隣国の韓国から黒船襲来だ。現代(ヒョンデ)自動車が13年ぶりに国内での販売に復帰し、革新的なEV車を投入してきた。「IONIQ5(アイオニック5)」はC、DセグメントサイズのEV SUV。IONIQはヒョンデのサブブランド名で、今後6、7とモデルがデビューしてくる。
ヒョンデ「IONIQ5(アイオニック5)」ヒョンデはこれまで3台のコンセプトカーを発表しており、2019年に「45」、2020年のジュネーブモーターショーオンラインで「prophency」、そして2021年のLAオートショーで「seven」を発表している。いずれもBEVでIONIQシリーズなのだが、まるで異なるデザインのコンセプトモデルだった。
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それはドイツ車のようなファミリールックとせず、それぞれが違う形、役割を持ち、違う責任を担うクルマたちで、チェスの駒をイメージしているという。それらがひとつのチームとなってグローバルマーケットに投入されているのだ。現在韓国本国、北米がメインマーケットで欧州でもヒットしているという。
IONIQシリーズに共通する概念として、技術革新からの発想でものづくりを捉え、感性的な機能を持ち、インテリアではライフスタイルデザインとしたファニチャーライクなものにする。そして見た目の特徴をデジタルだけど温かみのあるグラッフィックであるParametric PIXELデザインを採用するとしている。
そうした概念を盛り込んだIONIQ5はまさに革新的で、ライバルがひしめき合うC、Dセグメントで異彩を放っているのだ。
さらに日本国内での販売方法は、ディーラー販売をせずインターネットでの販売。メンテナンスはヒョンデ指定の整備工場を全国展開するとしており、クルマの売り方からメンテナンスまで革新的な手法で乗り込んできたわけだ。
もうひとつの疑問だが、現在の日韓関係からすると販売に苦労しそうだが、なぜ今このタイミングなのか、ヒョンデのマーケティングに聞けば、社長はもともと日本の自動車関連企業で長年働いており、日本人の製品に対する厳しさをよく知っているという。その日本のマーケットでIONIQ5を評価してもらえれば、大きな自信になるし、評価してもらえるように努力したいという狙いがあるというのだ。
その意気込みから国内に再投入したというわけだ。
狙いどおりのインパクト
3000mmの長いロングホイールベースに、20インチの大径サイズを見事にマッチさせたエクステリアデザインに圧倒される。数多あるSUVのどれにも似ていない外観デザインに強烈なインパクトを受ける。ドアを開け運転席に乗り込むと、液晶メーターの下地が白い。それだけでもインパクトがある。12.3インチのモニターが2つ並列に置かれ、グラフィカルな表示とカメラのリアル画像も同時に映し出され、小癪な印象を持ちつつ「やるなお主」と呟きたくなる。
同サイズのモニターが並ぶスマートなインテリアミシュランのEV専用タイヤパイロットスポーツEVの20インチを装着グラフィカルなイラストのモニターにウインカーを出すとリアル画像が円で表示されるインテリアは水平基調で運転席を「コントロールゾーン」とし、それ以外の空間は「リラックスゾーン」というコンセプトで設計しているという。
そのため運転に必要な操作系は運転席に集中している。それ以外、例えばセンターコンソールは前後に140mmスライドでき、シフトバイワイヤのシフトレバーもセンターにはない。コラムシフトよろしくハンドルの右下に設置され、膝まわりには何もなく足元のスペースは広い。だからソファに腰掛けていると思えるのだ。
ちなみに、シフトバイワイアの操作は、ローリング式で前に回すとドライブ。後側に回せばリバースギアへ。そしてレバーの先端を押せば「P」にシフトされる。
広々したフロントの足元スペース
輸入車には珍しくウインカーが右にあり、シフトセレクターも右下にあるグローブボックスはなんと「引き出し」になっていて大容量だ。まさにファニチャーライクなデザインで未だかつてないアイディアである(かつてあったが思い出せない)。ドア内張にあるアームレストはどこに手をかけてもドア開閉ができるように溝が全長に切られており、デザイン的にも機能的にも秀逸だ。
引き出しスタイルのクローブボックスは機能性も抜群ユニークなのは「ゼログラビティポジション」だ。これは充電時間を車内で過ごすときにリラックスするポジションで、今回試すことができなかったが素晴らしいアイディアだ。充電中、車両を放置できない状況は十分にあるし、海外の高圧充電器であれば10分程度の充電も十分にあり得る。だからこうしたリラクゼーションアイテムはポイント高く評価できる。
踏めば加速も楽しめる
走行フィールは電動車らしい滑らかで静粛性が高く、EV車の特徴を存分に発揮している。革新的なインテリアに包まれ、どの何者にも似ていないエクステリアは街を歩く人たちからの注目度は高い。さらにサンシェードは観音開きで面積の広いパノラマルーフからの太陽光をたっぷり室内に取り込むと、明るいインテリアは従前の概念をことごとく覆していくのだ。
開放感たっぷりのビジョンルーフそしてアクセルを踏み込むと、どぎつい加速を披露する。AWDモデルは225kW/605Nmの出力を持ち0-100km/hを5.2秒で到達する。ちなみに、駆動方式はAWDと後輪駆動の2タイプがあり、搭載バッテリーも72.6kWhと58kWhの2タイプがある。航続距離は618kmと498kmでどちらもガソリン車の代替と考えることができる航続距離だ。
ちなみに急速充電器の出力は350kWまで対応可能で、国内の400V/90kW級なら40分で充電できる。さらに欧州の800V/350kWにも対応しており、CHAdeMOが800Vになった場合、アップデートで対応できるようにハードパーツは搭載済みとしている。またV2HやV2Lに対応し、100V/1600Wのアウトレットを備えている。
プラットフォームはEV専用のE-GMPでモーター、インバーター、減速機をアクスル上に配置し省スペース化しつつ、伝達効率もあげている。またフロントに搭載するPES(power electric system)にはディスコネクターがあり、クラッチで駆動力を切り離すことができる。ECOモードを選択すれば自動で切り離し、ノーマルモードは自動で切り離しと接続を判定しながら稼働している。
高級車レベルの先進機能と遊び心も
安全装備や運転支援システムは現在、各社が搭載しているレベルをほぼ搭載しており、ハンズオフ機能はないもののレベル2のACCを搭載している。特筆はACCを稼働しているとき、地図データをベースに自動で減速するなどの高度運転支援システムを搭載していることだ。さらにHUD(ヘッドアップディスプレイ)にはAR(拡張現実)の表示もあり、プレミアムモデルレベルの機能を備えているのだ。
またパドルシフトでの回生ブレーキは0~3段階あり、長引きすると回生ブレーキのオートモードが機能し、先行車との車間距離を見ながら自動で回生ブレーキの強さが制御されるという。ここにも高級車レベルの先端機能を持っているのだ。
ユニークなのは前後のカメラに機能追加しているのがタイムラプスの動画録画機能だ。その録画した動画はスマホにダウンロードできるというのだから、若い世代のSNSでの展開にも対応しているのだ。またe-mobility power社の急速充電器とは常時通信しており、急速充電器のリアルタイム満空情報や出力情報などがナビ画面に表示することができる。
ハンドルにヒョンデのロゴはなく、インテリア装飾アイテムのようにも見える
助手席シートを運転席から操作できる電動スイッチを備えているこのように装備している機能をあげれば枚挙にいとまがなく、先進性が高く斬新さにも溢れている。だから、IONIQ5はクルマに詳しくなくともEV車の楽しさは伝わると思うし、自動車評論の専門であるドイツ・カーオブザイヤー、英国・カーオブザイヤー、ワールド・カーオブザイヤーを獲得しているのだ。
驚くことにこれだけの機能と性能、センスを搭載しながらも500万円を切る価格は驚異的だ。聞くところによれば現代自動車グループは鉄鋼業が背景にあるようで、韓国版ティッセンクルップということができ、さらにディーラー網を持たないこともプラスされ、車両コストを下げることができているという。
日産アリア、トヨタbZ4X、SUBARUソルテラとサイズや価格も競合するものの、格安感のあるIONIQ5は驚異の黒船と言えるだろう。<レポート:高橋アキラ/Takahashi Akira>
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