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アルピナ「XB7」の鍛え上げられた逞しさと端正なエレガンスが誘う近未来のドライブ

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アルピナ「XB7」の鍛え上げられた逞しさと端正なエレガンスが誘う近未来のドライブ

インポーターによれば「日本における旅は始まったばかりであり、成長著しいタイやインドネシアと同様の成功をここ日本でも実現したい」と言う。

冒頭に申し上げておきます。アルピナ社の創業者として、長年に渡り数々のBMW ALPINA車を世に送り出してきた「ブルカルト・ボーフェンジーペン」氏が、2023年10月12日、87年の生涯を閉じた。ここに謹んで哀悼の意を表するとともに、故人が安らかな眠りにつかれますよう、お祈り致します。

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さて、1960年代初頭、故・ブルカルト・ボーフェンジーペン氏(以下、ボーフェンジーペン氏)は、さまざまな自動車ブランドのために、持てるパフォーマンスをより向上させるためのキャブレターやインテーク・システムの発開を始めた。その当時、最適なベースモデルとして選んだのが、4気筒エンジンを搭載した最先端のBMW 1500だった。1963年、アルピナ初の製品となったBMW 1500用キャブレターとインテーク・システムを搭載した最初の市販車が路上へと走り出した。こうして始まったアルピナのクラフトマンシップとBMW社との強固な信頼関係が紡いできた歴史は、我々にどんな「車の世界」を見せてくれているのか?

有り余るパワーをどんな形で表現するのか

ボーフェンジーペン氏の逝去よりも1年半ほど遡った22年春のこと、「アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限&合資会社(以下、アルピナ社)」が、ブランドをBMWに譲り渡すというニュースが飛び込んできた。そのニュースは25年末で、これまで継続してきたアルピナとBMWとの関係が終了すると同時に、アルピナという独立した自動車ブランドの歴史にも幕が引かれることを意味していた。そして現在、アルピナというブランドがその後にどのような道をたどるかは明らかになっていないが、BMWの「高級車ブランドのひとつ」として継承されるという見方は、有力だ。

そんな中で確実なことはと言えば、45年にわたり日本市場でアルピナの日本総代理店を務めてきた「ニコル・オートモビルズ合同会社(以下、ニコル)」を始め、全国に展開されるBMWアルピナの正規代理店(BMW正規ディーラー)で、今も魅惑的なBMWアルピナのラインアップから、好みのモデルを選択できるということ。そして当然のことだが、故・ボーフェンジーペン氏の思いとアルピナ社のクラフトマン達のスピリットが込められたモデルを、手にする最後の機会とも言える。そのラインアップから、もっとも魅惑的な輝きを放つモデルをセレクトするなら、アルピナから初めて登場したラグジュアリー・パフォーマンスSUVの「XB7」ではないだろうか。

マイナーチェンジを施された最新のXB7のベースといえば、BMWのSUVフラッグシップであるBMW・X7。それをアルピナ流儀によって仕上げた最高出力621馬力、最大トルク800N・mと言う最強の4.4L、V型8気筒エンジンによる力強さは、BMWの「Mパフォーマンスエンジン」であるV8エンジンを搭載車したX7 M60i xDriveの530馬力、最大トルク750 Nmを大きく上回るパフォーマンスを実現している。

その上で、出色ともいえるフラットな乗り心地を実現した足回りの完成度の高さは、まさに一度経験すると忘れられない味わい。アルピナが自らのラインアップを「車グルメのためにある」と称することが、走り出してすぐに理解できるような完成度を見せてくれるのである。なによりもそのパワフルさは全長5.180mm、全幅2,000mm、全高1,835mm、そしてホイールベース3,105mm、車重2,660kgという堂々たるボディを、ひとまわり小さく感じさせるほどの軽快さ、扱いやすさを実現している事に驚かされる。

一方で、ロングホイールベースを活かした大型クルーザーのごとくの快適な乗り心地とドライビング・ダイナミクスを両立した走りのパフォーマンスを味わっているうちに、気が付いたことがあった。アルピナ最大の魅力は、この有り余るほどのパワーを利した走りをひけらかすことではないのではないということ。いや、むしろこれ見しに巨体を振り回すのはアルピナにふさわしくない行為であり、強烈な走りは「潜めてこそ、美」だと感じ、そして以前、生前の徳大寺有恒氏(以下、徳さん)と交わした、あるやり取りを思い出した。

アルピナが永遠である理由を見つけた

それは徳さんと試乗会場に向かうときだった。

「キミは自分のファッションで大切にしていることは何かね?」と聞かれた。いつものように問いかけから始まる会話は、言わばルーティンのようなモノ。だが、チノパンにポロシャツが定番の自分にしてみれば、いかようにも回答しづらい質問であった。

「えぇと、無頓着なモノで……」と、いつものように笑って済ませていると、徳さんは「無頓着でけっこう、ただしセンスは必要だ。人はそこを見るんだよ」と。

さすがは徳さん、ごもっともだ、と感心し、そして反省しつつ「徳さんが大切にしていることは?」と切り返した。すると「働く男としてかっこいいことだね」と即答。「僕は収入のことを気にしながら働かなくてはいけない人間だ。だから働く男のファッションとしてカッコいいことを大切にする」と続け、さらに「高級と言われるファッションの中には、収入のことなど考えなくていい人のためのモノも多い。だが、それは労働者の私にはふさわしくない」と重ねてきた。

おぼろげな記憶をたどりながら思い出したやり取りの内容は大体そんなところだった。その中で「働く男としてカッコいいこと」という言葉は、いまもしっかりと心に残っている。この徳さんの言葉に従いながら、アルピナ社が創り上げるモデルは、いかなる存在だろうか? をXB7を走らせながら考えていたのだ。

多分、BMWは完全なる働く男のためにある「ドライビングカー」の筆頭だろう。そのBMWをベースに誕生してくるBMWアルピナ車も当然ながら「働く男をカッコ良く見せる存在」だ。その上で「アルピナならではの価値」を考えると、なにを置いても「エレガンス」と言う表現がすぐに見つかった。

XB7に採用された最先端のサスペンション・テクノロジーによって生み出されるハイパフォーマンスとラグジュアリーを両立させ走り。アルピナのブランド・アイデンティティであるクリスタル仕様( Crafted Clarity)を取り入れた操作系や、ディテールまで徹底的にこだわり、手作業で丁寧に仕上げた最高品質のインテリアに包まれながらの走りに、力任せの走りはやはり似合わない。鍛え上げたたくましさや力をスーツに包み込んで潜め、いざというときにだけ、本質を見せる。これこそ働く男がカッコ良く見える瞬間であり、そこには一流だけが知るエレガンスが潜めてあるのだ。BMWアルピナは、そんなエレガントさがかもしれない。

これはBMWに存在しているスポーツモデル「M」の立ち位置とは明確に違う。Mはその強さをストレートに表現していい純粋なモデルである。一見して分かる赤とブルーのストライプも問題なく許される。

一方アルピナは、XB7に限らず、すべてのモデルは、エレガンスというスーツをまとった「秘めた強さ」に魅力を感じる人のためのブランドだと思う。そう考えると25年末にBMWの中の一ブランドとなって以降も、十分に存在価値を発揮する。いや、これまでに醸成してきたアルピナのエレガンスは決してなくしてはいけない、と長年のファンとしても思うのだ。

大人しめの外観の中に4本出しのエキゾーストパイプが印象的。圧倒的なパフォーマンスをさり気なく表現している。

大型のカーブド・ディスプレイを採用。デジタル・メーター・パネルとセンター・コントロール・ディスプレイがひとつのユニットに統合されたデザイン。

インテリア・デザインにはパイピング、ステッチ、刺しゅうやエンボス加工、さらに希望に応じた加工など、独自のニュアンスをプラスすることができる。

ロングホイールベースのお陰で3列シートではあるが前後方向にもゆとりがある。

トランク容量 は750L~最大2,120Lまで拡大出来る。

2列目シートを前方に倒してサードシートにアクセス。スペースはさすがにゆとりを感じないが、短距離なら我慢出来るレベル。

特別なクリスタル仕様( Crafted Clarity)を取り入れたアルピナ・デザインのiDrive コントローラー、ブルー・ライト付きのギヤ ・セレクター・スイッチなど最高品質な作り込みは細部にわたる。

621馬力のパワーで静止状態からわずか4.2秒で100km/hまでか即死、巡航最高速度は290km/hに達する。

(価格)
28,700,000 円~(XB7/税込み)
(スペック)
全長×全幅×全高=5,180×2,000×1,835mm
ホイールベース:3,105mm
車重:2,660kg
最小回転半径:未公表
最低地上高:未公表
トランスミッション:8速AT
駆動方式:4WD
エンジン:V型8直列ツインターボエンジン 4,394cc
最高出力:457kW(621PS)/5,500~6,500rpm
最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)/1,800~5,400rpm
燃費:7.3km/L(WLTPモード・ヨーロッパ参考値)
問い合わせ先BMW ALPINA: https://alpina.co.jp/contact/

TEXT:佐藤篤司
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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みんなのコメント

2件
  • anen
    まあ、買うヒトがいるんだから凄いよね。
  • edd********
    >621馬力のパワーで静止状態からわずか4.2秒で100km/hまでか即死

    怖すぎる
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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