg以上軽い。組み合わせられる10速オートマチックはステップ比が小さいこともあって、変速ショックをほとんど感じさせない。見かけとは異なりパワートレインは洗練されている。

先代LXより軽やかになっている

高速巡航中、印象的なことはふたつあった。ひとつは、とても静かで快適なことである。まるで往年の「クラウン」のような……。

ラダー・フレームで、フロントがダブル・ウィッシュボーンの独立式、リアはリジッド、というのは初代クラウンと同じ形式である。より正確には初代クラウンのリアのスプリングはリーフで、新型LX/ランクルはコイルという違いはある。しかも、筆者は観音開きのクラウンに乗ったことはないのです。

でも1980年代半ばに初めて乗ったクラウンはまだフレーム付きで、静粛性が高く、フワフワの足まわりを持っていて、なんだかあの頃のクラウンを思わせたのだ。もちろんリアは独立懸架だった。つまり、初代クラウンのうんちくは単なるうんちくに終わっていることをここで告白しておかなければならない。

後輪がリジッドだから路面が荒れていると、リアがちょっと跳ねる。ゴツゴツのオフロード・タイヤのせいか、ゴツゴツ感がある一方、バネ自体は柔らかい。高級なトラックに乗っている。そんな感じがする。

もっとも、“高級なトラック”というものは世のなかに存在しない。存在していたとしても筆者は乗ったこともないので、あくまで「そんな感じがする」だけである。先代とは異なり、エア・サスペンションを持っていないから、先代のような浮遊感はない。その代わりタイヤの接地感は新型のほうが優れているように思う。

約200kgのダイエットに成功し、V8自然吸気からV6ツイン・ターボに載せ替えたこともあって、記憶のなかの先代LXより軽やかになっている。

新開発のプラットフォームはパワートレインの搭載位置を後方に70mm、下方に28mm下げたりして前後重量配分に意を払っている。車検証には、前1390kg後ろ1200kgとある。これは54:46ということで、定員7名だし、積載量のことまで考えると、ちょうどいいのかもしれない。少なくとも、フロント・ヘビーにすぎない。とはいえる。ルーフの素材に軽いアルミニウムを用いて低重心化を図ってもいる。

クラウンを思わせる静粛性と快適性

それでも印象的だったことのふたつめは、重心が高めで、舵を切ってからの応答性に遅れがあって、アンダーステアというのか、筆者の切り遅れによる手アンダーというべきか、うまくコーナーに入っていくのがむずかしいということである。なるべく早めにじんわりロールさせる。遅れると、ボディはどんどん外に行こうとする。

ま、それも当たり前である。レクサスLX600は全長×全幅×全高=5100×1990×1885mmという巨体の持ち主で、背丈はバレーボールの選手としては低いかもしれないけれど、長身で、重心を低くしたとはいっても、高いものは高い。

200kgの減量後も、試乗車の車重は2590kgもある。相対的にはともかく、かなり重い。V6ツイン・ターボの650Nmのトルクをもってしても、待ち合わせの場所まで筆者が乗っていった小型ハッチバックのように反応するはずもない。レクサスLXはドイツやイタリアのスポーツカー・ブランドがつくる高性能SUVとは一線を画しており、違うジャンルに属しているのである。

レクサスLXで驚くべきは、このほとんどフルサイズSUVがトヨタの高級車の代名詞であるクラウンを思わせる静粛性と快適性を備えているという、そのことに尽きる。

高級なトラックというものがもしも存在するとしたら、それはレクサスLXのことである。

最高にカッチョいい!

もうひとつ、今回の試乗で驚いたのは、新型レクサスLXの人気ぶりだ。

ランチをとるべく、とある中国料理レストランの駐車場にとめていたら、工務店とおぼしき制服を着た中年の男性が近寄ってきて、「見せてもらってよいですか」と、われわれにひとこと声をかけ、ひたすら見ておられた。最近の新型車でこういうことは珍しい。

実際、新型LXとランクルは、いま、「日本のみならず世界各国でも大変ご好評いただいており、生産能力を大幅に上回るご注文をいただいているため、現在ご注文を停止させていただいております」と、レクサス&トヨタのホームページで告知しなければならないほど、需要が供給を上まわっているのだ。

その背景にはLX/ランクルのもつオフロード4×4として圧倒的な耐久性がある。

今回、筆者は東北自動車メインで、北関東の地方都市の舗装道路を少々走っただけだから、真の実力は、アスファルトの上だけでは永遠にわからない。

でもね。カーキ色の大型SUVをファッションとしてのみ語れることの幸せを、いまほどありがたいと思うこともない。

新型レクサスLX600“OFFROAD”は、いまあるレクサスのなかで最高に頼もしくて、最高にカッチョいい!

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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