2030年代に入ると新車の純エンジン車が生産されなくなり、先々のガソリンの供給という心配もあり、欲しいものがあるなら大排気量車などの極悪燃費車は今のうちに乗っておきたい存在だ。
そこで、モータージャーナリストの永田恵一氏に「燃費は極悪だけど、オンリーワンの魅力がある日本車」を中古車、現行車に分けてそれぞれ5車種ずつピックアップしてもらい、お薦めの理由を解説してもらった。
つ…ついに公式世界初披露!! 新型ランドクルーザー300 今夏にHVなしで登場確定!!
文/永田恵一
写真/トヨタ 日産 ホンダ マツダ スバル
【画像ギャラリー】リッター10キロを下回る"極悪燃費車"をギャラリーでチェック!!
魅惑の極悪燃費車中古車編:ユーノスコスモ3ローターエンジン搭載車
■10モード燃費:6.1km/L 最高出力280ps/最大トルク41.0kgm
現代にも通用する美しいデザインの2ドアクーペとして、また劣悪過ぎる燃費性能としても伝説に残るユーノスコスモ。基本的には3km/Lほどしか走らない
ユーノスコスモの中古車情報はこちら!
マツダだけが実用化したロータリーエンジンはどれも褒められた燃費ではないが、その頂点に立つのが1990年に登場したユーノスコスモの3ローターエンジン搭載車だ。
ユーノスコスモはマツダのフラッグシップ、マツダの市販車用ロータリーエンジンの集大成として開発されたラグジュアリークーペ。
そのハイライトはやはり3ローターエンジンだった。コスモに搭載された20B型3ローターエンジンは排気量として2リッター(税法上は3リッター)だが、低回転域では1つのターボ、高回転域では2つのターボを使うシーケンシャルツインターボとしたことにより5リッターV12級の動力性能とスムースさを実現。また内外装など、ジャガーを思わせる優雅な雰囲気を持っていたことも魅力だった。
動力性能もさることながら、ジャガーを彷彿とさせる質感高い内外装にも注目!
燃費に関してはロータリーエンジン+ターボという点に加え、ATのみの組み合わせだった当時のターボ車ということもありドライバビリティ(運転のしやすさ)に難があったためもあり、「全開加速をすると燃料計の針が落ちていくのが見える」、「リッター5km、3km」といろいろ言われているが、日本車有数の燃費極悪車なのは確かだ。ただ、いろいろな意味で貴重な存在なのは事実なので、特にロータリーエンジンファンなら乗っておく価値は大きい。
中古車価格は中古車検索サイトを見ると、原稿執筆時点で8台しか流通しておらず、そのうちが4台あった3ローターエンジン搭載車は298万円、320万円、398万円、応談だった。
また残りの4台は2ローターターボ車で、こちらの価格は198万円、198万円、199万円とこの年代の価値のある日本車としては高くなく、雰囲気重視でユーノスコスモに乗りたいなら2ローターターボ車を選ぶのもいい。
魅惑の極悪燃費車中古車編:R32型スカイラインGT-R
■10モード燃費:7.0km/L 最高出力280ps/最大トルク36.0kgm
1990年代に世界No.1の運動性能を実現することを目指した「901運動」の成果として誕生したR32型GT-R。モータースポーツ界で数多くの功績を残した
R32型スカイラインGT-Rの中古車情報はこちら!
17年間の空白期間があったスカイラインのフラッグシップとなるGT-Rは、1989年登場のR32型8代目モデルで復活した。
スカイライン自体がこのモデルでスカイラインらしいスポーツ性を取り戻したこともあり、GT-Rは当時のツーリングカーレース制覇を目的にRB26DETT+アテーサE-TSというパワートレーン搭載するなど、日本最強の座に君臨。
またツーリングカーレースでは目標通りとなるほぼ負けなしの大活躍だったほか、チューニングカーのベース車としても大人気を集めた。
燃費はハイパワーなことに加え、大きなリアスポイラーによる空気抵抗の大きさもあり、極悪ではあったが、当時はさほど気にされなかった。
また、RB26DETT+アテーサE-TSはR33型、R34型と三世代に渡って搭載され、280馬力という最高出力は変わらなかったものの、R33型では最大トルク37.5kgm、10・15モード燃費8.1km/L、R34型では最大トルク40.0kgm、10・15モード燃費8.1km/Lと、動力性能と燃費を同時に向上していった点は評価できる。
原稿執筆時点で48台が流通していた中古車価格は400万円から1000万円も超えるものも数台という具合で、新車価格並みの450万円から600万円が中心だ。
またスカイラインGT-RはR34型が約1200万円からともう手が届かない存在だが、R33型の中古車価格はR32型と同等なので、向上した性能や年式などを考慮すればお得といえばお得だ。
魅惑の極悪燃費車中古車編:アルシオーネSVX
■10モード燃費:7.0km/L 最高出力240ps/最大トルク31.5kgm
1991年に登場したスバルの大型クーペ、アルシオーネSVX。搭載される3.3Lフラット6エンジンはレガシィの4気筒エンジンに2気筒足したもの
アルシオーネSVXの中古車情報はこちら!
1991年登場のアルシオーネSVXは登場時期やフラッグシップとなるラグジュアリークーペである点など、ユーノスコスモに近いところもあるモデルだ。
アルシオーネSVXはフル4シーターのラグジュアリークーペで、ジウジアーロによるエレガントな内外装のデザイン、3.3リッターフラット6+4WDによる全天候型という点など、今見ても色褪せない個性を備えていることが最大の魅力だ。
燃費は当時のスバル車のコンピュータによるエンジンマネージメントの悪さや、3.3リッターフラット6がレガシィに搭載されていた2.2リッターフラット4に2気筒追加した成り立ちだったため、エンジンのストロークが短く低速トルクが細いなどの原因により、極悪だった。
中古車価格は原稿執筆時点で26台が流通しており、100万円から200万円が中心を中心に69万円から788万円(走行327km)の幅で、好みに合うならネオクラシックの日本車として狙い目かもしれない。
魅惑の極悪燃費車中古車編:2代目センチュリー
■10・15モード燃費:7.2km/L(前期の4速AT)、JC08モード燃費:7.6km/L(後期の6速AT)、最高出力280ps/最大トルク46.9kgm
筆者の永田氏も所有していた2代目センチュリー。1997年~2017年の20年間で、CNG仕様車追加、ATの6速化、地上デジタルチューナー追加、スーパーUVカットガラス装着と幾度となく改良が加えられた
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主に専門の運転手さんがハンドルを握るショーファーカーとして1997年から20年間生産された2代目センチュリーの魅力は乗せてもらうなら静粛性をはじめとした快適性、運転するなら日本車史上おそらく最初で最後になるであろう5リッターV12エンジンなど、モノとして見るなら塗装に代表される工芸品のようなズバ抜けた各部のクオリティである。
筆者は前期型の2代目センチュリーに1年半ほど乗っていたが、V12エンジンは「直6エンジンをさらに静かかつスムースにし、アイドリング+αの低回転域から図太いトルクを加えた」というフィーリングで、日本では2代目センチュリーでしか味わえない世界だった。また、自分のものにしたからこそ得られたことが多かったのも印象的だった。
原稿執筆時点で81台が流通している中古車価格は、この種のクルマはボディサイズや維持費など「もらっても困る」というところがあるのも事実のため、40万円台から、100万円までと200万円までが3分の1ずつ、200万円を超えると走行距離がセンチュリーとしては少ない10万km以下か年式が2012年式以降になるといった具合だ。必要性はともかく、1000万円を超える新車価格などを考えれば、安いといえば安い。
魅惑の極悪燃費車中古車編:2代目エルグランド3.5リッターV6搭載車
■10・15モード燃費:8.2km/L 最高出力240ps/最大トルク36.0kgm
2代目エルグランドの心臓部であるVQ35DE型V6、3.5Lエンジンは最高出力240ps/36.0kgmを発揮。Z33型フェアレディZやV35型スカイラインに搭載されたものと同型で、ミニバンとは思えぬ豪快な加速を味わえる
2代目エルグランドの中古車情報はこちら!
2代目エルグランドは高級ラージミニバンのパイオニアとして大成功を収めた初代モデルから正常進化でフルモデルチェンジされた。
2代目エルグランドの魅力はインテリアでは厚みのあるシートやサイズの大きいダッシュボードに付くモニター、FR構造+V6エンジンなどによる高級感の高さである。
走りは3.5リッターV6エンジンが巨体なだけに迫力ある豪快な加速力を持つ点など、2代目エルグランドとの相性が非常にいいだけでなく、ハンドリングや乗り心地もサスペンションなどにうまく手を加えると大船に乗ったような快適性を得られる。
中古車価格は10万円台から、50万円以下でしばらく使えそうな物件がそれなりに流通しており、ほとんどの物件が100万円以下と好みに合えば面白い選択肢だ。
魅惑の極悪燃費車現行車編:ランドクルーザー200
■WLTCモード燃費:6.7km/L(ZX) 最高出力318ps/最大トルク46.9kgm
2021年8月上旬に発売予定の次期型が注目のランドクルーザー。新型は3.3Lディーゼルターボと3.5L V6ガソリンターボにダウンサイズすることが確実。現行型は4.6Lの自然吸気エンジンを搭載する大排気量車として、より希少な存在となる
フルモデルチェンジ寸前となっているランドクルーザーはすでに生産を終了しており、新車での入手は絶望的になっている。
それでも4.6リッターV8エンジンをはじめとした高級感と悪路走破性のバランス、ランドクルーザーというステータスの高さといった魅力は全く色褪せていない。
次期モデルはV6のガソリンターボとディーゼルターボになるため、V8エンジン搭載のランドクルーザーが欲しいならリセールバリューの高さもあり、中古車でも買う価値は大きい。
ただリセールバリューの高さの裏返しとして盗難に遭いやすいクルマなので、盗難対策は念入りに行いたい。
魅惑の極悪燃費車現行車編:R35型GT-R
■WLTCモード燃費:7.8km/L 最高出力570ps/最大トルク65.0kgm
R35型GT-Rはサーキット上に限らず、雪道やアウトバーンなど、さまざまな走行条件で安定感のある走りを実現したオールラウンダー
登場からもうすぐ14年となるGT-Rだが、未だフォロワー(後追い)がないスーパーカーとしては非常に高い実用性や4WDによる雪道への対応をはじめとしたマルチパフォーマンススーパーカーというコンセプト、サーキットからアウトバーンまでどこでも速い点などなど、数あるスーパーカーにおいて独自のポジションに君臨している。
燃費はカタログ発表値こそそれほど良くないが、空気抵抗の小ささやエンジンの燃焼温度を大幅に高めていることなどにより巡航ペースが速くなっても燃費の低下は少なく、動力性能やイメージからすると良好だ。
魅惑の極悪燃費車現行車編:レクサスLC500
■WLTCモード燃費:8.0km/L(ZX) 最高出力477ps/最大トルク55.1kgm
レクサスLC500に搭載されるエンジンは最高出力477ps/55.1kgmを発生する5L、V8の自然吸気。日本車とは思えぬゴージャスな仕様だ
ラグジュアリークーペであるLCの大きな魅力は内外装の雰囲気、ボディカラーやインテリアカラーのバリエーションの多さなどにより、日本車離れしたラグジュアリークーペらしい贅沢さを持つことである。
LCのエンジンは5リッターV8と3.5リッターV6ハイブリッドの2つがあるが、こういったクルマだけにより似つかわしいのは前者(LC500)で、V8エンジンらしいフィーリングと、巡航中は静かながらエンジン始動時やアクセルを深く踏んだ際の豪快なサウンドはLCだけの魅力だ。
もしLC500を買うなら、より贅沢な雰囲気となるオープンのコンバーチブルがお勧めだ。
魅惑の極悪燃費車現行車編:ハイエースワゴン4WD
■WLTCモード燃費:8.1km/L 最高出力160ps/最大トルク24.8kgm
ハイエースの10人乗りワゴンには2.7Lガソリンエンジンを搭載。スーパーチャージャーを載せるなど、カスタマイズの余地も残されている
登場から17年が経ちながら海外でも人気となっているハイエースには10人乗りの乗用ワゴンも設定される。
商用バンを含めたハイエース最大の魅力は用途に応じた大きな発展性を持つことである。
発展性といえば、ハイエースワゴンに搭載される2.7リッター4気筒ガソリンNAエンジンは商用車用ということもあり事務的なものではあるが、パワー不足を感じたならスーパーチャージャーを加える手もあるなど、山のように流通しているアフターパーツで自分好みのクルマに仕上げていくのも非常に面白い。
魅惑の極悪燃費車現行車編:フェアレディZ NISMO
■WLTCモード燃費:8.4km/L(6速MT) 最高出力355ps/最大トルク38.1kgm
Z34型フェアレディZは2008年の登場から13年目を迎える。小排気量ターボが主流を占める最近のスポーツカーとはまた違う、クラシカルなフィーリングが魅力
現行フェアレディZも次期型のプロトタイプが公開されているなど、フルモデルチェンジ寸前である。登場から13年となる現行フェアレディZは3.7リッターV6エンジンをはじめ、乗り心地やハンドリングなど、すべてがよく言えば古典的、悪く言えば古いというのは否めない。
しかし、スポーツカーは趣味のジャンルのため「洗練されていればいいとも限らない」という考え方もある。それだけに現行フェアレディZは次期モデルが現代的な方向にはなる3リッターV6ツインターボエンジンの搭載など、洗練されたスポーツカーになるであろうことを考えると貴重な存在ではある。
グレードはスパルタンなところもあるNISMOもいいが、フェアレディZのキャラクターを考えると標準モデルをATで流すというのがより似合う。
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