スーパーカーは好きですか? 当編集部は大好きです!! 百年に一度の変革期にあって「社会におけるクルマの位置づけ」が変わりつつあるなか、「趣味としてのクルマ」はそうした世間の風潮とは隔絶した世界観のなかで、それでも進化を続けています。
21世紀のスーパーカーはどんなふうに進化しているのか?? 自動車評論家の石川真禧照氏がじっくりしっかり動画付でお届けする当連載。今回は、世界中で高い人気を誇るトヨタのクロカンSUV「ランドクルーザー300」の最上級グレード「ZX」をご紹介する!
大人気で受注停止中…でもこれなら何年待っても欲しくなるわ…「ランドクルーザー300」実力と魅力【石川真禧照のスーパーカーワールド】
●やっぱり「スーパーカー」が好き!! 自動車生活探検家・石川真禧照のスーパーカーワールド一覧
文/石川真禧照、写真/萩原文博、動画/吉田海夕、コペル
■14年ぶりのフルモデルチェンジ、デザイン・装備も一新!
ランドクルーザーは1951年8月にトヨタの4輪駆動車として誕生した。そのスタイリングはジープ系のクロスカントリー4WDだった。まだSUVというカテゴリーはなかった。デビュー以来、70年間、ランドクルーザーは地球上のほとんどの大地に輸出され、生活の重要な足となってきた。とくにその信頼性の高さと耐久性の長さは他国の同型よりも確実に勝っていた。これまで累計1060万台、年間30万台以上のランドクルーザーが世界170ケ国で活躍している。
2021年8月2日に発売が開始されたランドクルーザー300。試乗した最上級グレード「ZX」は、ガソリンモデルが730万円、ディーゼルモデルが760万円
今回、14年ぶりにフルモデルチェンジしたランドクルーザー300系は、5ドアのワゴンボディを基本にしている。ボディ構造はこれまでのラダーフレーム式構造を流用しているがTNGAの思想に基づいて手を加えている。サイドレールとクロスメンバーの一部に、板厚で、素材の異なる鋼板をレーザー溶接で接合し、用いている。
ボディに関しても高張力鋼板の拡大採用やボンネット、ルーフ、全ドアパネルをアルミニウム化するなどで、旧型に対し約200kgもの軽量化を実施した。
プラットフォームの刷新に伴ない、サスペンションも新設計された。フロントはハイマウント・ダブルウィッシュボーン、リアはトレーリングリンク車軸式を新開発。とくにリアサスはショックアブゾーバーの位置を考慮、乗り心地と操安性を向上させている。試乗した「ZX」にはショックアブゾーバーの減衰力を4輪独立で制御するAVS(アダプティブバリアサス)に、新たにリニアソレノイドタイプを装着した。
このほかにランドクルーザーならではの新機構として油圧式パワステに電動式の操舵アクチュエーターを組み合わせたり、電子制御ブレーキシステムを採用している。
後輪のトラクションを確保させるためには、トルセンLSDを採用した。
こうしてオフロード走破性向上のための改良を受けた新型ランドクルーザーだが、スタイリングはラジエターと共にヘッドライトを高い位置に設け、新しいイメージを形成した。全長やホイールベースなどのボディサイズは先代を踏襲している。アプローチアングル32度、ディパーチャーアングル26度も同じだ。オフロード性能では最大安定傾斜角44度、登板能力45度、最大渡河性能700mmを確保している。
パワートレインは3.5LのV6ツインターボガソリンエンジン(最高出力415ps/最大トルク650Nm)と、3.3LのV6ツインターボディーゼルエンジン(309ps/700Nm)。これに10速ATが組み合わさる
パワーユニットはV型6気筒ツインターボの3.5Lガソリンエンジンと、3.3Lディーゼルエンジンが用意された。ガソリン仕様は新開発。ディーゼルは各部の構造見直しと最適化を実施している。組み合わされるミッションは10速ATを用意した。
走行支援機能、マルチテレインはAUTO/DIRT/SAND/MUD/DEEPSNOW/ROCKの6モードで、駆動力、サスペンション、ブレーキ油圧を自動で統合制御する。4WDモードはH4/L4。通常のトルク配分は前40:後60と、後輪寄りのセッティングだ。
ドライブセレクトモードはダイヤル式で、ECO/COMFORT/NORMAL/SPORT・S/SPORT・S+/CUSTOMが選べる。この選択はトランスファーがH4のときにできる。
■いざ試乗! オンロードでの走りの評価はいかに?
落ち着きのある豪華なインテリア。インパネ形状やスイッチ配置は、オフロードにおける機能性を追求したレイアウトになっている
前置きが長くなったがいよいよ試乗だ。試乗車は最上級グレードの「ZX」ディーゼル仕様。メーカー希望小売価格760万円はノーマル仕様の中でもっとも高額なモデルだ。
エンジンスタート! とスタートボタンを押すが、3.3Lディーゼルツインターボは始動しない。実は新型ランドクルーザーは、最新のセキュリティを搭載している。
盗難対策として新たに導入した、トヨタ初となる指紋認証スタートスイッチ
指紋認証スタートスイッチをトヨタ車として初めて採用したのだ。スタートボタン中央に指紋センサーが内蔵されており、ドライバーはスマートキーを携帯し、ブレーキを踏みながらスタートボタンの指紋センサーにタッチすると、車両に登録された指紋情報と照合し、一致するとエンジンが始動する、というものだ。
運転席は高めだが、さらに良い視界を得ようと高くすると、チルトハンドルが限界の高さになってしまう。前方視界は良い。ボンネットの中央部の凹みのあるデザインが最近のクルマにはない風景だ。
走り出しはH4、AUTO、NORMALの各モードを選択する。
3.3Lディーゼルターボはアイドリング時のガラガラ音も小さく抑えられている。これは室内でも車外でもあまり変わらない。防音対策は入念に行なわれている。
Dレンジでスタート。ツインターボディーゼルは1500回転からトルクが太く、わずかなアクセルの動きで2.5トン以上の車体をグングン引っぱる。60km/hは7速1200回転。100km/h巡航では10速1300回転だ。
加速性能も0→100km/hは7秒台。決して鈍足ではない。全長5m、全幅2mの巨体が全開で加速するのはかなり迫力がある。気になったのは全開時からの減速。ブレーキはフロントにベンチレーテッドディスク、リアもディスクブレーキを装着しているのだが、踏力が重めで、初期制動もやや甘めなのだ。さらにサスペンションもブレーキング時のノーズダイブが大きめ。これは高速時だけでなく、街中走行でも同じ。このノーズダイブは改良点だ。
今回は試すことができなかったが、おそらく本格的なオフロードやラフロードになるとこのサスペンションは本領を発揮するのかもしれないが、都会的なオンロードではもう少し締まったサスがほしいところだ。
ハンドリングはNORMALモードではコーナーでアンダーが出やすかった。COMFORTやSPOR・Sも同じ。コーナーでの操舵力もやや重め。大きなボディをもて余し気味だった。
5人乗りは、ディーゼルモデルとガソリンモデルのベースグレード「GX」のみ(写真は5人乗りの2列目シート)
室内は左右、上下ともに余裕の空間。座面の表皮はややすべり気味。2列目はスライドはしないベンチシート。試乗車は2列シートの5人乗り。ディーゼル仕様は5人乗りだけの設定で、7人乗りはガソリン仕様のみ。
2列目は背もたれが4/6で分割前倒しできるだけでなく、座面ごとダブルホールドで広い荷室になる。実用車としても十分に通用する。おそらくこのクルマが最大の性能を発揮するのは中東の砂漠やロシアの荒れた荒野だろう。日本で乗るなら、個人的にはもう少しサスを硬めて乗りたい。
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