現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > レーシングチームとのコラボ ロータス・エラン BRM 最高傑作のベスト版 前編

ここから本文です

レーシングチームとのコラボ ロータス・エラン BRM 最高傑作のベスト版 前編

掲載 1
レーシングチームとのコラボ ロータス・エラン BRM 最高傑作のベスト版 前編

ロータスとBRMのコラボレーション

長い自動車史をさかのぼると、興味深いコラボレーション事例が少なくない。自動車メーカー同士のこともあれば、レーシングチームやドライバーとの協働という場合もある。

【画像】ロータス・エラン BRM 先代のエリートと最新のエミーラ/エヴァイヤ・プロトも 全97枚

それが成功する時もあったが、残念な結果もゼロではなかった。フィアット・チンクエチェント・シューマッハや、フォード・ヒーレー・フィエスタなど、過去には風変わりなモデルも登場している。

コラボレーションは、時として強い輝きを放つことがある。世界で最もハンドリングに優れたスポーツカーをベースに、一線で活躍するレーシングチームが手を施した、1967年の事例のように。

1960年代といえば、BRM(ブリティッシュ・レーシング・モータース)がF1でコンストラクターズ・タイトルを獲得した黄金期。コーリン・チャップマン氏が、代表作の1台を生み出した時期とも重なる。素晴らしい融合が生じても、不思議ではなかった。

チャップマンの傑作、初代ロータス・エランは、改めてご紹介する必要がないかもしれない。タイプ14 エリートの後継モデルとして登場した、小さな2シーター・スポーツカーだ。今でも、史上最高のロータスと評する人も少なくない。

強固なスチール製バックボーンシャシーに、軽量なグラスファイバー製ボディを結合。同時期のMGBやトライアンフ・スピットファイアが、リーフスプリングにオーバーヘッド・バルブ・エンジンなことを考えると、水準は別次元といっても過言ではなかった。

シャシーの能力を引き出したツインカム

そんなエランを成功へ結びつけた核心的な要素が、ツインカム・エンジン。小さく力強い心臓が、俊敏なシャシーに不足ない動力性能を与えた。

設計を手掛けたのは、技術者のハリー・マンディ氏。フォード社製の一般的な116Eエンジンブロックをベースに、最先端といえたDOHCヘッドが載せられている。

それまでロータスが採用していた、コベントリー・クライマックス社製ユニットより安価で、パワフルでもあった。シリーズ3のSEグレードでは、最高出力116psがうたわれた。

公道用スポーツモデルとして生まれたエランだが、世界中の人々はその可能性に注目。発売当初から、スプリントレースやヒルクライム・イベントで活躍した。より高い性能を引き出す、アフターマーケット市場も急速に拡大した。

チューニングに対する要望へ応えるべく、ロータス自らも高性能版のエラン 26Rをリリースする。だが、それ以上を求める周囲の声が止まることはなかった。

そこで、エランとBRMエンジンという融合を高めるべく、開発を任されたのがF1ドライバーのマイク・スペンス氏。BRMはエラン 26Rだけでなく、ヨーロッパのレーシング仕様、タイプ47用エンジンも供給しており、以前からロータスとの結びつきは強かった。

一方のスペンスは、1963年からコベントリー・クライマックス社製エンジンを搭載したロータス25で、F1グランプリを戦っていた。BRM社製エンジンを載せたマシンには、苦戦続きだったが。

グリーンの塗装にオレンジのバンパーが鮮烈

BRMでエンジニアを務めていたトニー・ラッド氏と、スペンスが導き出した計画は比較的単純。未塗装のボディをロータスから取り寄せ、英国東部、リンカンシャー州のBRMへ運び、より高出力なエンジンを搭載するというものだった。

エランはキットカーとしても販売されており、ボデイとエンジンは別々に購入することが可能。エンジンの載せ替えも、困難ではなかった。BRMのツインカム・エンジンには、132psか142psという2種類が用意された。

チューニングとしては安全マージンが大きく確保された内容で、記録では21基のエラン用エンジンが組まれている。しかし、実際にエラン BRMとして形になったのは、その半分程度だったと考えられている。

今回ご紹介するのは、そんな貴重なエラン BRMの1台だ。イアン・ストウ氏が所有する1968年式のタイプ36 フィックスドヘッド・クーペで、シャシー番号は006-02。当時125ポンドの追加料金が支払われた、スペシャル・エクイップメント(SE)仕様となる。

このエランが特別だということは、見た目からも明らか。フィックスドヘッド・クーペというだけで魅力的に映るし、深いラストリーン・グリーンの塗装に鮮やかなデイグロ・オレンジのバンパーが鮮烈だ。当時のF1チームのカラーリングが模してある。

初代オーナーは英国西部、ランカシャー州に住む紳士。ヒルクライムへ積極的に参加しつつ、1987年まで大切に乗っていたようだ。類まれなドライビング体験に浸っていたに違いない。

本来あるべき姿とは到底いえない状態

あえての、タフなスチールホイールを履き、ウッドパネルのダッシュボードとパワーウインドウという、豪華装備が組み合わされている。パフォーマンスとラグジュアリーとが、絶妙にミックスされていた。

惹きつけられる容姿だが、20年前の発見当時は、ヤツレきった状態だったという。「オリジナル・コンディションでしたが、激しく走り込まれてきたようです。その後、ドイツで長期間保管されていました」

「トランクリッドには、大事故の修復痕がありました。ボディは似た色で部分的に再塗装された状態。エンジンからはオイルが派手に漏れていて、レブカウンターは不動。ヒーターも詰まっていました」

「注目を集めるクルマでしたが、本来あるべき姿とは到底いえないものでした。ロータスへ確認を取ると、本物のエラン BRMであることが判明。過去のテスト記録や、所有権変更の書類なども残っていたんです」

「クラシックカーとして望ましい資料で、購入を決める1つになりました」。と話すストウが、このエラン BRMを手に入れたのは2010年。しばらく英国のドニントン・グランプリ・コレクションに展示されていたが、徹底的なレストアへ移された。

ボディはシャシーから分離され、表面を研磨。再塗装のためにアラン・リガルズフォード氏へ送られた。現在スペシャライズド・ペイントワーク社を営む彼は、1967年にスペンスの元で塗装を手掛けており、新車のエラン BRMも仕上げた人物だった。

驚くことに、45年前の塗料も発見。デュポン社の協力を借り、完全に一致する色が新たに調合された。

この続きは後編にて。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

最後の非電動・非ターボの水平対向6気筒…ポルシェ『911 GT3 RS』をスクープ!
最後の非電動・非ターボの水平対向6気筒…ポルシェ『911 GT3 RS』をスクープ!
レスポンス
半世紀前の名車バイクの走行距離がなんと“60km”!? 極上のホンダ「CB500Four」をイタリアで発見 気になる価格とは
半世紀前の名車バイクの走行距離がなんと“60km”!? 極上のホンダ「CB500Four」をイタリアで発見 気になる価格とは
VAGUE
全長3.9m! ダイハツの「コンパクトSUV」は“一文字テール”が未来的! パワフルな「1200cc×ハイブリッド」やターボ搭載した「トレック」とは!
全長3.9m! ダイハツの「コンパクトSUV」は“一文字テール”が未来的! パワフルな「1200cc×ハイブリッド」やターボ搭載した「トレック」とは!
くるまのニュース
 専用品がない旧車や緊急時の味方!!「液体ガスケット」とは?【バイク用語辞典】
専用品がない旧車や緊急時の味方!!「液体ガスケット」とは?【バイク用語辞典】
バイクのニュース
「支払は今度で……」なんていまだ人情話もある日本の路線バスもシッカリ経営に! キャッシュレス化がもたらすメリットとは
「支払は今度で……」なんていまだ人情話もある日本の路線バスもシッカリ経営に! キャッシュレス化がもたらすメリットとは
WEB CARTOP
【KTM 990RC R発表】RC8シリーズ以来の大排気量スーパースポーツRC・公道へ再降臨!デビューは2025年春以降
【KTM 990RC R発表】RC8シリーズ以来の大排気量スーパースポーツRC・公道へ再降臨!デビューは2025年春以降
モーサイ
悔しい予選に終わったノリス。王者争いには悟りの境地「最初の6戦で決着していた」今は打倒フェラーリに集中
悔しい予選に終わったノリス。王者争いには悟りの境地「最初の6戦で決着していた」今は打倒フェラーリに集中
motorsport.com 日本版
【カブリオレ対決】BMW対メルセデス 6気筒エンジンを搭載するオープントップのM440i xDriveとCLE450のガチンコ勝負!
【カブリオレ対決】BMW対メルセデス 6気筒エンジンを搭載するオープントップのM440i xDriveとCLE450のガチンコ勝負!
AutoBild Japan
トヨタ「和製スーパーカー」がスゴイ! 約500馬力「直6」風エンジン搭載&“スケスケ”な超ロングノーズ仕様! ワイドでカッコイイ「FT-1」とは?
トヨタ「和製スーパーカー」がスゴイ! 約500馬力「直6」風エンジン搭載&“スケスケ”な超ロングノーズ仕様! ワイドでカッコイイ「FT-1」とは?
くるまのニュース
2025年は車を買う! でもどれにする?…スライドドア付き軽自動車・予算別ガイド、3ゾーン48車種
2025年は車を買う! でもどれにする?…スライドドア付き軽自動車・予算別ガイド、3ゾーン48車種
レスポンス
いつ見てもかわいいレトロデザイン!! 超小型車 フィアット新型「トポリーノ」は欧州で大人気! ネットに続々寄せられる熱い思いとは
いつ見てもかわいいレトロデザイン!! 超小型車 フィアット新型「トポリーノ」は欧州で大人気! ネットに続々寄せられる熱い思いとは
VAGUE
ラリージャパンで国沢光宏が躍動! 二つの顔を持つ紳士がルーテシア ラリー5で激走
ラリージャパンで国沢光宏が躍動! 二つの顔を持つ紳士がルーテシア ラリー5で激走
ベストカーWeb
『危ねぇ知らなかった!』危険回避! 知らないと怖いブレーキパッドの交換タイミング~カスタムHOW TO~
『危ねぇ知らなかった!』危険回避! 知らないと怖いブレーキパッドの交換タイミング~カスタムHOW TO~
レスポンス
ソニー、移動をエンタメに変える「MR Cruise」事業化…あらゆる車両に搭載可能に
ソニー、移動をエンタメに変える「MR Cruise」事業化…あらゆる車両に搭載可能に
レスポンス
「前を走るパトカー」“追い越し”て大丈夫? 抜かす派VS抜かない派で賛否両論!? 「やっちゃダメ」な要注意項目とは
「前を走るパトカー」“追い越し”て大丈夫? 抜かす派VS抜かない派で賛否両論!? 「やっちゃダメ」な要注意項目とは
くるまのニュース
日本人初の快挙! moto2チャンピオン小椋藍がトライアンフ トリプル トロフィーを受賞
日本人初の快挙! moto2チャンピオン小椋藍がトライアンフ トリプル トロフィーを受賞
バイクのニュース
【10年ひと昔の新車】ボルボ V60 オーシャンレース エディションは、世界一周ヨットレースを記念したスペシャルバージョン
【10年ひと昔の新車】ボルボ V60 オーシャンレース エディションは、世界一周ヨットレースを記念したスペシャルバージョン
Webモーターマガジン
孤高のミニバンSUV、デリカD:5に「BLACK Edition」新登場、定番の「CHAMONIX」には新たに8シーターを設定
孤高のミニバンSUV、デリカD:5に「BLACK Edition」新登場、定番の「CHAMONIX」には新たに8シーターを設定
カー・アンド・ドライバー

みんなのコメント

1件
  • 史上最高のロータスと評する人も少なくない。まぁね。風吹裕也の登場によって日本で人気が出たヨーロッパは市場何番目なのかな?ツウは離れてやはりエランな風潮が少なからずあった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村