日本で快適に乗れるための秘策も多数導入
日本には13年ぶり、4ナンバーサイズからグローバルサイズに成長して里帰りした8代目トヨタ・ハイラックス。世界中の道なき道で鍛えられた走破性や耐久性、ピックアップならではの乗用車ライクな乗り心地を生み出すために、各部門のエンジニアが長年にわたって熟成してきた。今回は、そのアピールポイントを開発陣に熱く語っていただいた。ハイラックスのエンジニア直伝のセールスポイントはココだ!
製品全般担当 CV Company CV製品企画 ZB主幹 栗田賢二さん
今なお6代目に乗るオーナーに新型を届けるのが責務
ピックアップトラックは、キャブオーバー型に比べて荷台が少ないですが、世界的に多くの支持を得ています。これは乗用車感覚の運転のしやすさや高い安心感からでしょう。日本でも北海道を中心に9000台の6代目ハイラックスが現存していますが、そのお客さまへ新型を届ける責務があるとわれわれは考えています。
国内向けは台数が限定されるので、寒冷地仕様を標準として、高トルクワイパーモーターやワイパーデアイサーなどを装備しています。売るからには全国に適応できるクルマとするのも、われわれの約束のひとつなのです。
性能企画担当 CV Company CV車両実験部 VPL-1グループ 主幹 浅野和男さん
ボンネットに水がかかるような水深でも走行できる渡河性能がある
もともと耐久性のあるクルマですが、7代目のIMVになってから現地現物でグローバルに徹底した耐久テストを実施しています。オフロードではとくにオーストラリアが過酷です。一般道でも冠水時の水深を示す棒が路側帯にあるくらいで、渡河走行が珍しくありません。深い水を走ると船のように波が立ち、ボンネットに水がかかるぐらいですが、車両全体でエンジンへの吸気構造を工夫して、シュノーケルを装着しなくても水を除ける設計にしています。
操縦安定性/乗り心地担当 CV Company CV車両実験部 動的性能開発室 主任 渡辺正春さん
日本仕様は車高を10mm下げて歩行者保護の基準を満たした
ピックアップは乗用も業務に使われるため、空車と積載時の変化をできるだけ少なくすることがポイントです。また、サス設定にあたっては、日本、タイ、南アフリカ、南米で走り込みを行い、舗装路、ダート、オフロードといった路面の状況、積載の有無を問わず、良好な走行性能を確保しました。日本仕様は、オフロード性能を十分確保しつつ、積車、空車両面の操安性、乗り心地の性能バランスを考慮し、グローバルに展開しているサス仕様を採用しています。また、法規対応のため車高は10mm下げています。
ボデー担当 CV Company CVボデー設計部 第2ボデー設計室 主任 池田憲昭さん
キャビンとデッキに一体感をもたせたデザインでカッコ良く仕上げた
8代目では、キャビンとデッキの間にオーバーラップ部を設けて固まり感を演出。ステップ周囲の樹脂も一体感を持たせて、流れのある外観にしました。空力にもこだわって、ピックアップ初のタイヤ前スパッツを装着。ルーフ高を下げることでも空力を向上させています。また、ワイパー位置を下げて視界の改良も行っています。日本導入でいちばん苦労したのは、左前方と側面を確認する補助確認装置(ミラー)でしたね。
フレーム/サスペンション担当 CV Company CVシャシー設計室 主任 河野雄二さん
フレームの剛性向上で乗用車ライクの安心できる操縦性を実現
シャシーはラダーフレームの断面高さを増やして剛性を高くし、幅広のスパンとしました。サスペンションの取り付け幅も広くしてロール剛性を高めています。安全面でもフレームに衝撃吸収部や変形抑制部を効果的に配置して、万一の際の保護性能を確保しています。また、部品配置の見直しでサスペンションがスムースに動きます。走破性の面でも下まわりの突起部をなくして、悪路でも引っかからないように、地道で細かな工夫がいろいろと施してあります。
NV(騒音・振動)担当 CV Company CV車両実験部 動的性能開発室 主任 山本浩輝さん
各国で求められる音域の違う静粛性に対応
ハイラックスはグローバル車なので、世界中の人々の声を聞きながら開発が行われます。たとえばノイズ面では、言語の特性から欧米では高音、日本では低音が気になりやすく、新型は両方とも改善しています。ただし、静粛性一辺倒でなく、低音域ではトラックならではのパワー感も伝えています。また乗用車と違い、フレームにボディが載せられていますが、ここでのわずかなバラツキが性能個体差につながります。そこで、部品精度・組み付け精度にも踏み込み、品質確保に努めています。
走行性能担当 先進技術カンパニー 車両技術開発部 第1車両試験課 チームリーダー 佐野直之さん
いかにゆっくり走れるかを極めるためにトラクション性能を磨き上げた
オフロードを走る極意のひとつに、「どれだけゆっくり走れるか?」があります。ゆっくりなら車両の状態がつかめ、路面を崩さず車両が干渉しても軽いタッチですみます。そこで、大事なのがトラクション性能です。今回搭載された「アクティブトラクションコントロール」は、オーストラリアでオフロード走行を繰り返しました。それはアクチュエーターがオーバーヒートしかねない過酷なものでしたが、世界各地のオフロードに対応できるよう徹底して煮詰めた自信作です!
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