この記事をまとめると
■自動車ライターになる方法をフリーランスのライターが解説
まさかの大都会なのに駐車場所を忘れて凍死寸前! 自動車ライターが経験したクルマとんでも事件簿【山崎元裕編】
■自身で営業をしないといけないほか、駆け出しのころは金銭面でキツいことも多々ある
■住宅ローンなど大きな買い物をする際は不利になることも多い
クルマ好きの天職!? 「自動車ライター」への道!
自動車ライターになるには資格はいりませんし、免許もありません(Webライティング能力検定や技能検定などの各種資格はあります)。自分で名刺を作り「自動車ライターの○○○です」と配り歩いてもOKです。つまり、「自己申告制」です。そういう点ではYouTuberに近いかもしれません。
自動車ライターを名乗ること自体、ハードルが低い分、新規参入する方も多く、ライバルもたくさんいます。では、並み居るライバルたちを退け、仕事を受注するための方策とは? フリーランスの自動車ライターって「食っていけるのか?」にも触れています。
■フリーランスの自動車ライターになるためには?
「待っていればいつか仕事の依頼がある」ということはほぼありません。狩りと同じで自分で仕事を取りに行く必要があるのです。自動車ライターとして仕事を獲得するにはいくつかの方法があります。
●メディアの編集部員として就職する
個人的にはこれが一番の近道なように感じます。正社員として就職できれば生活も安定しますし、仕事を覚えながら社内外に人脈を作りつつ、ライティングをはじめとするライターに必要なスキルを磨いていけます。
●とにかく営業をかける
ライターを募集している・していないに関わらず、メディアの問い合わせフォームなどを通じて「ライターとして記事を執筆したい」という意思を伝えます。何らかのテスト(課題文の提出など)があり、その試験をクリアすると、晴れてライター陣として迎えられます。
●自分自身で発信してみる
ブログやX(旧Twitter)、noteなどを活用して「自分はこんな面白い記事や文章を書いて(書け)ます!」とアピールをするのも有効です。運良く編集担当者などの目に留まると、向こうから原稿依頼のオファーがくることも(本当に)あります。自身のホームページを立ち上げたり、ブログやnoteで記事を書きためておくと、応募するときのポートフォリオとして役立ちます。
●ツテをたどる
日頃から「俺(私)ライターをやってみたい!」とアピールすることで、友人・知人でメディア関係の仕事をしている人を紹介してくれる可能性が高まります。紹介っていつの時代も強いです。無事に仕事を受注したあと、継続して受注できるかはあなたの腕次第です。
■フリーランスの自動車ライターに必要なスキルとは?
●文章力
何をもって文章力の有無を判断するか難しいところではありますが「読みやすい文章か」、「読んでいて疲れない文章か」はひとつの目安になります。自信がない場合はライター養成講座を受講するのも手です。しかし、受講したからといってすぐに仕事につながるわけではないので、時間と資金に余力があれば……くらいがいいと個人的には思います。
●締め切りを守る
もはや自分のことを棚に上げていますが、締め切りを守れることはかなりの強みになります。それだけ守れないライターさんが多いのです(筆者もたまに遅れます。関係者の皆さま、いつもすみません)。遅れそうな場合は締め切り前に「遅れることのお詫び」と「いつまでに納品できるか」具体的に伝えてフォローするだけでも印象が変わります。
●記事テーマの企画提案ができる
編集部からテーマをもらわないと原稿が書けないなんて言っていられません。自分でテーマを考え、提案し、原稿を書いて仕上げる。自分自身で記事テーマの企画提案ができて、なおかつ編集部から依頼のあったテーマにも対応できるハイブリッドタイプだと重宝されることが多いです。
●明確な得意分野があると強い
イベント取材はお手のもの、メカに関する知識や、イタフラ系に強い、旧車系に強いなど、明確な得意分野があると強いです。編集者から「この分野ならこの人!」と認知してもらえるようになればしめたものです。
●「プラスアルファ」のスキルがあるとさらに強い
原稿が書けることに加えて、イラストが描ける、撮影と執筆をセットで依頼できる(”カメライター”なんて言われています)、動画が撮影できる、幅広い人脈……など「プラスアルファ」の要素があるとさらに強いです。すぐには思い浮かばない……というのであれば、とにかくレスポンスの早さにこだわってみてください。返信が早いことも重要なスキルです。
●人として付き合いやすい
「なんだそんなことか」と思うかもしれませんが、これもかなり重要なスキルだと感じています。いくらいい原稿が書けても、気難しい、気分にムラがある、とっつきにくい……など、編集者の方に面倒な相手だと思われると仕事をまわしてもらえなくなることも。人として付き合いやすいことも重要な要素です。
■フリーランスの自動車ライターに向いている人と向いていない人の違いは?
●向いている人
○文章を書くのが好き:これに尽きます。
○調べることが好き:分からないことはすぐに調べてみる習慣がある方はライター向きです。
○客観視できる:一歩引いて見られるかどうか。
○鋼のメンタル:鈍感力とも。某コメント欄で「フルボッコ」にされることもありますし……。
○柔軟さ:「自分はこれしかできません」だと仕事の幅が広がらないので。
○レスポンスが早い:早ければ早いほどいいです。遅くとも「24時間以内に!」が鉄則。
○謙虚さ:編集者の修正依頼(下手をすると全文リライトもありえます)に対して素直に受け容れられるかどうか。
●向いていない人
○上から目線気味:他人から指摘されたことがある方はとくに。
○批判・否定が多い:普段からSNS等で批判や否定の書き込みが多い方は要注意です。
○他人の評価が気になる:先述の某コメント欄を真に受けるとメンタルをやられます。それくらいヘコむんですよ……。
○自己顕示欲が強すぎる:自分の名前を売り込みたい気持ちはわかりますが、ここは謙虚に。
○こだわりが強すぎる:必要以上にこだわりすぎると、書いていて辛くなります。適度なゆるさも必要かと。
○レスポンスが遅い:これは致命的。とにかく返信は早く!!
○「根拠のない自信」が捨てられない:自己評価やプライドが高いとが足かせになることが多いです。
ぶっちゃけそれだけで生活できるの?
■フリーランスの自動車ライターに必要なものは?
個人的には「PCとオフィスチェアはケチらない方がいい」を強く実感しています。ちなみに、筆者愛用のPCはMacBook Pro16インチを、机は独立したときからずっと使っているニトリのアウトレット品(たしか2万円くらいで購入)、オフィスチェアは数年前に思い切ってアーロンチェアを導入しました。まさにお値段以上!!
○スマートフォン:すでにほとんどの方がお持ちだと思いますが念のため。
○名刺:せっかくなので、渡した相手に印象に残るデザインにしてもみてください。屋号を決める必要もあります。
○パソコン:最新のハイスペックマシンはいりませんが、長時間使用するので定期的な買い替えは必要だと思います。
○長時間座ってもつかれないオフィスチェア:ここ、大事です。高くても長時間座っていて疲れないオフィスチェアを選んでください。新品が厳しいなら程度の良い中古でもOK。
○ホームページやnote:相手が検索して仕事が舞い込むこともあるので必須です。こだわるなら屋号と合致するドメインを取得してもいいかもしれません。
○カメラ:できれば一眼レフが理想ですが、ここは予算次第です。
○銀行口座:個人とは別にフリーランス用の口座が必要です。
○クルマ:あえてインパクトのあるクルマを所有するのも手です(それがきっかけで仕事が舞い込むこともありますし)。都市部であればレンタカーやカーシェアの方が割安な場合も。
■フリーランスの自動車ライターって「食っていけるの?」
おそらく、ここが気になる方が多いのではないでしょうか? 専業のライターとして果たして「食っていけるのか?」問題。
家族がいる、または独身か、賃貸か実家暮らしか……などなど、置かれている境遇にもよりますが、専業のライターでは個人的にはかなり厳しいと感じています。
とくにライターデビュー時は少ないギャランティで多くの文字数を書かなければならなかったり、手間の割にギャランティが安かったり……と苦労が報われない時期が続きます。
原稿1本あたりのギャランティが仮に1万円(税別)だとします。月30本書いたとして30万円+3万円(消費税)−3万630円(源泉徴収税)=29万9370円が手取り分です。後述しますが、少なくとも、これまでは。 ※媒体の規模などにもよりますが、ライターデビューしていきなり1本1万円の記事が書ける可能性はかなり低いように思います。
しかも、月30本となると1日1本ずつ書き上げてもほぼ毎日休みなしですから、丸1日机にかじりつきっぱしになります。当然、休みはありません。下手をすると年末年始も仕事です。また、1社だけに依存すると、突然仕事が打ち切られる(可能性は大いにあります)と、翌月から収入はゼロです。
安定した収入が見込める本業があり、副業としてライターをやる「兼業ライター」がいいように思います。既婚者であれば、家庭の主な収入はパートナーで、こちらはサポート側……くらいが個人的にはいいかもしれません。
■フリーランスの自動車ライターも避けて通れない「インボイス制度」がスタート
先ほど『原稿1本あたりのギャランティが仮に1万円(税別)だとします。月30本書いたとして30万円+3万円(消費税)−3万630円(源泉徴収税)=29万9370円が手取り分です。少なくとも、これまでは』と記しました。
10月からは免税事業者(基準期間における税込みの売上高が1000万円以下)であっても納税義務が生じるようになりました。どこかで耳にしたことがあるであろう「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」がスタートしたからです。
ライターとして仕事が決まったとき、クライアント側から「適格請求書発行事業者の番号を教えてください」と聞かれる確率が高いと思われます。ここで「ありません」と答えると「これから登録する予定はありますか? ありませんか?」と問われるはず。
あくまでも筆者の感覚値ですが、現時点では「今後も予定はありません」の選択肢はほぼないと感じています。実質的に「適格請求書発行事業者の登録申請手続が必要」の一択です。この登録番号を明記したものでないと、インボイス(適格請求書等)としての効力がないのです。つまり、請求書として処理してもらえません。
免税事業者から、新たに「適格請求書発行事業者=課税事業者」として登録した場合、納税義務が生じるため、実質的に自身の取り分が減ります。これまでは消費税の納税を免除されていた分(つまり懐に入っていた)を国に収めなければならないのです。
ただし、フリーランスの場合は開業から2年間は要件を満たせば免税事業者として扱われますし、6年間の経過処置があるので、すぐに消費税分の全額を納付するわけではありません。この期間に頑張って仕事を増やし、ギャランティを上げていければいいのです!(……と、このくらいの気概が必要です。ほんとに)。
■まとめ:それでもフリーランスの自動車ライターになりたいとしたら……
人生いちどきり。やってみなければわかりません。まずは兼業ライターからスタートして、仕事が軌道に乗ってきたら独立して専業ライターになる方法もありだと思います。
筆者の実体験として、独立する前にやっておいた方がいいことがあります。それは「ローン」です。
ローンを組んででも買いたいクルマがある、家が欲しい。とくに後者はフリーランスになると本当に大変です。なかなか住宅ローンを組ませてもらえないばかりか、ようやく組めたとしても融資額が低かったり、額が低くても長期のローンでないと審査が通らなかったりします。頭金ゼロのフルローンなんて論外です。
融資する側は年間の売上げには目もくれません。確定申告した際の「所得金額」を重視します。仮に1年間の売上げが500万円として、経費を差し引いた所得金額が250万円だったとしたら、この「250万円」で融資額を査定してきます。過去3期分の平均値が基準となるので、この額が低いと、それだけ住宅ローンの査定額が厳しくなるのです。
「メガバンク」といわれる大手銀行ほど住宅ローンの審査が厳しく、金利が高いフラット35などを使えば融資が通る可能性もありますが、その分、月々のローンに金利分(プラス数万円)が上乗せされます。これが何十年も続くわけですから馬鹿にできないのです。
かといって、ものすごく稼いでいるから住宅ローンがすんなり通るかというとそうでもありません。テレビ番組などで「芸人、家を買う」という企画がありますが、名の知れた芸人さんが住宅ローンを組む際に苦労している場面を見たことがあるかもしれません。「いまは好調でも、来年やそれ以降はわからない」とみなされるわけです。
ひょっとしたらこの先、売れなくなるかもしれないし、体調を崩して休業するかもしれない。基本的にはフリーランスもこれと同じです。悲しいかな「フリーランスは安定した収入が得られにくい=社会的な信用度が低い=ローンの支払い能力が低い」位置づけにあります。
老婆心ながら「フリーランスの自動車ライターにはなりたいけれど、近い将来結婚を予定していて、家も買うつもり」といった境遇にある方は、パートナーの方と超真剣に相談してみてください。ここをうやむやにするとあとで大問題になります。
お相手の方の実家が裕福だったり、社会的な信用度が高い公務員や、士業や看護師などの国家資格を持っているとペアローンを組むときに有利です。しかしその分、頭が上がらなくなることを覚悟しておいてください。自身の足りない分(社会的な信用度)を補ってくれているわけですから……。
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みんなのコメント
特に、小林彰太郎氏や徳大寺有恒氏が世を去られた10年ほど前あたりからは全体的な質の低下が顕著になってきたと思います。この2氏のように「折に触れて読み返したい」と思える記事などまるでなし。
現在でも、会員制メルマガをされているような方は気合の入り方が違うのか対価を払うだけの価値のある記事を書いてくれていますが。