SUVのマーケットが停滞しつつある一方で、少しずつミニバンの人気が高まっている。その理由はどこにあるのか? 最新のミニバンを乗り比べ、検証してみた。
自動車マーケットでは以前ほどSUVの人気がなくなりつつある。一方で、ファミリーカーとしての人気が高まっているのがミニバンだ。理由は室内の高さにある。新型コロナの5類移行後、マイカーで旅行に出かけたり、車中泊を楽しむ家族が増えているが、前後席を移動しやすいのは、室内高1400mm以上のクルマだといわれている。SUVでこの広さを確保するのは難しいこともあり、ミニバンの魅力が再注目されているのだ。
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今回、紹介するミニバンは日産『セレナ e-POWER』とフィアット『ドブロ マキシ』。『セレナ』は2022年11月にデビューしたが、本命の「e-POWER」は登場が遅れ、今年5月からデリバリーが始まった。一方のフィアット『ドブロ マキシ』は今年5月に日本に上陸。クルマ好きの方ならご存じのとおり、シトロエン『ベルランゴ』、プジョー『リフター』と共通のボディーを持つミニバンだ。この2台、ボディーサイズも車両価格も同じカテゴリーだが、比較してみると日本と欧州のミニバンに対する考え方の違いがよくわかる。
『セレナ e-POWER』の特徴は、先進運転支援技術による長距離ドライブの安全性やクルマ酔い軽減技術、多彩なシートアレンジなど、家族で旅行するのに使い勝手のいい技術や装備が充実していること。もちろん「e-POWER」のドライバビリティーも大きなポイントだ。試乗してみると、1.4Lガソリンエンジン(98PS)+モーター(163PS)はパワー不足を感じることはない。エンジン始動時に若干の唸り音は発生するが、ふだん使いで気になることはない。動力性能もDレンジでの0→100km/hの加速は8秒台で、スポーティーと言えるレベルだ。一方、街中でeペダルを選択すると、アクセル・オフやブレーキングで回生モードが働く。完全停止はしないが十分減速するので、運転しやすい。まさにフル装備に近い、完成度の高いミニバンなのだ。
一方のフィアット『ドブロ マキシ』も3列シートの7人乗り。外観はシンプルで、室内も実用本位。フィアットは「大人の遊び心を楽しめるミニバン」と位置づけており、オプションも多く用意されている。趣味に合わせてクルマを造り分けられるのが特徴だ。1.5Lディーゼルターボ+8速ATの走りは軽くて俊敏。走りのレベルも高く、趣味の領域を拡張しやすいミニバンに仕上がっている。
商用車ベースの超実用的なミニバン
FIAT『DOBLÒ MAXI』
Specification
■全長×全幅×全高:4770×1850×1870mm
■ホイールベース:2975mm
■車両重量:1660kg
■排気量:1498cc
■エンジン形式:直列4気筒ディーゼルターボ
■最高出力:130PS/3750rpm
■最大トルク:300Nm/1750rpm
■変速機:8速AT
■燃費:18.1km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:429万円
商用車として開発されたため外観デザインは実用性重視。バンパーはブラック樹脂製で、傷がついても部品交換は安価で済む。ヘッドライトから伸びるラインとFIATエムブレムも特徴的。
サイドで目につくのはドア下部にあるブラック樹脂製のエアバンプ。多少のこすれでもボディーに傷がつかない。後席用ドアはスライド式だが手動。頑丈なルーフレールも標準装備。
リアゲートは1枚で大きく開くだけではなく、ウインドウだけ跳ね上げ式で開閉するので車体の後ろにスペースがなくても荷物を出し入れできる。ゲートの開口部は路面から610mmとやや高め。
上質でモダンなハイウェイスター
日産『セレナ e-POWER』
Specification
■全長×全幅×全高:4765×1715×1885mm
■ホイールベース:2870mm
■車両重量:1850kg
■排気量:1433cc
■エンジン形式:直列4気筒ガソリン+交流同期モーター
■最高出力:98PS/5600rpm+163PS
■最大トルク:123Nm/5600rpm+315Nm
■変速機:電気式無段
■燃費:18.4km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:479万8200円
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新型『セレナ』のフロントマスクは、横長のライトとグリル模様で構成されている。V字形のデザインは評価が高いようで、軽自動車の『ルークス』のマイナーチェンジでも使われている。
全長は『ドブロ マキシ』より5mm短く、ホイールベースも105mm短い。全高は15mm低いプロポーション。後席用ドアはスライド式で自動開閉する。タイヤは205/65R16を装着している。
リアウインドウは『セレナ』のほうが低い位置から大きく開くので、荷物の出し入れがしやすい。開口部の高さは路面から530mmと低く、重い荷物の出し入れがラクだ。
居住性、機能性、細部まで使い勝手にこだわった新時代のミニバン
FIAT『DOBLÒ MAXI』
エンジンルーム
パワーユニットは4気筒1.5Lのディーゼルターボで130PS、300Nmを発生する。ガラガラ音は若干あるが1000回転からトルクフルに。
運転席と各種装備
ハンドルはレザーだが、室内は黒一色の実用車カラー。8インチ液晶画面の下の小さなダイヤルが8速ATのシフト。シンプルな室内。
シートスペース
シートはファブリック素材を採用、体をしっかり支えてくれる。室内は2×3×2の7人乗り。どこの席でもゆったりしており快適。
ラゲージスペース
3列目のシートの下にトノカバーを収納できる。3列シートを外すと、2列目の後部にトノカバーをはめることができる設計。
【 ココがポイント!】2列目シートは独立式で使い勝手もいい2列目シートは1脚ずつの3人掛け。シートはそれぞれスライドはしないが背もたれを前倒させるとスライドダウンでフラットな床になる。前席の背面にテーブルがついている。
【 ココがポイント!】3列目のスペースも広くシートアレンジも多彩3列目は1脚ずつの2人定員で、足元のスペースも十分。3列目は固定されており、スライドはしないが、ワンタッチで折りたためる。さらにシートごと取り外すことも可能。
日産『セレナ e-POWER』
エンジンルーム
直4、1.5Lのガソリンエンジンに交流同期モーターを組み合わせている。そのせいもあってか、フロントがややヘビーになった印象。
運転席と各種装備
大型の液晶画面とメーターパネルが目につくインパネ。ハンドルは小径で、握りも太めのスポーティーなタイプ。シフトはスイッチ式。
シートスペース
前席左右でウオークスルーできる室内空間。定員は2×2×3の7名乗車。2列目、3列目もスライドするのでレッグスペースも広さを選べる。
ラゲージスペース
3列目シートを使用してもラゲージスペースは多少確保されている。3列目は3人掛けで、中央のヘッドレストを取り付けて使う。
【 ココがポイント!】細部まで気配りのあるデザイン
変速はパネルタイプを採用。Rボタンだけ一部が盛り上がっているので、シフトする時に目で確認しなくても、R(リバース)にシフトすることができるようになっている。世界初の仕様だ。
【 ココがポイント!】力を使わずともスムーズにカスタムできる3列目シート
3列目のシートアレンジは、座面を折りたたんで脚のフックを外すと、左右に跳ね上がる。座面に備えられたロープで固定して使う。2列目シートはスライドするので、荷室は広々としている。
カスタム重視なら『ドブロ』、快適性重視なら『セレナ』
FIAT『DOBLÒ MAXI』
[運動性能]『セレナ e-POWER』も走り出しからトルク感があり軽快だったが、『ドブロ』のディーゼルはさらに軽快。車体の軽さが大きい。19点
[居住性]2列目シートがスライドせず、ドアウインドウが1/3程度開かないのは残念。天井は高く、床もフラットなのはうれしい。18点
[装備の充実度]先進安全技術や運転支援技術の導入には積極的だが、あくまで商用車なので快適装備や豪華装備とは無縁。17点
[デザイン]基本的に目立たないことをよしとするイタリアンコマーシャルバン。ボディーカラーはホワイト、グレー、ブルーの3色。18点
[爽快感]ディーゼルターボのトルク感とどっしりした直進性が印象的。リニアなコーナリング性能はスポーツミニバンの証し。18点
[評価点数]90点
日産『セレナ e-POWER』
[運動性能]先進安全性能を駆使しながら「e-POWER」をペダル操作で楽しめるなど、運転の新しい楽しみ方を教えてくれるクルマ。18点
[居住性]2列目をセパレートにしたことで、2~3列目へのウオークスルーも可能になった。3列目は左右に跳ね上げ方式を採用。18点
[装備の充実度]先進運転支援技術を全車に装備。e-POWER、クルマ酔い軽減、高剛性ステアリングなど装備満載のクルマ造りは魅力的。19点
[デザイン]マイナーチェンジで上級グレードに採用されたフロントマスクのデザインは上質感があり、新しい日産の顔になりそう。18点
[爽快感]e-POWERと8速ATの走りは7人乗りミニバンを小気味よく走らせてくれる。ドライブモードによる切り替えも節度あり。18点
[評価点数]90点
取材・文/石川真禧照 撮影/望月浩彦
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2023年10月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
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みんなのコメント
>1.4Lガソリンエンジン(98PS)+モーター(163PS)はパワー不足を感じることはない。
シリーズハイブリッドのe-POWERなら足しちゃだめでしょ、タイヤを回すのはモーターの163PSだけ、エンジンは発電機回すだけなんだから。