2024年のF1前半14戦を終えた段階で、角田裕毅とダニエル・リカルド擁するRBは、34ポイントを獲得してコンストラクターズランキング6番手につけている。ただ彼らの各グランプリのパフォーマンスを数値化しライバルと比較すると、予選パフォーマンスではたしかに6番手という順位は理に適ったものだが、前半終盤に獲得したポイントは非常に貴重だったと言うことができよう。
角田は14戦中7戦で入賞し、22ポイントを獲得。チームメイトのリカルドも4戦入賞で12ポイント獲得と、RBはここまで14戦で34ポイントを集めた。ピーター・バイエルCEOの求めにより、VCARBと呼ぼうか……。
■角田裕毅のシーズン後半戦への意気込み……目標は打倒アストンマーティン「ドライバーとしてもチームとしても良い形」
マシンのパフォーマンスを数値に置き換えていくと、特にカナダGPまでのVCARBは、かなり好調だったと言うことができ、入賞という結果も当然だったと言えよう。
■明らかにパフォーマンスが低下したスペインGP以降
各グランプリで各セクターのベストタイムをチームごと(つまり2台のマシンのうち速い方)に抽出し、当該グランプリの最速マシンとの比較を数値化、その予選のパフォーマンスの推移を示したのが、上のグラフである。
RBは開幕戦では、トップ5チームとハースに先行された7番手だった。その後は3戦連続でハースを上回ったが、それでもトップ5チームが先行。全チーム2チームを走らせている現在のF1では、トップ5チーム10台がきちんと走り切れば、それ以下のチームに入賞の可能性はまずない。
そんな中角田は、第3戦オーストラリアGPで7位、第4戦日本GPで10位と、厳しい状況の中でもしっかりとポイントを獲得したのは、レース展開が向き、戦略も上手くいったということもあるものの、評価に値するところだと言えよう。
第5戦以降のRBは、上位とのパフォーマンス差を縮めていった。しかしハースやキック・ザウバー、さらにはアルピーヌらがその間に入ってきたため、RBとしては厳しい状況となったグランプリもあった。そんな中、チームの母国戦である第7戦エミリア・ロマーニャGPでは、あくまで予選だけながらメルセデスとアストンマーティンをも上回りパフォーマンス上では4番手。その後モナコではメルセデスが復調し5番手、カナダではフェラーリが不調に陥ったため4番手と、入賞の可能性が高いグランプリが続いた。
この間、マイアミでは混戦の中角田が7ポイントを獲得。エミリア・ロマーニャとモナコでも、ポイントを手にした。カナダでは角田は最終的に入賞を逃したものの、難しいコンディションの中終始入賞圏内を走った。また角田が入賞を逃した一方、リカルドが8位4ポイントを拾うこととなった。
レースを重ねるごとに調子を上げていったRB。そしてスペインGPでは待ちに待ったアップデートが投入され、さらにポジションが上がることが期待された。しかしその期待は叶わず、逆にパフォーマンスを落としてしまったのは、既報の通りだ。
その苦悩は予選パフォーマンスにも現れており、このスペインGPでは10チーム中9番目の戦闘力しか発揮できなかった。オーストリアでは若干持ち直したものの、イギリスでもやはり9番手。ベルギーでは8番手だった。カナダまでの9戦とは、RBが置かれるポジションは変わった。入賞を目指すのは実に難しいというところになったのだ。
しかしそんな中でも角田がイギリスとハンガリーで入賞、リカルドもオーストリアとベルギーでポイントを掴んだ。この合計6ポイントは、シーズンを全体を考えれば、非常に大きな意味を持つことになるかもしれない。
■決勝パフォーマンスは低迷も、遅かったわけではない?
ところでこちらのグラフは、レースのみのパフォーマンス推移をグラフ化したものである。レース中のパフォーマンスは、数値化するのが実に難しい。このグラフは、予選と同じ抽出方法でパフォーマンスを数値化したものだが、最後のタイヤ交換が遅ければ遅いほど速いと算出されてしまうことになる。またレースでは、絶対的なペースよりもタイヤのデグラデーション(性能劣化)傾向がどうなっているかという方が重要度は高い。なのであくまで参考としてご覧いただきたい。
このレースパフォーマンスの推移グラフを見ると、RBは非常に低調なのが分かる。トップと1%差以内なのはマイアミとモナコの2戦のみ、それ以外は1.5%以上の遅れである。1周のラップタイムが90秒のサーキットならば、1周あたり1.35秒以上遅れてしまう計算だ。しかも相対的な順位でも、日本とスペイン、そしてオーストリアは最下位……モナコ以外はすべて7番手以下だ。
ただそれでもこれだけポイントを積み重ねてきたということは、RBがレースで遅いということを表しているわけではなく、しっかりと状況を把握し、前に出られたくないマシンを抑え込む戦略を採ってきた証と言えるかもしれない。
角田の事例を見てみると、オーストラリアではウイリアムズやハースを警戒した戦略を採った。鈴鹿ではペースを落として後続のストロールを抑え込み、ストロールがこれに対抗するためにピットインすると、角田は一転ペースを上げて逃げ切る走りを見せた。それ以外のレースでも、後続を抑えたり、タイヤをマネジメントする走りに徹したりすることが多かった。そのため、レース中のパフォーマンスがいい数字にはならなかっただけである。
これはつまり、角田が自分のペースをしっかりとコントロールすることができ、さらにチームも周囲の状況をしっかりと見極めた戦略を立案し角田の指示した結果だと言うことができるだろう。
さてオランダから始まる後半戦。RBはどんな活躍を見せてくれるだろうか? 角田はひとつ前を行くアストンマーティンを打倒することを目指している。
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