東京2020、東京オリンピックもすでに後半戦となり、続く東京パラリンピックに期待がかかる時期となった。
新型コロナウイルス感染拡大が収束を見ないなかでの開催なので、いつもとはかなり異なる環境下にあるにも関わらず、日本人アスリートのメダルラッシュもあり、当初思われていた以上の盛り上がりを見せている。
おっ、呼吸がラクだぞ! 高性能マスクが高速バスでグッスリ快眠を約束する!?
そしてそれは、大会関係者バス大型車両基地に集結するバスたちを追うバスファンたちにもいえるのだ。ということで、東京2020の期間中、「聖地」となる若洲のデポへ出撃っ!!
文・写真/バスマガジン編集部
【画像ギャラリー】オリンピックバス ウォッチング 全国から集結したバスを一挙に堪能できる!!
“区域外営業”を“例外措置”として認可されたことで実現したバスの越境!!
デポから左折して出発したのは、兵庫県の事業者、三洋バスのセレガだ
東京2020において、競技のほかにも盛り上がりを見せている施設がある。テレビなどの報道で、アスリートたちが貸切バスに乗って移動しているシーンを見かけた人も多いと思われるが、それは東京2020組織委員会が東京2020関係者輸送のために用意した多数の貸切バスのことである。
それは平時においては“営業区域”というものが設けられている、バス運行の規定があるが、東京都内の事業者では必要な台数確保が間に合わないとして、東京2020関係者輸送に携わる運行に限り“区域外営業”を“例外措置”として認めることとなり、地域を拡大して協力事業者を募ることとなったものだ。
九州の雄、西鉄観光のセレガを東京で見られるなんて!!
東京2020の会場は東京を中心としたエリアのほか、静岡、福島そして北海道などがあり、東京周辺エリア以外では地元のバス事業者で台数確保は間に合ったようなのだが、東京を中心としたエリアでは区域外営業を例外的に認め、必要な台数確保を図ったのである。
そのため、東京都及び首都圏の事業者だけでなく、東海、近畿、中国、北陸そして九州地域の事業者も東京2020関係者輸送に携わることとなり、現在都内では平時ではまずお目にかかることのない、遠方の事業者の貸切バスが走っているのである。
7月上旬に業務で東名高速道路を名古屋方面に向かってクルマを走らせていたある業界事情通は、
「川崎インターチェンジを越えたあたりで上り(東京方面)を見ると、普段はまずその場所では見ることのできないカラーリングとなる、近畿地方などの事業者の貸切バスが多数走っていました。バス好きでなくとも珍しく、そして楽しい光景だったはずです」と語ってくれた。
福島県からやって来たオールスター観光も、東京で見るとなかなか新鮮だ
これら東京2020関係者輸送に使われる貸切バスは、東京都中央区の築地市場跡と、江東区若洲の都有地に設けられた、“デポ”と呼ばれる、“大会関係者バス大型車両基地”に集結することとなる。
地方から参加している事業者のバスはこのデポに留め置きされるが、都内など東京2020会場近隣のバス事業者については、自社の車庫に留め置き、そこからデポを往来することになっているようである。
これは壮観!! 長崎バスのガーラ、後部5台並び!! 背景となった倉庫ビルとの風景コントラストがイイ!!
ちなみに東京2020関係者輸送用バスの前後には、ピンク地の大会関係車両であることを示すステッカーが貼ってあるので、すぐわかるようになっている。
さらにフロントにはTA(選手のためのオフィシャルバス輸送)、TF(国際競技連盟関係者輸送)、TM(メディア輸送)、DDS(オリンピック放送機構輸送)と略語により、輸送対象が誰なのかがわかるようになっている。
メディア輸送については、路線バスのように運行時刻と運行ルートが決められているようである。そのためデポ周辺だけでなく、新宿の高層ビル地域など、都内でも結構な割合で見かけることができる。
このロケーションでこの事業者のバスが見られる!! オリンピックのスケールの大きさを実感
真っ青な夏空に真っ赤なボディが映える!! 和歌山県から駆けつけてくれたのは日の丸観光バスの このエアロエースだ
東京2020開会前となる7月上旬のある日、平時は若洲キャンプ場前と新木場駅を経由して東陽町駅(木場駅前、新木場駅前行もあり)とを結ぶ、東京都交通局の“木11甲”系統の路線バスぐらいしか走っていない、“東京港臨海道路 新木場若洲線”なのだが、その日は多数の事業者の貸切バスが走っていて驚いた。
すでに若洲のデポに遠隔地などから貸切バスが集まっていたのである。
東京2020開会直前にも若洲のデポへ様子を見に行った。若洲デポは敷地が広いのだが、敷地内には数多くの貸切バスが停まっていた。敷地内にはもちろん入ることはできないので、フェンス越しに様子を見ても、見慣れないカラーリングの貸切バスが多数確認できた。
送迎のために発車して一般路を走る、オールスター観光のガーラ。後追い写真をゲット!!
九州にある事業者のバスが5台並んでいるなど、とにかくデポ内のバスを見ていると、バスファンなら一生に一度の風景、と興奮を押さえきれないだろう。まお、関西地域の貸切バスがとくにカラフルなのが印象的であった。
東京ゲートブリッジにつながる新木場若洲線沿いの歩道からデポの様子を見ていたのだが、ふと新木場若洲線沿いに目を向けると、東京ゲートブリッジを渡ってデポへ向かう貸切バスが列をなしてやってきた。その貸切バスの列を見た時は、いちバスファンとして思わず舞い上がってしまった。
高速道路で西鉄観光ガーラの隊列走行に遭遇!!
とにかく若洲のデポ周辺ではデポ内はともかく、デポから出庫するバス、そしてデポへ入るバスなどで、周囲も貸切バスで溢れていた。外気温度がすでに30度を超え、ギラギラと太陽が照り付ける酷暑の日々であることも忘れてしまうほどの風景だった。
若洲デポは新木場若洲線を挟み、若洲ゴルフリンクの対面にあるのだが、関係者輸送用バス専用の給油及び洗車施設が東京ゲートブリッジ下、若洲公園キャンプ場近くにある。
新木場方向から向かい、東京ゲートブリッジを渡らずに側道に入り、この施設にバスが向かうので、この側道でも多くのバスを見かけることができた。
West Coastのロゴで有名な大阪の事業者、中央交通のエアロエース
オリンピック開催によって各地の貸切バスが集結し、都内を走り回るという滅多にない経験をさせていただき、バスファンのはしくれである記者はいわば“ファンの責務”として見届ける必要があると、勝手に使命感も持ってデポへ出かけた。
日にちを変えて改めて築地のデポへも向かった。しかしすでに、築地市場跡は高い塀で囲われており、デポ内をうかがうことが不可能になっていた。
デポを出庫するコバヤシ観光のガーラは、茨城県からやって来た
さらに、選手村に近い出入口が“環二通り”沿いにあるのだが、現在環二通りの歩道は通行禁止となり、迂回歩道が用意されているので出入口近くまで行くことができなかった。若洲デポのほうがバスファンの満足度が数段高いことは記者が確認してきた。
これは希少なバスに巡り合った!! 宮浦観光バスのガーラで、何と2階建て風の外観を持つ、グレースハイデッカー(GHD)だ!!
コロナ禍で大きな経済的損失を負った観光バス事業者にとって、今回の東京オリンピック・パラリンピックの輸送事業の受託は、大きな収入にもなっていることだろう。
8月下旬から開会するパラリンピックに合わせてリフト付きバスも集まるということなので、バスファンにとっての“東京の熱い夏”はまだまだ続きそうである。
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