ちょっと前まで、フェラーリ F355の相場は「極上モノで2000万円近く」といった水準だったが、ここへきてついに2000万円を軽く突破してしまった。上モノと思しき個体の価格は2300万円以上であり、ごく一部では「3000万円超えのF355」なんていう物件まで登場している。
ベストカーWebを熱心にご愛読いただいている硬派カーマニア諸兄の多くは、「リセール価格ありきでクルマを語ること」を極端に嫌う。
コスパで選べ! 年収200万円台の人でも買える軽自動車はどのクルマ?
だが現代社会を生きる人間にとって「カネがないのは首がないのと同じ(copyright:西原理恵子先生)」であるため、もしもフェラーリについて考えるのであれば、できるだけリセール価格についても同時に考えるべきなのだ。
簡単に言うなら「どうせなら儲かるフェラーリが買いたい」ということであり、そこまで守銭奴的ではないにしても、「少なくとも大損をするフェラーリには乗りたくない」と考えるのが、現代を生きる人間の正直なマインドであろう。
しかしながら、すべてのフェラーリがF355のようにズンズンと相場を上げているわけではない。
なかには相場がガンガンに下がっているフェラーリもあり、相場はさほど下がっていないにしても、メンテナンス代がガンガンにかかることで大変な目に遭うフェラーリもなくはないのだ。
そこで、本稿では、あえて“守銭奴”に徹しながら「将来的に儲かるフェラーリ」および「将来的に損するフェラーリ」についての考察というか予想を行ってみることにしよう。
文/伊達軍曹
写真/ベストカー、ベストカーweb、フェラーリ
[gallink]
■ほぼ確実に儲かるフェラーリその1:F40やF50などの「スペチアーレ」
F40(1987~1992年)478ps/7000rpm
記念モデルとしてごくごく少数が生産され、世界の富裕層の間で瞬殺的に完売となり、その後も数億円単位で取り引きされる「スペチアーレ」。これはもう問答無用で値上がりし続けるだろう。
もちろん第三次世界大戦などが起きれば大暴落の可能性はあるが、むしろ戦争が起こると逆に金(ゴールド)のように高騰する可能性もあるのが、F40などのスペチアーレだ。
それゆえ、フェラーリで儲けたい人は今のうちにぜひ買いましょう……といっても、F40やF50を買えるような人がこの原稿を読んでいるとは思えないため、これ以上ここで何を言っても無意味である。それゆえ、スペチアーレについての話は以上終了とする。
■ほぼ確実に儲かるフェラーリその2:458スペチアーレや488ピスタなど「V8ミドシップのスペシャルシリーズ」
458スペチアーレ(2013~2015年)605ps/9000rpm
通常のV8ミドシップモデルをベースに、より高性能な上位機種としてモデルライフの終盤に投入される「スペシャルシリーズ」。
360モデナをベースに、ワンメイクレース“チャレンジ”の技術を注入した「チャレンジストラダーレ」がその始まりで、その後は「430スクーデリア」「458スペチアーレ」と続き、2018年には488GTBをベースとする「488ピスタ」が登場した。
いずれの世代にも熱心なファンがおり、コレクターズアイテムとして、あるいは投機の対象として、V8ミドシップのスペシャルシリーズは鉄板の人気を誇っている。
F40などのスペチアーレと違って第三次世界大戦が起きた際には暴落するかもしれないが、それ以外ではそうそう値下がりすることは考えにくい、「儲かるフェラーリ」の代表格だ。
【スペシャルシリーズの相場】
・チャレンジ ストラダーレ/2000万~2300万円
・430スクーデリア/2800万~3500万円
・458スペチアーレ/4300万~5500万円
・488ピスタ/5200万~6300万円
■ほぼ確実に儲かるフェラーリその3:F355(できれば6MT)
F355(1994~1999年)380ps/8200rpm
1994年から1999年まで販売された、3.5L、V8自然吸気エンジンをミッドに搭載する超人気モデル。
2021年初頭に上モノの相場が2000万円に達したときは「ここが天井か?」とも思ったが、その後2300万円レベルにまで到達し、クラシケ認定(フェラーリ本社がクラシック・フェラーリに与える車両認定証明書)を取得している個体の一部は3000万円の壁をも突破した。
この勢いから考えると、フェラーリ F355(の劣悪物件ではなく上モノ物件)の相場は、まだまだ成層圏を目指し続けるのだろう。
「フェラーリ」と聞いたときに誰もが思い浮かべる流麗にして可憐なピニンファリーナデザインと、最高レベルの“音質”を誇るV8自然吸気エンジンは、いくら金を積んだところで新車のフェラーリでは絶対に手に入らない、F355だけの個性。
となれば、これはもう下がる理由がないのである。オンボロの個体は別だが、上モノをガレージで保管したうえで「たまに乗る」ぐらいの使い方をしていれば、将来的にはどえらい含み益を手にすることになるはずだ。
【F355(上モノ)の相場】
F355/1900万~2700万円
F355 F1/1800万~3150万円
■たぶん損はしないフェラーリその1:458イタリア
458イタリア(2010~2015年)578ps/9000rpm
余計な説明は不要かとも思うが、458イタリアは2010年から2015年にかけて販売された、最高出力570psの4.5L、V8自然吸気エンジンを搭載する2世代前のV8ミドシップフェラーリである。
数年前までは「暴落するかも?」としばしばいわれていた458イタリアの相場だが、フタを開けてみれば暴落のボの字もなく、まずまずの平均価格をキープし続けている。
458イタリアの後継にあたる488GTBが今ひとつぱっとしないという事実から逆算すると、458イタリアの価値とは以下の2点に集約されるのだろう。
・488GTBと違って自然吸気エンジンである
・488GTBと違ってピニンファリーナによるデザインである。
要するに「今のところ最後のV8自然吸気エンジンであり、最後のピニンファリーナデザインでもある」という部分において、458イタリアは今後バリューが出てきそうな気配なのだ。そしてメンテナンスの面においてもさほど神経質になる必要はないという点が、458のバリューを後押しするはず。
となれば……どれだけ上がるかは未知数だが――上モノの458イタリアを買って大切に維持しておけば、将来的にある程度の含み益が生じる可能性は高い。少なくとも「大損ぶっこいた!」ということにはならないだろう一台だ。
【458イタリアの相場】
458イタリア/2000万~3100万円
■たぶん損はしないフェラーリその2:F430
F430(2005~2010年)490ps/8500rpm
458イタリアの前身にあたる、2005年から2010年まで販売されたV8ミッドシップフェラーリ。搭載エンジンは最高出力490psの4.3L、V8自然吸気で、F355のような超高回転型&美声型ではないが、トルクフルであり、エンジン自体の頑丈さもかなり増している。
7年ほど前までのF430は、富裕層からは「古い」と敬遠され、勤労者系フェラーリ愛好家からは「高くて買えない……」と敬遠されていた。要は人気薄……とまでは言わないが、今ひとつ市場での輝きには欠ける世代だったのだ。
しかしここへ来て、フェラーリ F430は「ポルシェ911の996型」のような魅力を放ち始めている。
ポルシェの996も「中途半端」「乗用車的」ということで今ひとつ敬遠されていた世代だったが、ここへ来て“ネオクラシック感”を放ち始め、「小ぶりなサイズがイイ!」「今の911みたいな超電子制御じゃないのもイイ!」というニュアンスで再評価され始め、その相場も微妙に上げ始めているのだ。
そしてフェラーリ F430もこれと似たようなこと、つまり「昔はイマイチと思ったけど、今にしてみるとけっこう悪くないのかも……?」というような形での再評価が行われつつあるのだ。
とはいえ、もちろん数年後の相場がどこまで上がるかは未知数であり、さほど上がらない可能性もある。だが少なくとも「大損はぶっこかないはずの一台」と考えられるのが、このF430である。
【F430の相場】
F430/1400万~2300万円
* * *
以上が、筆者が推測する「儲かるフェラーリ」と「たぶん少しは儲かる(少なくとも大損はしない)フェラーリ」であるわけだが、その逆のパターン、すなわち「損するフェラーリ」についても触れておこう。
■たぶん損するフェラーリその1:すべてのFRフェラーリ
575M(2002~2005年)515ps/7250rpm
ここ最近のFRフェラーリ、例えばカリフォルニアTやF12ベルリネッタあたりであれば「少々の損」で済むだろうし、現行世代であるポルトフィーノやローマならば「微損」で収まるはずだ。
だが、古い世代のFRフェラーリを、例えば575Mや550マラネロあたりを「おっ、800万円台か! フェラーリにしては安いじゃん!」などというニュアンスで勤労者系愛好家が買ってしまうと、その後のメンテナンス地獄と値下がり地獄により、結局はゴー・トゥ・ヘルになってしまう可能性は高い。
……もしも550マラネロを買う金があるならそれを頭金にして、もっと別の何かを買うことを考えたほうがはるかにいいだろう。
■たぶん損するフェラーリその2:360モデナ F1
360モデナ F1(1999~2005年)400ps/8500rpm
F355の後継モデルとして1999年に導入され、2005年1月まで販売されたV8ミドシップフェラーリ。搭載エンジンは最高出力400psの3.6L、V8自然吸気だ。
これの6MTの上モノ(車両価格1500万円ぐらい)を買うのは決して悪くはないが、軒並み値上がりしているフェラーリおよび名作ネオクラシック各車のなかでも、360モデナだけはどうにも相場があまり上がらない。
もちろん「これが好きなんだ! 俺はリセールなんか気にしないぜ!」という方が買うのはご自由だが、もしも本稿の基本路線である“守銭奴”に徹するのであれば、360モデナはMTであってもパスするのが吉であろう。
そしてもちろん「格安価格の360モデナF1」は、地獄への入口である可能性が高いため、当然ながら避けねばならない。
安いモノなら700万円台でも探せるF1マチック(セミAT)の360モデナ。
だが、それを買ってしまうと「買った瞬間にF1マチックが逝く(修理代およそ60万円)」「購入後すぐにタイミングベルトが要交換となる(交換費用およそ30万円)」「その他モロモロ、ほぼすべてが壊れる(修理代は青天井)」という“地獄の逆大三元”が成立する可能性を、何人たりとも否定はできない。
これもまた「そんなのを買うカネがあるなら、それを頭金にして別のクルマを買ったほうがいい」としか言いようのない、きわめて残念な選択肢である。
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